ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ウクライナ

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年5月号のご案内。毎年5月号はロシア経済と日露関係の総論的な特集と決まっており、今回は「戦時体制下におけるロシア経済の立ち位置」と題する特集となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 力作が揃ったなかなか壮観な号ですな。私自身は、「ウクライナとロシアのエネルギーインフラ相互攻撃」、「北極政策を加速させようとするプーチン政権」と、短い連載記事のみ書きました。


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 上の図は、2月に「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」という講演をやった時に作成したものが元なのだけど、本日駒澤大学で出前講義をするために更新したので、お目にかける。2024年のロシアの統合財政の数字が出たので、その部分を追加した。クリック・タップして拡大表示しご利用ください。

 私なども、ロシアで財政が肥大化し、軍事費の比率が拡大しているということを普段強調している。しかし、連邦財政だけでなく、地域財政も加えた統合財政で見て、なおかつ対GDP比という尺度で測ると、ロシアの財政は意外と横這いなのだなと、若干印象が変わる。もちろん、歳出の中で国防費が拡大していることは間違いないのだが、ロシアという大きなパイの中では、許容可能なのかなという気もしてくる。

 それに対し、国および経済の規模がロシアより小さいウクライナが戦争で負っている負担は、比較にならないくらい大きい。それを自力では賄えず、欧米からの援助でしのいできたわけだが、米国の変節でどうなるか、というところだ。


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 米トランプ政権がこれまでのウクライナ支援の見返りに、ウクライナの鉱物資源を獲得するという例のディールは、その後どうなったのだろうか。ロイターのこちらの記事が新たな動きを伝えているので、要旨をまとめておく。

 米国とウクライナの当局者は、ウクライナの鉱物資源へのアクセスを得るための米国の提案について、金曜日にワシントンで会談した。協議では軋轢が生じており、これはトランプ政権の最新の草案に起因しており、この草案は当初案よりも内容が拡張されているという。

 情報筋は、「交渉は非常に難航している」と言う。先月トランプ政権が提出した「最大主義」の草案によるところが大きい。最新の草案では、ウクライナの鉱物資源への特権的なアクセスを米国に与え、ウクライナの国営企業と民間企業による天然資源開発からの収入をすべて共同投資基金に入れることをウクライナに要求するものだ。

 情報筋によれば、米側提案の目新しい点として、米国政府の国際開発金融公社が、ロシアのエネルギー大手ガスプロムからウクライナを横断してヨーロッパに至る天然ガスパイプラインの管理権を握ることを米国が要求していることだという。

 ウクライナ政府は、鉱物取引に関する外部アドバイザーとして、法律事務所ホーガン・ロヴェルズを起用した。水曜日にゼレンスキーは、鉱物取引は両国にとって有益であるべきであり、ウクライナの近代化に役立つような仕組みになりうると述べた。シュミハリ首相とマルチェンコ財務相を含むウクライナの高官は、4月25日のウクライナに焦点を当てた閣僚会議を含む国際通貨基金(IMF)と世界銀行の会議のため、2週間以内にワシントンに向かう予定である。

 なお、ロイター記事が、ウクライナに所在するガスパイプラインの所有権が、あたかも露ガスプロムにあるかのような書き振りだったことから、他メディアではその点を揶揄しつつ本件を引用しているところが多い。


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 ロシアによる全面軍事侵攻が始まって以降、EUはウクライナに貿易優遇の特例措置を適用してきた。その措置が今年6月5日に期限を迎えたあと、どうなるかの見通しについて、こちらの記事が伝えているので、要旨を整理しておく。

 記事によると、欧州関係筋は、特例措置が6月5日に終了したあと、貿易の条件は開戦前のもの(つまりEU・ウクライナ連合協定による深化した包括的な自由貿易圏=DCFTA)に戻ることになるとの見通しを示した。ただ、その際にEUはウクライナにとって有利な若干の変更を加えることになる。

 関係筋は、「6月6日以降、全面侵略が始まったあとにEUが導入したウクライナに対する自発的貿易措置(貿易優遇措置)は終了する。条件は開戦前の状態に戻る。同様に、現在課されている鶏肉、卵、蜂蜜など多くの商品名に対する優遇措置と制限措置の双方も終了する」と述べた。他方、ウクライナ産の鉄鋼など、若干の品目については優遇措置を残す案も検討されているという。

 今後EUは、連合協定の29条に修正を加えることで、双方にとって有益で戦争に苦しむウクライナを支援できるような措置を検討していくという。

 EU理事会は、長く紛糾した議論の末、2024年5月13日に、対ウクライナ貿易特例措置を2025年6月5日まで延長した経緯がある。今後に関しては、関税免除の条件を、連合協定に統合することが、暫定的に合意されている。


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 こちらに見るとおり、ウクライナ統計局が昨日、2024年のGDP速報値を発表したので、これを紹介する。

