ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ウクライナ

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 こちらの記事が伝えているとおり、3月18日にプーチンがトランプと電話会談する前に、プーチンはロシア産業家・企業家同盟の総会に出席し、その席でウクライナ戦争についても言及したということである。プーチンは、ロシアが達成したもの、すなわちクリミア、セヴァストーポリ市、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州をロシアから奪うことはできず、それらがロシア連邦の領土であることを認めるべきだとした上で、もしその承認が近いうちになされるのであれば、ロシアはオデーサその他の現在ウクライナに属している地域を要求することはしない旨述べたということである。

 そもそも、オデーサをはじめ、ロシアが占領すらしていない地域に対し潜在的に権利を有するかのような発言がイカレているが、問題は今回のプーチン発言をどう捉えるかである。ロシアの報道振りでは、「オデーサまで攻め込むつもりはない」と、ロシアの「善意」を強調したものが目立つ。他方、反政府派のモスクワタイムズはむしろ、こちらの記事で、もしもウクライナ側が一連の占領地のロシアによる編入を飲まなければ、ロシアはオデーサにまで攻め入るというニュアンスで捉えている。

 私自身も、モスクワタイムズの受け止め方に近い。停戦の機運が出てきたとはいえ、現時点でウクライナのゼレンスキー大統領が占領地の全面的な割譲に応じるのはあまりにハードルが高く、ロシア側もそのことは見透かしているだろう。しかも、おそらくロシアは、ウクライナ東部・南部の4地域につき、実際に占領しているエリアだけでなく、ウクライナ側が保持できているエリアもロシアへの編入を要求し、わざと飲めないような厳しい条件を突き付けるのではないか。そうすると、「ウクライナが条件に応じないから停戦できない」と称し、あたかもロシア側にオデーサに攻め入る大義名分が生じたかのような立場をとるのではないか。ロシアとしては、万が一ウクライナ側が「4地域の編入を認める」と回答して来たらそれでよし、断ってきてもそれを理由にさらに攻撃を続けられるのでそれもよしということではないだろうか。

 もちろん、ロシアとしては今すぐに地上部隊をミコライウ州やオデーサ州にまわす余裕はないだろうし、ウクライナの攻撃で黒海艦隊の揚陸艦を失っていることからも、オデーサ攻略は難易度が高い。しかし、以下のようなことから考えて、プーチンがオデーサ州を諦めたとは、個人的に思えないのである。

  • オデーサ一帯はプーチンも尊敬する女帝エカテリーナ2世が獲得した領土で、その思い入れが強い。
  • オデーサは、言語的にはロシア語圏(現実には、だからといって、現地住民のロシアへの親近感が特に強いわけではないのだが…)。プーチンは2023年12月に「オデーサは完全にロシア人の街だ」と発言した。
  • 2014年にオデーサで親露派多数が労働組合会館で焼き殺された事件は、プーチンが主張している「ウクライナ=ネオナチ」のエビデンスとされており、ロシア側は同事件の首謀者を捕らえ裁くとしている。
  • ウクライナがオデーサの港を失い、内陸国になってしまえば、食料や鉄鋼・鉄鉱石の輸出もままならなくなり、ウクライナを経済的に弱体化させられる。
  • 逆にロシアは港と(日本人から見るとしょぼいが)ビーチを手に入れられる。
  • ウクライナが海への出口を失えば、ロシア黒海艦隊への脅威もなくなり、活動範囲を広げられる。
  • オデーサ一帯を支配できれば、ロシアはモルドバにも直接的に軍事的圧力を行使できる。

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 パブリブさんと言えば、旧ソ連圏をはじめ、マニアックな地域をマニアックな角度から鋭くえぐった意欲的な出版で知られている。このほど同社より、田中祐真(著)『ウクライナ製品完全ガイド: 善意から物欲へ』が刊行されることになった。同社による案内によれば、

 突然ですが『ウクライナ製品完全ガイド』を出版します! 著者は田中祐真さんで、副題は『善意から物欲へ』、そしてシリーズ『ウクライナ応援団』のVol.1となります。

 ロシアによるウクライナ侵略が始まってから3年が経ちました。侵略が長期化するにつれて、ウクライナへの寄付や支援活動も徐々に下火になってきたのは否めません。

 またトランプ政権の誕生でアメリカ政府のウクライナに対する支援が不安定化しています。

 ウクライナがロシアの侵略を撃退する為には、人々の善意や他国政府からの支援の依存度を減らし、その経済力を高め、税収を増やす必要もあるのではないかと考えました。

 そこでウクライナで生産されている魅力的な商品の数々を紹介する意図で企画されたのが、この『ウクライナ製品完全ガイド』です。

 「ウクライナ製品だから」という理由だけで義務感で買わざるを得ないようなものではなく、なるべく純粋に物欲・所有欲・消費欲が刺激されるようなものをピックアップしています。

