昨日「ウクライナ・オデーサ州の物流を麻痺させようとするロシア」という話題をお届けしたが、それは『Взгляд』というプロパガンダ色の濃いロシア・メディアの記事に基づくものだったので、「ウクライナはすでに追い詰められた」というロシアにとって都合の良い描き方をされていた。そうしたところ、本日キーウポストがこちらの記事を配信し、この問題に関するウクライナ側の見方を伝えているので、『Взгляд』記事と比較しつつ軽く紹介したい。なお、上掲地図はキーウポストとは関係ないネット上の拾い物。
キーウポストによると、ウクライナはモルドバを鉄道で横断してルーマニアのコンスタンツァ港へ穀物を運ぶルートを本格的に検討している。ウクライナはモルドバ側に鉄道運賃の50%割引を求め、モルドバ側はその代わり一定量の貨物を保証するよう要求している。想定輸送量は年間最大450万t。
昨日紹介したロシアの『Взгляд』は、ロシア軍がオデーサの港湾だけでなくザトカ、マヤキという交通の要衝を攻撃することで、ウクライナがドナウ港湾を経由してコンスタンツァにつなぐ物流まで阻害しようとしている、と論じていた。今回のウクライナ側記事も、ロシアによる南部港湾・海運インフラへの攻撃激化を受けて、より安全な代替輸出ルートとしてモルドバ経由鉄道を検討しているとしている。つまり、ロシアの攻撃 → 黒海・オデーサ方面の輸出リスク上昇 → モルドバ鉄道 → コンスタンツァという物流転換の動きそのものは、ロシア側の情報だけでなく、今回のウクライナ側記事からも確認できた形である。
『Взгляд』は「大オデーサ港から世界の海への出口はすでに封鎖された」「ドナウ港湾へのアクセスも事実上遮断された」とまで主張していた。それに対し今回のキーウポストの記事には、オデーサ港が使用不能になったとも、ドナウ港湾が孤立したとも書かれていない。少なくとも今回の記事が依拠する現状認識では、海港は依然としてウクライナ穀物輸出の圧倒的な主力と位置付けられ、「大オデーサはすでに封鎖された」という『Взгляд』の表現とはかなり距離がある。
ただし、ウクライナへの経済的影響は実際に出始めている。ウクライナ政府は2026/27年度の穀物輸出見通しを従来の4,300万tから3,800~4,000万tへ下方修正している。またAPK-Informも輸出障害を理由に予測を8.6%引き下げ、3,940万tとしている。したがって、「ロシア軍がウクライナの海上輸出を封鎖した」というのは誇張だが、ロシアの攻撃が輸出能力を実際に低下させ、代替物流の構築を迫っているという現実は、今回のウクライナ側記事からも確認できる。今回の記事にあるモルドバ経由の鉄道輸送は、期待はされるが、上述のとおり年間最大450万tとされており、これではウクライナの食料輸出の1割くらいしか賄えないので、今後に向けたバックアップ・ルートという位置付けであろう。
ところで、ウクライナからモルドバ経由、ルーマニア・コンスタンツァ向け鉄道輸送とのことだが、当然のことながら沿ドニエストルを通るルートは使えないはずである。となると、ウクライナ南西部 → Berezine → Basarabeasca → モルドバ領内 → ルーマニア・コンスタンツァというルートが考えられるのではないか。これなら沿ドニエストルを通過する必要がない。ウクライナ・モルドバ両国政府は、20年以上不通だったこの国境鉄道のベレジネ(Березине/Berezine)~バサラベアスカ(Basarabeasca)線を、2022年に再開したという経緯がある。上の地図は、その位置関係が分かりやすいように拝借・掲載したもの。
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