 2024年の名目GDPは7兆5,587億フリブニャだった。前年比実質2.9%成長した。プラス成長ではあったが、成長率は2023年の5.5%からは減速しており、2022年に28.8%ものマイナス成長を記録したことを考えれば、充分な回復とは言えそうもない。

 2024年のGDP成長率を四半期別に見ると、Q1こそ前年同期比6.8%増だったが、Q2が4.0%増、Q3が2.2%増、Q4が0.1%減と、徐々に失速した。ベースとなる前年の数字によるところも大きいとはいえ、ここに来ての失速は気になる。

 2024年のGDPを産業部門別に見ると、ウクライナの屋台骨を支える農林水産業が7.3%減だったことが痛い。軍需産業の拡大ゆえと考えられるが、製造業は6.0%増。建設は復旧需要ゆえか16.2%増、運輸・倉庫も11.4%増と伸びを見せた。


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 実現するかどうかは不透明だが、ロシア・ウクライナ停戦交渉の焦点になっているのが、双方のエネルギー関連インフラへの攻撃を停止するとの合意である。ニューヨークタイムズのこちらの記事が、それが実現した場合の両国にとっての恩恵について論じているので、以下抄訳しておく。

 まず、ウクライナにとっての恩恵は以下のとおり。

 ロシアは2022年10月、ウクライナのエネルギー・インフラへの攻撃を開始した。モスクワは、ウクライナのエネルギー・インフラを重要な標的とする消耗戦を選択した。

 エネルギー・インフラ攻撃は、ウクライナを屈服させようとするモスクワの試みの重要な部分を占めている。その目的は、ウクライナの経済、ひいては戦争の動力源となるエネルギー資源の息の根を止めることだとされる。と同時に、人々の生活を耐え難いものにし、寒さと暗闇に陥れることで、人々の士気を失わせることも意図されているようだ。

 ウクルエネルゴの元代表であるV.クドリツキー氏は、ロシアはウクライナのエネルギー・システムを守る能力を弱体化させるために、常に標的と戦術を変えていると指摘する。モスクワは、キエフの防空を圧倒するために、長距離無人機や弾道ミサイルの複雑な攻撃波を使ってきた。ウクライナが主要な変電所をコンクリート掩蔽壕で補強し始めた後、ロシアは火力発電所を直接攻撃したり、原子力発電所に接続されたあまり保護されていない変電所を攻撃したりするようになった。

 2022年秋以来、モスクワはドローンやミサイルを繰り返し使用し、変電所や発電所、最近ではガス施設を攻撃している。キエフ経済学院の試算では、ウクライナ・エネルギー部門の被害額は少なくとも146億ドルに達している。いくつかの水力発電所や火力発電所が攻撃によって完全に破壊された。

 2024年末までにウクライナの総発電能力は約22ギガワットにまで低下し、戦前の半分以下となった。ウクライナは全国的な計画停電を余儀なくされている。首都キーウの近郊では、わずか4時間しか電力が供給されない日もあった。多くの市民はロウソクに頼り、明かりのない道を歩くために携帯電話のライトを頼りにしている。

 水の汲み上げシステムが故障することもあり、家庭への水道水の流れが遮断され、市民の生活は苦しくなった。戦争が始まって最初の冬には、キーウの井戸に長蛇の列ができ、住民は暖房のないアパートに水を運んで帰った。

 それでもロシアは、ウクライナのエネルギー・システムを完全に崩壊させる試みに失敗した。ウクライナが攻撃に耐えてきたのは、西側諸国が提供した防空システムによってロシアのミサイルを徐々に迎撃できるようになったこと、技術者たちが24時間体制で重要な設備を修理したこと、そして住民たちが省エネの工夫をした賜物である。

 ウクライナはまた稼働中の3箇所の原子力発電所を利用できており(ロシアも原子力災害を防ぐために攻撃を避けている)、ある期間には国の電力需要の半分近くを賄っている。

 前出のクドリツキー氏は、攻撃停止によってウクライナは新たな攻撃の脅威を受けることなく、変電所や発電所を修理する重要な時間を得ることができると指摘する。ウクライナは損傷した機器を交換するために在庫を使い果たしてしまっており、攻撃が止まれば発電所から各家庭への送電に必要な貴重な変圧器など、重要な予備機器の在庫を補充する時間も得られるだろう。

 次に、ロシアにとっての恩恵は、以下のとおり。

 ウクライナは2024年初頭、ロシア経済の中心である石油・ガス産業に打撃を与え、軍への燃料供給を制限するため、ロシアのエネルギー・インフラを繰り返し標的にし始めた。専門家によれば、キエフの狙いは2つあったようだ。ロシアの石油収入を減らすことと、重要なインフラ施設で大規模な火災を起こし心理的効果を生み出すことだった。