 ということだ。同社によると、「日本も円安インフレで非常に苦しい経済状況に直面していますが、四六判並製オールカラーで192ページ、2400円に抑えました。弊社自体にとっては採算度外視の慈善事業に近いものがあり(汗)……、ぜひ買い支えて頂ければ幸いです」とのこと。4月中旬刊行予定!


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 米地質調査所は、Mineral Commodity Summariesというレポートを、毎年刊行している。世界各国の鉱物資源の埋蔵量や生産量を網羅した、なかなか有難い資料だ。

 当ブログでは、ロシアにおいて経済統計の開示度が低下していると苦言を呈することが多いが、実はベラルーシはもっと徹底していて、たとえば同国にとり最重要な輸出品目である塩化カリウムの生産動向が、2021年以降国家機密となっている。そこで、2021年以降に関しては、米地質調査所レポートに出ている推計値を用い、個人的に以下のようなグラフを作成している。

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 ちなみに、同レポートにはレアアースというページもあるのだが、そこにはウクライナが一言も出てこない。スカンジウムのところで、ちょろっと言及されるだけである。このレポートを紐解けば、ウクライナが潤沢なレアアース資源を抱えているわけではないことなど一目瞭然なのだが、果たしてトランプのチームはこのレポートをちゃんと読んだり、あるいは米地質調査所のスタッフから聞き取りをしたりしたのだろうか? それとも職員解雇しちゃった?


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 そう言えばウクライナの乗用車販売は今どうなっているのかとふと気になって、軽く検索してみたら、こちらの記事に2024年の販売実績が載っていたので、以下整理しておく。

 業界団体のウクルアフトプロムのデータによると、2024年にウクライナでは69,600台の乗用車(新車)が販売された。これは前年比14%増であり、2016年の水準に戻った。新車販売のうち3万台強が首都キーウおよびその郊外のキーウ州に集中しているのが特徴である。

 ウクライナでは伝統的にトヨタが強く(住友商事の尽力の賜物)、2024年のブランド別販売台数でもトヨタが10,731台でトップだった。ベスト10の顔触れは上掲画像参照。

 とはいえ、ウクライナでは欧州などから輸入される中古車のプレゼンスの方が大きい。2024年には22.2万台の中古車が販売され、前年比4%増であった。


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 Wedge Onlineに、「火事場泥棒トランプが狙うウクライナのレアアース、ゼレンスキー訪米で協定でも、噂の資源はどこまで有望か」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日、17日の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催しました。私は「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」という報告を行いました。なお、6本すべての講演動画が、こちらでアーカイブ視聴できますので、ぜひご利用ください。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年3月号のご案内。3月号は、「ロシア・NISビジネスとROTOBOの活動」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産」、「独自航路で活路を開いたウクライナの海運」を執筆しています。


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 先日、「トランプがウクライナのレアアースに触手」という話題をお届けし、その時にウクライナの地下資源地図もお目にかけた。しかし、その時のものはそれほど分かりやすくなかったので、改めてこちらの記事に載っていた資源地図を上掲のとおりお目にかけたい。

 トランプが執拗に要求している「ウクライナのレアアース」というものが、厳密な意味でのレアアースなのか、それとも希少資源全般なのかというのは、良く分からない。私はどちらかというと後者のような気がしている。ともあれ、厳密な意味でのレアアースの埋蔵地は、上掲地図の凡例で赤矢印で示したとおり、パステルグリーンっぽい色の地点となる。


