先日ご案内したとおり、6月7日に北大の学園祭で「ロシア・ウクライナ戦争で私たちの食卓はどうなる?」というミニ講演を行うことになり、それに向けて展示用のパネル原稿を作成した。「私たちの食卓」と言うからには、日本の食品物価のことを調べなければならない。そこで、日本政府統計を基に、東京都の主要食品の物価動向を示した上掲のようなグラフを作成した。コロナ前の2019年12月の水準を100とし、その後のコロナ禍とそこからの回復、ロシア・ウクライナ戦争、トランプ関税戦争などを経てそれぞれの水準がどう変化してきたのかを跡付けた。米は買ったことがなくタダでもらえるので売るほどあるという農相発言にもインスパイアされ、せっかくなのでブログでもお目にかける。
今回のグラフで見ているのは日本国内の物価だが、世界の商品相場を見ると、食料をはじめとする多くの商品の国際価格は、コロナ禍からの回復期待で2021年には上昇に転じていた。日本のニュース等では、枕詞のように「ロシア・ウクライナ戦争で諸物価が高騰」などと言われることが多いが、同戦争はどちらかと言うとコロナ明けの価格上昇の流れを一時的に加速した形であった。そして、国際商品価格は総じて2022年後半には沈静化に向かった。
そうした中で、日本の食品物価は上掲グラフに見るとおり、むしろ2022年終盤あたりから上昇に転じ、その後も高止まりしたままである。これは言うまでもなく、食料の輸入依存度の高い日本で、通貨安が進んだからである。インフレと通貨安を誘導しようとしたアベノミクスの効果が時間差で襲ってきた形だ。
ただし、米の価格は2024年の初めまではほぼ安定していた。これは当然、米の自給率が高く、円安の影響を受けにくいからである。その米の価格が2024年途中から高騰に転じたのは、元々市場が硬直的であったところに、天候不順等による供給不安が広がったことが原因だろう。
円安にしても、農政にしても、我々が選択した政治の帰結である。何でも国際情勢のせいにしてはいけない。
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