 過去1年間、ウクライナのドローンはロシア領土の奥深くまで飛行し、石油精製所、油槽所、貯蔵ユニット、パイプライン、ポンプステーションを攻撃してきた。この攻撃により、ロシアの港湾石油ターミナルや、原油をヨーロッパ諸国に送るドルージバ・パイプラインの石油の流れが寸断されている。そのため、エネルギー輸出収入が減少する恐れがあるが、どの程度影響を受けたかを分析するのは困難だ。

 ロイターによると、製油所への攻撃により、同国の精製能力は一時約10%低下したという。しかし、ロシアの石油大手は、損害を迅速に修復することもできた。オスロに亡命しているロシアの独立系エネルギー・アナリスト、M.クルチヒンによれば、ロシアの石油精製工場に加えられた損害はかつてないほど深刻 だったという。ロシアには多くの製油所があるため、被害を受けた製油所から原油の流れを変えることはいつでもできる。時には、製油所が硫黄分の多いジェット燃料の生産を始めなければならないこともあったが、そのお陰で戦闘機は飛び続けることができる。それでも、製油所の一部のユニットは、生産と設置に何年もかかる可能性があるため、攻撃は長期的に損害をもたらす可能性があると、クルチヒンは指摘した。

 カーネギー国際平和財団のエネルギー専門家S.セルゲイは、ロシアの石油会社がウクライナの攻撃によって受けた損害を修復するために費やすべき費用は10億ドル以下だと述べた。

 専門家らは、エネルギー・インフラ攻撃停止で、どちらの国がより多くの利益を得ることになるかを判断するのは難しいとの考えを示している。いずれにしても、ロシアにとっては、ウクライナの攻撃が停止することは、ロシア国民にとって戦争とその影響がより遠のくことを意味する。また、このような攻撃が重要な石油インフラに損害を与えることを心配する必要もなくなる。


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 こちらの記事が伝えているとおり、3月18日にプーチンがトランプと電話会談する前に、プーチンはロシア産業家・企業家同盟の総会に出席し、その席でウクライナ戦争についても言及したということである。プーチンは、ロシアが達成したもの、すなわちクリミア、セヴァストーポリ市、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州をロシアから奪うことはできず、それらがロシア連邦の領土であることを認めるべきだとした上で、もしその承認が近いうちになされるのであれば、ロシアはオデーサその他の現在ウクライナに属している地域を要求することはしない旨述べたということである。

 そもそも、オデーサをはじめ、ロシアが占領すらしていない地域に対し潜在的に権利を有するかのような発言がイカレているが、問題は今回のプーチン発言をどう捉えるかである。ロシアの報道振りでは、「オデーサまで攻め込むつもりはない」と、ロシアの「善意」を強調したものが目立つ。他方、反政府派のモスクワタイムズはむしろ、こちらの記事で、もしもウクライナ側が一連の占領地のロシアによる編入を飲まなければ、ロシアはオデーサにまで攻め入るというニュアンスで捉えている。

 私自身も、モスクワタイムズの受け止め方に近い。停戦の機運が出てきたとはいえ、現時点でウクライナのゼレンスキー大統領が占領地の全面的な割譲に応じるのはあまりにハードルが高く、ロシア側もそのことは見透かしているだろう。しかも、おそらくロシアは、ウクライナ東部・南部の4地域につき、実際に占領しているエリアだけでなく、ウクライナ側が保持できているエリアもロシアへの編入を要求し、わざと飲めないような厳しい条件を突き付けるのではないか。そうすると、「ウクライナが条件に応じないから停戦できない」と称し、あたかもロシア側にオデーサに攻め入る大義名分が生じたかのような立場をとるのではないか。ロシアとしては、万が一ウクライナ側が「4地域の編入を認める」と回答して来たらそれでよし、断ってきてもそれを理由にさらに攻撃を続けられるのでそれもよしということではないだろうか。

 もちろん、ロシアとしては今すぐに地上部隊をミコライウ州やオデーサ州にまわす余裕はないだろうし、ウクライナの攻撃で黒海艦隊の揚陸艦を失っていることからも、オデーサ攻略は難易度が高い。しかし、以下のようなことから考えて、プーチンがオデーサ州を諦めたとは、個人的に思えないのである。

  • オデーサ一帯はプーチンも尊敬する女帝エカテリーナ2世が獲得した領土で、その思い入れが強い。
  • オデーサは、言語的にはロシア語圏(現実には、だからといって、現地住民のロシアへの親近感が特に強いわけではないのだが…)。プーチンは2023年12月に「オデーサは完全にロシア人の街だ」と発言した。
  • 2014年にオデーサで親露派多数が労働組合会館で焼き殺された事件は、プーチンが主張している「ウクライナ=ネオナチ」のエビデンスとされており、ロシア側は同事件の首謀者を捕らえ裁くとしている。
  • ウクライナがオデーサの港を失い、内陸国になってしまえば、食料や鉄鋼・鉄鉱石の輸出もままならなくなり、ウクライナを経済的に弱体化させられる。
  • 逆にロシアは港と(日本人から見るとしょぼいが)ビーチを手に入れられる。
  • ウクライナが海への出口を失えば、ロシア黒海艦隊への脅威もなくなり、活動範囲を広げられる。
  • オデーサ一帯を支配できれば、ロシアはモルドバにも直接的に軍事的圧力を行使できる。