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 それにしてもお下劣だ。こちらの記事によると、

 トランプ米大統領は3日、レアアース(希土類)の供給を確保したいとし、ウクライナが米国に供給することを望んでいると述べた。ウクライナが米国の要請に応じる用意があるとも述べた。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、米国の「3,000億ドル近い」支援に対してウクライナからの「応分の見返り」を望んでいると表明。「われわれは、レアアースなどの提供についてウクライナと取引をしたいと考えている」とした。トランプ氏が「レアアース」という文言を、全種類の重要鉱物を指して使っているのか、それとも希土類だけを指して使っているのかは現時点では不明。レアアースとは31鉱種あるレアメタルの中の17種類の希土類の総称。電気自動車や携帯電話などに使用される。ウクライナにはウラン、リチウム、チタンが大量に埋蔵されているが、いずれも産出量では世界5位には入っていない。一方、米国にはこれら重要鉱物などの未開発埋蔵量があるとみられる。

 それで、トランプがウクライナの資源を欲しいと言い出したので、ウクライナのどこに地下資源があるのかを示した2023年のウクライナ版フォーブスの記事が、再び脚光を浴びたようだ。上掲地図はそれに掲載されていたもので、州別の地下資源埋蔵額を示している。これによると、ウクライナの地下資源の埋蔵額は14.8兆ドルに上るが、ドネツク州が3.8兆ドル、ルハンシク州が3.2兆ドル、ドニプロペトロウシク州が3.5兆ドルと、この3州だけで全体の7割を占めている。ということは、いかにトランプが関心を示そうと、ウクライナが東部領土を維持できなければ、地下資源の大部分も失うことになってしまう。

 PS 追伸だけど、こちらのポストの画像には、資源の内訳も出ていて、なお良し。

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 昨日のロシア・ウクライナに続き、本日は中国の対ウクライナ・モルドバ貿易動向のグラフをお目にかける。ロシアの支配を脱しEU加盟を目指す両国だが、貿易パートナーとしては中国に期待する部分が小さくない。しかし、肝心の対中貿易パフォーマンスは、思うようには発展していない。

 まず、中国の対ウクライナ輸出入動向が上図のとおり。ウクライナは中国にとって飼料用トウモロコシと鉄鉱石の供給国としてそれなりに重要だったのだが、開戦後のロシア軍による黒海封鎖で輸送路が閉ざされ、2023年終盤からはウクライナが独自に開設した航路を通じた輸出が復活はしているものの、貿易水準は戦前から大きく落ち込んだままである。

 次に、中国の対モルドバ輸出入動向が、下図のとおり。2024年には、輸出入とも順調に伸び、過去最高を記録した。ただ、モルドバにとってみれば、中国市場への販売拡大、それを通じた対中貿易赤字の解消が目標であり、その問題は未解決のままである。実はモルドバはそうした目標を念頭に中国とFTA交渉を進めてきたのだが、現政権が従来以上にEUに傾斜しているので、モルドバの交渉熱意は低下している印象である。

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 ウクライナ港湾管理局のフェイスブックページに、2024年のウクライナの港湾における取扱貨物量の概況が掲載されたので、簡単に紹介しておく。

 管理局の発表によると、2024年のウクライナ港湾による取扱貨物量は9,720万tとなり、前年の6,200万tを大幅に上回った。2024年も圧倒的に多かったのは輸出貨物で、8,810万tに及んだ。輸入貨物は880万tに留まった。

 2024年にウクライナの港湾貨物量が大幅に回復したのには、ウクライナがロシア海軍の脅威を遠ざけ、2023年後半から黒海西岸沿いを進む独自の航路を開設したことが大きかった。その結果、上図に見るとおり、主力である「大オデーサ港」、すなわち(狭義の)オデーサ港、ピウデンヌィ港、チョルノモルシク港の貨物量が急増した。一方、イズマイル、レニ、ウスチドゥナイシクという河川港は、「お役御免」とばかりに、貨物量を低下させた。


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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日(金)と17日(月)の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催します。無料、かつリモートで視聴できるので、是非ともチェックいただき、事前登録いただければ幸いです。全体では長大なプログラムですが、もちろんご関心のあるコマだけ聴いていただいても結構です。

 ロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻開始から3年ということで、各所で色んな企画が進行していると思いますが、私どもスラブ・ユーラシア研究センターでは、しばしば語られる大国政治や戦況というよりは、地域研究拠点としての特色を生かしたプログラムを組んでみました。2月14日の第1部では、「周辺国からの視点」と題して、国末憲人「アゼルバイジャンとアルメニア ―もう一つの戦争をめぐって」、松澤祐介「中欧の小国開放経済とウクライナ戦争 ―スロバキアの『親ロシア』のコンテクスト」、六鹿茂夫「ロシアの巻き返し戦略とモルドヴァ・ルーマニア」という報告をお届け。2月17日の第2部では、「戦争で変わるロシアとウクライナ」と題し、山添博史「ロシア大国化構想から規範毀損型サバイバルへ」、田中祐真「戦時下3年間のウクライナ国内情勢」、服部倫卓「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」というプログラムを組んでみました。いずれも、他では聴けない濃い報告になると思いますので、ぜひご期待ください。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年2月号のご案内。2月号は、「ユーラシア空間におけるBRICSの現在地」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「ロシアのアルミニウム輸出にも制裁の影が」、「2024年のロシア軍と軍需産業を振り返る」、「ウクライナ経済はロシア経済より健全?」を執筆しています。


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 こちらの記事などが伝えているとおり、1月15日にワルシャワでポーランド首相と共同記者会見に臨んだゼレンスキー・ウクライナ大統領が、ウクライナ軍が使用している兵器の出所割合について述べたということである。

 ゼレンスキーいわく、ロシアによる全面軍事侵攻開始後、ウクライナは自国の兵器生産を急増させているが、欧米からの兵器支援が供給の70%程度を占めており、引き続き欧米の支援が必要である。当初はウクライナ製が10%以下だったが現在はそれが33~34%に増えており、大幅な伸びだ。欧州からの供給が30%ほど、米国からの供給が40%ほどとなっている。戦車、航空機、ヘリコプターなどに関しては、ソ連製・ロシア製含め、現時点でウクライナよりもロシアの方が多く持っている。無人機に関しては、国内生産とパートナーからの資金のお陰で、ウクライナの方が上だ。もし今ロシアの凍結資金がウクライナに提供されれば、復興のためだけでなく、国内の成長のための資金も増えるだろう。ゼレンスキーは以上のように述べた。


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 ウクライナ系メディアのこちらの記事が、米戦争研究所の情報等にもとづき、ロシア軍は戦線での装甲戦闘車両の損耗が激しいので、節約するようになっていると伝えている。

 記事によると、2024年にウクライナ軍は、ロシア軍の戦車3,000両、装甲車両9,000両を破壊するか、損害を与えた。それゆえ、ロシア軍が戦車・装甲車両の戦闘での使用を縮小せざるをえない場面が、非常に増えている。

 ウクライナ軍情報筋によると、ロシア軍はクラホフスキーなどの戦場で歩兵による攻撃に切り替えている。装甲車は歩兵部隊の火力支援としてのみ使用されている。

 ロシア軍が装甲車両日投入を縮小している理由として、戦争研究所は3点を挙げている。①装備備蓄の減少:ロシア国防総省保有のソ連製装甲車の備蓄は大幅に減少しており、ロシア軍は残存車両の節約を余儀なくされている。②再装備の難しさ:ロシア軍は装備品の補充という問題に直面している。これは、ロシアが失われた装備に代わる十分な新型戦闘車両を保有していないことが原因である。③機械化攻撃にとって不利な条件:クラホヴォやポクロフスクといった大都市近郊での攻撃は、ロシアが過去に戦った野原と比べ、装甲車両の使用にとって不利である。

 ウクライナの中佐が『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せたコメントによると、ロシア軍はウクライナ東部での攻撃に電動スクーターやバイク、全地形対応車を使うことが増えているという。これは、装甲車の損失を補おうとするクレムリンの試みの一環である。このような車両は装甲車よりも安価で入手しやすいが、戦闘において同等の効果を発揮することはできない。

 戦争研究所によると、ロシアが開戦前に保有していた装甲車両のうち、2024年末現在で残っているのは、戦車の47%、歩兵戦闘車両の52%、装甲輸送車両の45%に留まる。

 アナリストたちは、2024年に9,000両近くの装甲戦闘車両が失われたことは、戦争開始後2022~2023年の年間損失量の3倍に相当すると指摘している。このため、ロシアが2025年にこのような損失を許容できる可能性は低い。「このレベルの損失はロシアの再装備能力を超えており、ロシア軍はもはや現在の年間装備損失率を維持することはできないだろう」と戦争研究所の報告書は述べている。


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 ウクライナ港湾管理局のフェイスブックページに、2024年のウクライナの港湾による取扱貨物量が出たので、以下で紹介する。