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 パブリブさんと言えば、旧ソ連圏をはじめ、マニアックな地域をマニアックな角度から鋭くえぐった意欲的な出版で知られている。このほど同社より、田中祐真(著)『ウクライナ製品完全ガイド: 善意から物欲へ』が刊行されることになった。同社による案内によれば、

 突然ですが『ウクライナ製品完全ガイド』を出版します! 著者は田中祐真さんで、副題は『善意から物欲へ』、そしてシリーズ『ウクライナ応援団』のVol.1となります。

 ロシアによるウクライナ侵略が始まってから3年が経ちました。侵略が長期化するにつれて、ウクライナへの寄付や支援活動も徐々に下火になってきたのは否めません。

 またトランプ政権の誕生でアメリカ政府のウクライナに対する支援が不安定化しています。

 ウクライナがロシアの侵略を撃退する為には、人々の善意や他国政府からの支援の依存度を減らし、その経済力を高め、税収を増やす必要もあるのではないかと考えました。

 そこでウクライナで生産されている魅力的な商品の数々を紹介する意図で企画されたのが、この『ウクライナ製品完全ガイド』です。

 「ウクライナ製品だから」という理由だけで義務感で買わざるを得ないようなものではなく、なるべく純粋に物欲・所有欲・消費欲が刺激されるようなものをピックアップしています。

 ということだ。同社によると、「日本も円安インフレで非常に苦しい経済状況に直面していますが、四六判並製オールカラーで192ページ、2400円に抑えました。弊社自体にとっては採算度外視の慈善事業に近いものがあり(汗)……、ぜひ買い支えて頂ければ幸いです」とのこと。4月中旬刊行予定!


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 米地質調査所は、Mineral Commodity Summariesというレポートを、毎年刊行している。世界各国の鉱物資源の埋蔵量や生産量を網羅した、なかなか有難い資料だ。

 当ブログでは、ロシアにおいて経済統計の開示度が低下していると苦言を呈することが多いが、実はベラルーシはもっと徹底していて、たとえば同国にとり最重要な輸出品目である塩化カリウムの生産動向が、2021年以降国家機密となっている。そこで、2021年以降に関しては、米地質調査所レポートに出ている推計値を用い、個人的に以下のようなグラフを作成している。

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 ちなみに、同レポートにはレアアースというページもあるのだが、そこにはウクライナが一言も出てこない。スカンジウムのところで、ちょろっと言及されるだけである。このレポートを紐解けば、ウクライナが潤沢なレアアース資源を抱えているわけではないことなど一目瞭然なのだが、果たしてトランプのチームはこのレポートをちゃんと読んだり、あるいは米地質調査所のスタッフから聞き取りをしたりしたのだろうか? それとも職員解雇しちゃった?


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 そう言えばウクライナの乗用車販売は今どうなっているのかとふと気になって、軽く検索してみたら、こちらの記事に2024年の販売実績が載っていたので、以下整理しておく。

 業界団体のウクルアフトプロムのデータによると、2024年にウクライナでは69,600台の乗用車(新車)が販売された。これは前年比14%増であり、2016年の水準に戻った。新車販売のうち3万台強が首都キーウおよびその郊外のキーウ州に集中しているのが特徴である。

 ウクライナでは伝統的にトヨタが強く(住友商事の尽力の賜物)、2024年のブランド別販売台数でもトヨタが10,731台でトップだった。ベスト10の顔触れは上掲画像参照。

 とはいえ、ウクライナでは欧州などから輸入される中古車のプレゼンスの方が大きい。2024年には22.2万台の中古車が販売され、前年比4%増であった。


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 Wedge Onlineに、「火事場泥棒トランプが狙うウクライナのレアアース、ゼレンスキー訪米で協定でも、噂の資源はどこまで有望か」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日、17日の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催しました。私は「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」という報告を行いました。なお、6本すべての講演動画が、こちらでアーカイブ視聴できますので、ぜひご利用ください。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年3月号のご案内。3月号は、「ロシア・NISビジネスとROTOBOの活動」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産」、「独自航路で活路を開いたウクライナの海運」を執筆しています。


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 先日、「トランプがウクライナのレアアースに触手」という話題をお届けし、その時にウクライナの地下資源地図もお目にかけた。しかし、その時のものはそれほど分かりやすくなかったので、改めてこちらの記事に載っていた資源地図を上掲のとおりお目にかけたい。