 これによると、2024年にウクライナの港湾は9,720万tの貨物を取り扱い(うち輸出貨物が8,810万t)、前年比57%増だった。うち、6,000万tは農産物だった。「2024年の成果は、戦時下にあり、敵が重要インフラに攻撃を仕掛けてくる中でも、ウクライナが自ら輸出ポテンシャルを切り開くことができることを証明した」と、港湾管理局では自信を示している。


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 ウクライナのルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州を占領している(全領域ではない)ロシアは、2023年春に、占領地の鉄道を統合する形で、連邦国家一体企業「ノヴォロシア鉄道」=ФГУП "Железные дороги Новороссии"なるものを創設した。上の地図は、しばらく前に出たこちらの記事が、ロシア本土のロストフ、タガンロク、ドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のベルジャンスク、メリトポリ、そしてクリミアのジャンコイを結ぶ新線の建設を始めたというニュースを伝えた時のものである。

 そして今般、こちらの記事が、ノヴォロシア鉄道が復興計画をまとめたということを伝えた。自称「ドネツク人民共和国」のD.プシーリン首長が明らかにした。

 プシーリンいわく、鉄道サービスに関しては、列車を運行するための準備はすべて整っている。オペレーションが可能になり次第、直ちに運行させる。戦線が前進するのに応じて、鉄道インフラを監査し、段階的に復旧させている。さらに、ノヴォロシヤ鉄道会社は、デバルツェヴォ、ヤシノヴァタヤ、イロヴァイスク、ヴォルノヴァハといったハブ駅を考慮した2025年から2030年にかけての復旧プログラムを策定している。実際の鉄道運行は、ドンバスとノヴォロシアの領域ですでに行われており、ロシア全体の鉄道網に接続する可能性もある。プシーリンは以上のように述べた。


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 欧州最大の原発であるザポリージャ原発は、今般のロシアによる全面軍事侵攻が始まって以来、ロシア側の支配下にある。原発の1号機が稼働開始したのは1984年12月だったので、原発はロシアによる占領という異常な状況下で、このほど稼働40周年を迎えた。

 それで、ウクライナ統治下では原発は「エネルゴアトム」によって経営されていたが、ロシア占領下ではロスアトムの子会社である株式会社「ザポロジエ原発操業機構」=АО «Эксплуатирующая организация Запорожской АЭС»によって管理されているということである。

 そして、その副社長であり、かつ原発の所長を務めているのが、ユーリー・チェルニチュークという人物である。こちらにその経歴が出ているが、ロシア側が派遣したわけではなく、元からウクライナの原子力業界で働いていた人物であり、近年はザポリージャ原発で幹部を務めていたところ、ロシア軍がやってきて、それに協力することにし、2022年11月に現職に就いたようだ。原子力コラボラトゥールといったところか。

 それで、今般TASSのこちらの記事で、ザポリージャ原発40周年を受けたチェルニチューク所長のインタビューが掲載された。あまり詳しく取り上げる余裕はないが、現時点では6つある原子炉のすべてが停止しているところ、2025年には一部でも再稼働にこぎ着けたく、そうなれば「ノヴォロシア」、ドンバス、クリミアの電力需要を全面的に賄えるようになる、といったことを述べている。


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 こちらのサイトに、ウクライナ鉄鋼業の2024年の実績と2025年の予想という記事が出ていたので、以下で要点をまとめておく。なお、上図はその記事に添えられていたもので、左は鉄鋼輸出量、右は鉄鉱石輸出量を示しており、ともに単位は100万tで2024年と2025年は見通しとなっている。

 2024年にウクライナの鉄鋼生産は予想を上回ったが、2025年の生産は9%、輸出は16%低下する可能性がある。これは、長引く戦争の影響と、世界市場での競争激化によるものである。

 これはウクライナの経済見通し全体にも影響を及ぼす。鉄鉱石・鉄鋼部門は2023年にウクライナGDPの5.7%を占め、輸出の15%を稼ぎ出した。

 2024年の粗鋼生産は予想を大きく上回り、前年比21%増の750万t程度になると見られる。ただ、戦前の2021年には2,140万tだったので、それに比べれば65%も少ない。

 2023年後半に海路による輸出の道が開かれたことが、奏功した。アルセロールミタル・クリヴィーリフの第2高炉が2024年春に稼働再開し、その結果、2024年1~11月の時点で、半製品の輸出は60%増の65万t、完成鋼材の輸出は40%増の50万tとなった。