 トランプが執拗に要求している「ウクライナのレアアース」というものが、厳密な意味でのレアアースなのか、それとも希少資源全般なのかというのは、良く分からない。私はどちらかというと後者のような気がしている。ともあれ、厳密な意味でのレアアースの埋蔵地は、上掲地図の凡例で赤矢印で示したとおり、パステルグリーンっぽい色の地点となる。


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 それにしてもお下劣だ。こちらの記事によると、

 トランプ米大統領は3日、レアアース(希土類)の供給を確保したいとし、ウクライナが米国に供給することを望んでいると述べた。ウクライナが米国の要請に応じる用意があるとも述べた。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、米国の「3,000億ドル近い」支援に対してウクライナからの「応分の見返り」を望んでいると表明。「われわれは、レアアースなどの提供についてウクライナと取引をしたいと考えている」とした。トランプ氏が「レアアース」という文言を、全種類の重要鉱物を指して使っているのか、それとも希土類だけを指して使っているのかは現時点では不明。レアアースとは31鉱種あるレアメタルの中の17種類の希土類の総称。電気自動車や携帯電話などに使用される。ウクライナにはウラン、リチウム、チタンが大量に埋蔵されているが、いずれも産出量では世界5位には入っていない。一方、米国にはこれら重要鉱物などの未開発埋蔵量があるとみられる。

 それで、トランプがウクライナの資源を欲しいと言い出したので、ウクライナのどこに地下資源があるのかを示した2023年のウクライナ版フォーブスの記事が、再び脚光を浴びたようだ。上掲地図はそれに掲載されていたもので、州別の地下資源埋蔵額を示している。これによると、ウクライナの地下資源の埋蔵額は14.8兆ドルに上るが、ドネツク州が3.8兆ドル、ルハンシク州が3.2兆ドル、ドニプロペトロウシク州が3.5兆ドルと、この3州だけで全体の7割を占めている。ということは、いかにトランプが関心を示そうと、ウクライナが東部領土を維持できなければ、地下資源の大部分も失うことになってしまう。

 PS 追伸だけど、こちらのポストの画像には、資源の内訳も出ていて、なお良し。

Gi4

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cnua

 昨日のロシア・ウクライナに続き、本日は中国の対ウクライナ・モルドバ貿易動向のグラフをお目にかける。ロシアの支配を脱しEU加盟を目指す両国だが、貿易パートナーとしては中国に期待する部分が小さくない。しかし、肝心の対中貿易パフォーマンスは、思うようには発展していない。

 まず、中国の対ウクライナ輸出入動向が上図のとおり。ウクライナは中国にとって飼料用トウモロコシと鉄鉱石の供給国としてそれなりに重要だったのだが、開戦後のロシア軍による黒海封鎖で輸送路が閉ざされ、2023年終盤からはウクライナが独自に開設した航路を通じた輸出が復活はしているものの、貿易水準は戦前から大きく落ち込んだままである。

 次に、中国の対モルドバ輸出入動向が、下図のとおり。2024年には、輸出入とも順調に伸び、過去最高を記録した。ただ、モルドバにとってみれば、中国市場への販売拡大、それを通じた対中貿易赤字の解消が目標であり、その問題は未解決のままである。実はモルドバはそうした目標を念頭に中国とFTA交渉を進めてきたのだが、現政権が従来以上にEUに傾斜しているので、モルドバの交渉熱意は低下している印象である。

cnmd

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 ウクライナ港湾管理局のフェイスブックページに、2024年のウクライナの港湾における取扱貨物量の概況が掲載されたので、簡単に紹介しておく。

 管理局の発表によると、2024年のウクライナ港湾による取扱貨物量は9,720万tとなり、前年の6,200万tを大幅に上回った。2024年も圧倒的に多かったのは輸出貨物で、8,810万tに及んだ。輸入貨物は880万tに留まった。

 2024年にウクライナの港湾貨物量が大幅に回復したのには、ウクライナがロシア海軍の脅威を遠ざけ、2023年後半から黒海西岸沿いを進む独自の航路を開設したことが大きかった。その結果、上図に見るとおり、主力である「大オデーサ港」、すなわち(狭義の)オデーサ港、ピウデンヌィ港、チョルノモルシク港の貨物量が急増した。一方、イズマイル、レニ、ウスチドゥナイシクという河川港は、「お役御免」とばかりに、貨物量を低下させた。


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Ukraine-russia

 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日(金)と17日(月)の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催します。無料、かつリモートで視聴できるので、是非ともチェックいただき、事前登録いただければ幸いです。全体では長大なプログラムですが、もちろんご関心のあるコマだけ聴いていただいても結構です。

 ロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻開始から3年ということで、各所で色んな企画が進行していると思いますが、私どもスラブ・ユーラシア研究センターでは、しばしば語られる大国政治や戦況というよりは、地域研究拠点としての特色を生かしたプログラムを組んでみました。2月14日の第1部では、「周辺国からの視点」と題して、国末憲人「アゼルバイジャンとアルメニア ―もう一つの戦争をめぐって」、松澤祐介「中欧の小国開放経済とウクライナ戦争 ―スロバキアの『親ロシア』のコンテクスト」、六鹿茂夫「ロシアの巻き返し戦略とモルドヴァ・ルーマニア」という報告をお届け。2月17日の第2部では、「戦争で変わるロシアとウクライナ」と題し、山添博史「ロシア大国化構想から規範毀損型サバイバルへ」、田中祐真「戦時下3年間のウクライナ国内情勢」、服部倫卓「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」というプログラムを組んでみました。いずれも、他では聴けない濃い報告になると思いますので、ぜひご期待ください。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年2月号のご案内。2月号は、「ユーラシア空間におけるBRICSの現在地」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「ロシアのアルミニウム輸出にも制裁の影が」、「2024年のロシア軍と軍需産業を振り返る」、「ウクライナ経済はロシア経済より健全?」を執筆しています。


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 こちらの記事などが伝えているとおり、1月15日にワルシャワでポーランド首相と共同記者会見に臨んだゼレンスキー・ウクライナ大統領が、ウクライナ軍が使用している兵器の出所割合について述べたということである。

 ゼレンスキーいわく、ロシアによる全面軍事侵攻開始後、ウクライナは自国の兵器生産を急増させているが、欧米からの兵器支援が供給の70%程度を占めており、引き続き欧米の支援が必要である。当初はウクライナ製が10%以下だったが現在はそれが33~34%に増えており、大幅な伸びだ。欧州からの供給が30%ほど、米国からの供給が40%ほどとなっている。戦車、航空機、ヘリコプターなどに関しては、ソ連製・ロシア製含め、現時点でウクライナよりもロシアの方が多く持っている。無人機に関しては、国内生産とパートナーからの資金のお陰で、ウクライナの方が上だ。もし今ロシアの凍結資金がウクライナに提供されれば、復興のためだけでなく、国内の成長のための資金も増えるだろう。ゼレンスキーは以上のように述べた。


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 ウクライナ系メディアのこちらの記事が、米戦争研究所の情報等にもとづき、ロシア軍は戦線での装甲戦闘車両の損耗が激しいので、節約するようになっていると伝えている。

 記事によると、2024年にウクライナ軍は、ロシア軍の戦車3,000両、装甲車両9,000両を破壊するか、損害を与えた。それゆえ、ロシア軍が戦車・装甲車両の戦闘での使用を縮小せざるをえない場面が、非常に増えている。

 ウクライナ軍情報筋によると、ロシア軍はクラホフスキーなどの戦場で歩兵による攻撃に切り替えている。装甲車は歩兵部隊の火力支援としてのみ使用されている。

 ロシア軍が装甲車両日投入を縮小している理由として、戦争研究所は3点を挙げている。①装備備蓄の減少:ロシア国防総省保有のソ連製装甲車の備蓄は大幅に減少しており、ロシア軍は残存車両の節約を余儀なくされている。②再装備の難しさ:ロシア軍は装備品の補充という問題に直面している。これは、ロシアが失われた装備に代わる十分な新型戦闘車両を保有していないことが原因である。③機械化攻撃にとって不利な条件:クラホヴォやポクロフスクといった大都市近郊での攻撃は、ロシアが過去に戦った野原と比べ、装甲車両の使用にとって不利である。

 ウクライナの中佐が『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せたコメントによると、ロシア軍はウクライナ東部での攻撃に電動スクーターやバイク、全地形対応車を使うことが増えているという。これは、装甲車の損失を補おうとするクレムリンの試みの一環である。このような車両は装甲車よりも安価で入手しやすいが、戦闘において同等の効果を発揮することはできない。

 戦争研究所によると、ロシアが開戦前に保有していた装甲車両のうち、2024年末現在で残っているのは、戦車の47%、歩兵戦闘車両の52%、装甲輸送車両の45%に留まる。

 アナリストたちは、2024年に9,000両近くの装甲戦闘車両が失われたことは、戦争開始後2022~2023年の年間損失量の3倍に相当すると指摘している。このため、ロシアが2025年にこのような損失を許容できる可能性は低い。「このレベルの損失はロシアの再装備能力を超えており、ロシア軍はもはや現在の年間装備損失率を維持することはできないだろう」と戦争研究所の報告書は述べている。


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 ウクライナ港湾管理局のフェイスブックページに、2024年のウクライナの港湾による取扱貨物量が出たので、以下で紹介する。

 これによると、2024年にウクライナの港湾は9,720万tの貨物を取り扱い(うち輸出貨物が8,810万t)、前年比57%増だった。うち、6,000万tは農産物だった。「2024年の成果は、戦時下にあり、敵が重要インフラに攻撃を仕掛けてくる中でも、ウクライナが自ら輸出ポテンシャルを切り開くことができることを証明した」と、港湾管理局では自信を示している。


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 ウクライナのルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州を占領している(全領域ではない)ロシアは、2023年春に、占領地の鉄道を統合する形で、連邦国家一体企業「ノヴォロシア鉄道」=ФГУП "Железные дороги Новороссии"なるものを創設した。上の地図は、しばらく前に出たこちらの記事が、ロシア本土のロストフ、タガンロク、ドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のベルジャンスク、メリトポリ、そしてクリミアのジャンコイを結ぶ新線の建設を始めたというニュースを伝えた時のものである。

 そして今般、こちらの記事が、ノヴォロシア鉄道が復興計画をまとめたということを伝えた。自称「ドネツク人民共和国」のD.プシーリン首長が明らかにした。

 プシーリンいわく、鉄道サービスに関しては、列車を運行するための準備はすべて整っている。オペレーションが可能になり次第、直ちに運行させる。戦線が前進するのに応じて、鉄道インフラを監査し、段階的に復旧させている。さらに、ノヴォロシヤ鉄道会社は、デバルツェヴォ、ヤシノヴァタヤ、イロヴァイスク、ヴォルノヴァハといったハブ駅を考慮した2025年から2030年にかけての復旧プログラムを策定している。実際の鉄道運行は、ドンバスとノヴォロシアの領域ですでに行われており、ロシア全体の鉄道網に接続する可能性もある。プシーリンは以上のように述べた。


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 欧州最大の原発であるザポリージャ原発は、今般のロシアによる全面軍事侵攻が始まって以来、ロシア側の支配下にある。原発の1号機が稼働開始したのは1984年12月だったので、原発はロシアによる占領という異常な状況下で、このほど稼働40周年を迎えた。

 それで、ウクライナ統治下では原発は「エネルゴアトム」によって経営されていたが、ロシア占領下ではロスアトムの子会社である株式会社「ザポロジエ原発操業機構」=АО «Эксплуатирующая организация Запорожской АЭС»によって管理されているということである。

 そして、その副社長であり、かつ原発の所長を務めているのが、ユーリー・チェルニチュークという人物である。こちらにその経歴が出ているが、ロシア側が派遣したわけではなく、元からウクライナの原子力業界で働いていた人物であり、近年はザポリージャ原発で幹部を務めていたところ、ロシア軍がやってきて、それに協力することにし、2022年11月に現職に就いたようだ。原子力コラボラトゥールといったところか。

 それで、今般TASSのこちらの記事で、ザポリージャ原発40周年を受けたチェルニチューク所長のインタビューが掲載された。あまり詳しく取り上げる余裕はないが、現時点では6つある原子炉のすべてが停止しているところ、2025年には一部でも再稼働にこぎ着けたく、そうなれば「ノヴォロシア」、ドンバス、クリミアの電力需要を全面的に賄えるようになる、といったことを述べている。


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 こちらのサイトに、ウクライナ鉄鋼業の2024年の実績と2025年の予想という記事が出ていたので、以下で要点をまとめておく。なお、上図はその記事に添えられていたもので、左は鉄鋼輸出量、右は鉄鉱石輸出量を示しており、ともに単位は100万tで2024年と2025年は見通しとなっている。

 2024年にウクライナの鉄鋼生産は予想を上回ったが、2025年の生産は9%、輸出は16%低下する可能性がある。これは、長引く戦争の影響と、世界市場での競争激化によるものである。

 これはウクライナの経済見通し全体にも影響を及ぼす。鉄鉱石・鉄鋼部門は2023年にウクライナGDPの5.7%を占め、輸出の15%を稼ぎ出した。

 2024年の粗鋼生産は予想を大きく上回り、前年比21%増の750万t程度になると見られる。ただ、戦前の2021年には2,140万tだったので、それに比べれば65%も少ない。

 2023年後半に海路による輸出の道が開かれたことが、奏功した。アルセロールミタル・クリヴィーリフの第2高炉が2024年春に稼働再開し、その結果、2024年1~11月の時点で、半製品の輸出は60%増の65万t、完成鋼材の輸出は40%増の50万tとなった。