 また、海路による中国向けの鉄鉱石輸出も復活し、1~11月に中国向けに1,300万tを輸出、これは全鉄鉱石輸出の43%を占めた。

 しかし、2025年のウクライナの鉄鉱石・鉄鋼の生産と輸出には、一連の逆風がある。戦闘が続くこと、中国の過剰生産による世界市況の低迷、EUによる関税優遇措置の撤廃、原料炭輸入の必要、鉄道・電力・ガスなどの料金の上昇、国内需要の低迷などである。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年1月号のご案内。1月号は、「トランプ政権復活で注目される米ロ関係の行方」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は、今号では、特集の枠内で「ロシアの肥料輸出は好調を維持 ―米国も輸入を継続」を、枠外で「軍事偏重を余儀なくされるウクライナ国家予算」を執筆しています。また、表紙の写真も担当しました。11月に米出張に出かけた際に撮影した国連本部の写真です。


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 若干ご紹介が遅れましたが、私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年12月号のご案内。12月号は、「制裁と成長の狭間で揺れるロシア経済」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今回も私は脇役で、「制裁下ロシアの鉄鋼輸出動向」、「原料炭田喪失の危機に立つウクライナ鉄鋼業」という短い連載記事のみ書きました。


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 東部戦線で、ドネツク州の要衝、ポクロウシクをめぐる状況が芳しくないようだ。こちらの記事によると、「ポクロウシクのドブリャク市長は30日、露軍が同市まで約7キロの距離に迫っているとし、防衛の準備に向けて同市を『封鎖』すると発表した。ドブリャク氏は、ドネツク州のウクライナ軍の重要防衛線の一角であるポクロウシクを巡る攻防戦が近く始まるとの認識を示した形だ。ドブリャク氏によると、防御拠点を構築中の地区への住民の出入りを禁止するほか、住民避難を進める。市内には現在、子供55人を含む住民約1万2000人が残っている」ということである。

 それで、様々なメディアが、仮にウクライナがポクロウシクを失うと、同国の鉄鋼業にとっても大打撃となると伝えている。同市には、鉄鋼業に必要な原料炭を採掘する炭鉱があり、それを失えば、ウクライナ鉄鋼業が原料基盤を欠くことになるからだ。

 代表例として、英エコノミストのこちらの記事が、以下のように伝えている。2014年にウクライナがドンバスの半分を親露分離主義者に奪われ、炭鉱の80%が失われた。ウクライナ側に残ったポクロウシク炭鉱は1990年に開坑した比較的新しいもので、ウクライナ有数の富豪R.アフメトフが所有するメトインヴェスト社のものとなっている。メトインヴェストはすでに、マリウポリの2つの製鉄所とアウジイウカにあった欧州最大のコークス化学工場をロシアに破壊されている。そして今、彼はポクロウシク炭鉱も失う事態に直面している。ロシア指導部にとって、アフメトフの資産を標的にすることは、ウクライナ経済を弱体化させる以外に、復讐という意味もあると広く信じられている。2014年以前、クレムリンは間違いなく彼が分離主義やロシア側に付くと信じていた。彼がウクライナ側に付くと、クレムリンはこれを裏切りとみなし、彼の財産を差し押さえた経緯がある。ポクロウシク炭鉱は、関連する工場や管理棟と合わせて6,000人を雇用しており、そのうち約1,000人は現在軍に勤務している。ポクロフスク鉱山はウクライナ最大の原料炭の炭鉱で、ウクライナに残る鉄鋼業にとって不可欠だ。今年、同炭鉱で530万tの石炭を採掘する予定であった。2023年、ウクライナは620万tの粗鋼を生産した。しかし、マリウポリの2大製鉄所を失う前の2021年の粗鋼生産量は2,140万tだった。この年、ウクライナは世界第14位の鉄鋼生産国だったが、2023年には第24位に転落した。もっとも、ある専門家によれば、ロシア軍はウクライナに残る鉄鋼業に打撃を与えるために鉱山を奪う必要さえないという。彼らが前進するにつれて、電力供給を遮断し、石炭を西の残りの製鉄所まで運ぶ道路を封鎖しようとするだろう。そして、ウダチネの北18kmにあるドブロピリアの別の小規模鉱山でも同じことをするだろう。業界団体「ウクルメタルルフプロム」の代表先月、ポクロウシクの原料炭の喪失は鉄鋼生産量のさらなる悲惨な損失につながると述べた。今年の粗鋼生産量は750万tに達する可能性があるが、ポクロウシクが失われた場合には、200万tから300万tになってしまうと、代表は述べた。ロシアはそれを知っているのだ。