 また、海路による中国向けの鉄鉱石輸出も復活し、1~11月に中国向けに1,300万tを輸出、これは全鉄鉱石輸出の43%を占めた。

 しかし、2025年のウクライナの鉄鉱石・鉄鋼の生産と輸出には、一連の逆風がある。戦闘が続くこと、中国の過剰生産による世界市況の低迷、EUによる関税優遇措置の撤廃、原料炭輸入の必要、鉄道・電力・ガスなどの料金の上昇、国内需要の低迷などである。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年1月号のご案内。1月号は、「トランプ政権復活で注目される米ロ関係の行方」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は、今号では、特集の枠内で「ロシアの肥料輸出は好調を維持 ―米国も輸入を継続」を、枠外で「軍事偏重を余儀なくされるウクライナ国家予算」を執筆しています。また、表紙の写真も担当しました。11月に米出張に出かけた際に撮影した国連本部の写真です。


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 若干ご紹介が遅れましたが、私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年12月号のご案内。12月号は、「制裁と成長の狭間で揺れるロシア経済」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今回も私は脇役で、「制裁下ロシアの鉄鋼輸出動向」、「原料炭田喪失の危機に立つウクライナ鉄鋼業」という短い連載記事のみ書きました。


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 東部戦線で、ドネツク州の要衝、ポクロウシクをめぐる状況が芳しくないようだ。こちらの記事によると、「ポクロウシクのドブリャク市長は30日、露軍が同市まで約7キロの距離に迫っているとし、防衛の準備に向けて同市を『封鎖』すると発表した。ドブリャク氏は、ドネツク州のウクライナ軍の重要防衛線の一角であるポクロウシクを巡る攻防戦が近く始まるとの認識を示した形だ。ドブリャク氏によると、防御拠点を構築中の地区への住民の出入りを禁止するほか、住民避難を進める。市内には現在、子供55人を含む住民約1万2000人が残っている」ということである。

 それで、様々なメディアが、仮にウクライナがポクロウシクを失うと、同国の鉄鋼業にとっても大打撃となると伝えている。同市には、鉄鋼業に必要な原料炭を採掘する炭鉱があり、それを失えば、ウクライナ鉄鋼業が原料基盤を欠くことになるからだ。

 代表例として、英エコノミストのこちらの記事が、以下のように伝えている。2014年にウクライナがドンバスの半分を親露分離主義者に奪われ、炭鉱の80%が失われた。ウクライナ側に残ったポクロウシク炭鉱は1990年に開坑した比較的新しいもので、ウクライナ有数の富豪R.アフメトフが所有するメトインヴェスト社のものとなっている。メトインヴェストはすでに、マリウポリの2つの製鉄所とアウジイウカにあった欧州最大のコークス化学工場をロシアに破壊されている。そして今、彼はポクロウシク炭鉱も失う事態に直面している。ロシア指導部にとって、アフメトフの資産を標的にすることは、ウクライナ経済を弱体化させる以外に、復讐という意味もあると広く信じられている。2014年以前、クレムリンは間違いなく彼が分離主義やロシア側に付くと信じていた。彼がウクライナ側に付くと、クレムリンはこれを裏切りとみなし、彼の財産を差し押さえた経緯がある。ポクロウシク炭鉱は、関連する工場や管理棟と合わせて6,000人を雇用しており、そのうち約1,000人は現在軍に勤務している。ポクロフスク鉱山はウクライナ最大の原料炭の炭鉱で、ウクライナに残る鉄鋼業にとって不可欠だ。今年、同炭鉱で530万tの石炭を採掘する予定であった。2023年、ウクライナは620万tの粗鋼を生産した。しかし、マリウポリの2大製鉄所を失う前の2021年の粗鋼生産量は2,140万tだった。この年、ウクライナは世界第14位の鉄鋼生産国だったが、2023年には第24位に転落した。もっとも、ある専門家によれば、ロシア軍はウクライナに残る鉄鋼業に打撃を与えるために鉱山を奪う必要さえないという。彼らが前進するにつれて、電力供給を遮断し、石炭を西の残りの製鉄所まで運ぶ道路を封鎖しようとするだろう。そして、ウダチネの北18kmにあるドブロピリアの別の小規模鉱山でも同じことをするだろう。業界団体「ウクルメタルルフプロム」の代表先月、ポクロウシクの原料炭の喪失は鉄鋼生産量のさらなる悲惨な損失につながると述べた。今年の粗鋼生産量は750万tに達する可能性があるが、ポクロウシクが失われた場合には、200万tから300万tになってしまうと、代表は述べた。ロシアはそれを知っているのだ。


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luk

 社会科教科書でお馴染みの帝国書院が発行している冊子『地歴・公民科資料 ChiReKo』の2024年度2学期号に、「ロシア・ウクライナ産業紀行 ―ありし日の情景をめぐって」と題するコラムを寄稿しました。無料でお読みになれますので、よかったらご笑覧ください。


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2024年11月合併号のご案内。11月号は、「20年の節目を迎えた『中央アジア+日本』」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今回は私は完全に脇役で、「ロシアが描く強気の経済・財政想定」、「ウクライナはこの冬の電力危機を耐え抜けるか」という短い連載記事のみ書きました。


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