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 社会科教科書でお馴染みの帝国書院が発行している冊子『地歴・公民科資料 ChiReKo』の2024年度2学期号に、「ロシア・ウクライナ産業紀行 ―ありし日の情景をめぐって」と題するコラムを寄稿しました。無料でお読みになれますので、よかったらご笑覧ください。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年11月合併号のご案内。11月号は、「20年の節目を迎えた『中央アジア+日本』」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今回は私は完全に脇役で、「ロシアが描く強気の経済・財政想定」、「ウクライナはこの冬の電力危機を耐え抜けるか」という短い連載記事のみ書きました。


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 こちらの記事が、ウクライナの鉄鉱石輸出の動向につき整理してくれていて、重宝する。上図に見るとおり、鉄鉱石輸出は昨年の終盤頃から拡大に向かい、今年5月くらいまでは順調に推移したが、ここ3~4ヵ月ほどは勢いを失っている。

 昨年終わり頃からウクライナの鉄鉱石輸出が拡大したのは、ロシアに握りつぶされた「黒海穀物イニシアティブ」に代わり、ウクライナが独自の黒海輸出回廊を確保し、遠い外国への鉄鉱石輸出が可能になったからだった。ウクライナにとり伝統的に鉄鉱石の2大輸出先は中国と中東欧諸国だが、ロシアによる侵攻後は陸続きの中東欧諸国にしか輸出できず片肺飛行だったものが、独自の輸送回廊開設で、それを打開したのだった。

 その輸送回廊はまだ機能しているのだが、それでもここに来てウクライナの鉄鉱石輸出に陰りが見えるのは、今回の記事によると、世界的な需要の減退によるものである。特に、世界の鉄鋼生産の半分あまりを占める中国での需要減が痛く、EU諸国も同様に需要は鈍っているという。


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 以前からだが、特に今年に入ってロシアはウクライナの電力インフラに執拗な攻撃を加えており、ウクライナの電力供給体制に深刻な脅威が発生しており、需要の高まる冬に向け不安が広がっている。本件は、戦争の行方そのものも左右しかねない要因になりつつある。

 ウクライナの電力網は現在、欧州のそれと接続されているので、国内の供給が低下した場合に、欧州近隣国から輸入するのが一つの対策となる。それに関し、ウクライナの「エクスプロ・コンサルティング」というところがこちらのページで有益な情報を発信しているのに気付いたので、これを取り上げてみたい。同社では上図のとおり、ウクライナの相手国別電力輸入量のデータを毎月更新し、グラフにして発表しているようである。

 記事によれば、最新の2024年8月に関しては、電力輸入量は低下した。8月は前月に比べ電力輸入量が43%低下し、47.4万MWhとなった。ポーランドからの輸入が最も減少し、57.5%減の4.8万MWhとなった。ハンガリーは引き続き輸入量の43%を占めている。ただ、2024年8月の輸入量は、前年同月と比較すると、4倍に増加している。2024年6~8月には計210万MWhの電力が輸入されたが、これは2023年通年の総輸入量のほぼ3倍である。今年の電力輸入のピークは6月で、85.8万MWhだった。なお、2024年5月12日以降、電力の輸出は行われていない。


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 あまり趣味の良い研究テーマではないかもしれないが、私はロシアがウクライナから奪った領土(いつまで支配できるのかは知らないが)をどのように経済再建しようとしているかについて観察したいと思っている。

 それに関連し、こちらの記事が、ドネツク冶金工場の再生の動きにつき伝えているので、以下要旨を整理しておく。

 記事によると、ドネツク冶金工場は1872年に設立されたドンバスで最も古い企業のひとつである。銑鉄、粗鋼、鋼管、スラグ形成混合物の生産を専門としている。2014年以来、ウクライナ側からの攻撃と経済封鎖のため、操業停止を繰り返してきた。

 今年3月末、工場はテクノロジカル・インヴェストメンツLLCという投資家にリースされた。「ドネツク人民共和国」のYe.ソンツェフ首相は6月、冶金産業の復興が同共和国の優先課題であると述べていた。

 そして、同工場は8月に約2万2,600tの製品を生産した。同社のモスカリョフ第一副社長によると、4月に新投資家が工場に乗り込んだ時点では、原料の在庫がゼロだったにもかかわらず、2024年4~8月の生産量を3倍以上に拡大した。

 こうした成果を達成できたのは、とりわけ原料供給源の多様化によるものだという。現在、工場の主要製品は連続鋳造ビレットとなっている。


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 今般の英国出張中、ロンドン中心部を歩いていたところ、王立芸術院付属の美術館で、「In the Eye of the Storm:Modernism in Ukraine, 1900–1930s」という企画展をやっているのが目に留まった。美術に関しては完全な素人ながら、地域研究者として観ておくべきだろうと思い、後日時間を見付けて見学してみた。

 王立芸術院のこちらのページに、展示の趣旨・概要は出ている。説明を抄訳しておくと、

 1900年代から1930年代にかけてウクライナで制作された画期的なモダニズム芸術に驚嘆せよ。

 ウクライナのモダニズム運動は、崩壊する帝国、第一次世界大戦、独立の戦い、そして最終的なソビエト・ウクライナの成立を背景に展開された。このような大変動にもかかわらず、この時期は大胆な芸術的実験が行われ、ウクライナの芸術、文学、演劇が真に繁栄した時代となった。

 この時代にウクライナに存在した様々な芸術様式と文化的アイデンティティを紹介するこの展覧会は、ウクライナの現代美術に関する英国で最も包括的な展覧会になる。油絵、スケッチからコラージュ、劇場デザインまで、65点の作品をご覧いただきたい。作品の多くはウクライナ国立美術館とキーウのウクライナ演劇・音楽・映画博物館から貸し出されたものである。

 カジミール・マレヴィチ、ソニア・ドローネ、アレクサンドラ・エクスター、エル・リシツキーといったアーティストから、オレクサンドル・ボホマゾフ、ミハイロ・ボイチュークといったあまり知られていないアーティストまで、それぞれがこの国の芸術と文化に忘れがたい足跡を残した。

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 私としては、やはりウクライナ国民史という観点からの関心となる。個人的には、過去に存在したものを、なんでもかんでも、今日のウクライナ・ナショナリズムに結び付けるようなアプローチには、疑問を覚える。それでも、かつてこの地に存在した芸術運動と、それが秘めていた可能性を掘り起こすことには、意味があるだろう。この企画展は、声高に政治的な主張をするのではなく、作品に語らせることで、ウクライナの問題を問うているように思えた。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年9-10月合併号のご案内。9-10月号は、「ウクライナ復興と企業の役割」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部は今回は、特集に合わせて、「ウクライナ自活の鍵を握る黒海穀物輸出」、「再建の賛否分かれるカホフカダム」を執筆しました。また、特集の枠外では「軍需主導の成長が続くロシアの鉱工業生産」という記事を書いています。


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 ロシア国営通信社の記事でウクライナ情勢をフォローするのはあまり適切でないが、こちらの記事が気になったので以下のとおり抄訳しておく。私は目下EUは無条件にウクライナからの全商品に対する輸入障壁を時限的に撤廃していると理解していたのだが、食品については関税割当(一定量までは無税で輸入できるが上限を超えると関税が課せられる仕組み)が復活したようで、この記事ははちみつのそれについて主に伝えている。

 欧州委員会は、割当量を超過したため、ウクライナからEUへのはちみつの無税輸入を停止した。欧州委員会では、2024年1月1日からのはちみつの輸入量が、2024年6月6日に採択された修正優遇措置(ATM)に規定されていた枠(44,417.56t)を超えたとしている。委員会によると、割当量を超えた時点で無税優遇措置は自動的に停止される。そして、2024年8月21日から2025年6月5日までの対ウクライナはちみつ輸入は、DCFTAに規定された割当量と関税の範囲内で、すなわち2016年以降の通常の体制で行われることになる。

 EUのウクライナからの農産物無関税輸入制度は2022年春に打ち出され、2023年に延長され、2024年6月5日には再び大々的に1年間延長された。しかし、農民の抗議運動からの圧力を受け、ブリュッセルはこの文書に、ロシアによる侵攻前の平均輸入量に基づく量的制限を盛り込み、それを超えると関税は自動的に復活することになった。早くもその2週間後の6月19日には、オート麦と穀物挽割り、さらにトウモロコシに対する関税が、そして7月2日には砂糖と卵に対する関税が復活していた。


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