ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ロシア

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 昨日に引き続き、私が把握しているデータと、A.ノヴァク副首相が発表したデータを突き合わせ、ロシア・エネルギー部門の数年間にわたる動向を跡付けてみたい。今日は天然ガスを取り上げる。いわずもがなだが、上図では、生産のグラフと、輸出のグラフでスケールが異なるので、その点だけご注意願いたい。最初はスケールを合わせて作図しようと思ったのだが、そうすると輸出の部分が矮小になりすぎて何だか分からないグラフになってしまうので。逆に言うと、ロシアの天然ガス輸出比率は意外と低いということも言えそうである。

 ウクライナ侵攻後、欧州向けが壊滅し、生産およびパイプライン輸出ともに落ち込んできたロシアの天然ガス部門ながら、上図に見るとおり、2024年には一定の回復を示した。おそらく、生産は前年比7%増、パイプライン輸出は18%増となったと見られる。

 それを支えたのは中国向け輸出であり、「シベリアの力」を通じた対中輸出は、2023年の227億立米から、2024年には310億立米程度に高まったと見られる。年間契約量が300億立米だったから、それを超過達成した。もっとも、2024年には欧州向けも若干回復した模様である。

 ロシアとしては、長期的にパイプラインからLNGにシフトし、2030年頃までに差し当たり50:50にするのが目標である。しかし、既存のサハリン2、ヤマルLNGこそフル稼働しているものの、それに続く存在だったアルクLNG2が米制裁の対象になり、LNG部門の一層の拡大は暗礁に乗り上げた格好である。


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 昨日お伝えしたとおり、ロシアのA.ノヴァク副首相が2024年のエネルギー関連指標を公表したのだが、2024年の数字だけだと好不調が分からないので、上図のとおり、まずは石油の数字を数年分のグラフにしてみた。

 まず、原油の生産は5億1,600万tということだったが、私の把握しているデータによれば、これは前年比3%ほどの減ということになるはずである。原油の輸出量は2億4,000万tで、これは前年比1%増になるはずである。

 問題は石油製品の輸出なのだが、ノヴァク副首相は今回その数字を挙げなかった。ただ、ロイターのこちらの記事で、2024年のロシアの石油製品輸出が不振だったことが伝えられている。ロシアは、近隣諸国に陸路で石油製品を輸出するパターンもあるが、大部分は海路での輸出になるはずである。ロイターによると、2024年のタンカーによる石油製品輸出は前年から9.1%低下し1億1,370万tとなったということである。陸路の分が不明ではあるが、まあだいたいトータルで9%くらい低下したのかなと判断し、上図ではその推計にもとづき2024年の石油製品輸出の数字を補っている。原油の生産・輸出はほぼ想定どおりだったが、製品の輸出がだいぶ下ブレしたということだろう。


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 それにしても、ロシアという国で不思議なのは、公式統計で国家機密とされているデータが、わりとあっさり手に入ることである。そのあたりがどうも徹底していないのだ。石油・ガスなどに関しては、ウクライナ侵攻後、生産量も輸出量も統計が発表されなくなったのに、なぜかエネルギー担当のA.ノヴァク副首相がそのデータを堂々と列挙するという、謎現象が見られる。

 そんなわけで、今般、ノヴァク副首相がこちらの論考で2024年の各種のエネルギー関連指標を列挙しているので、主な点を以下箇条書きでまとめておく。

  • エネルギー産業はロシアのGDPの約20%を占める。
  • 2024年の原油の生産量は5億1,600万t、輸出量は2億4,000万tだった。
  • 2024年の製油所における原油の処理量は2億6,650万tだった。得率は前年を上回り84.4%となった。ガソリンの生産は4,110万tに、軽油の生産は8,160万tに拡大した。
  • 天然ガスの採掘は6,850億立米で、前年比7.6%拡大した。パイプラインガスの輸出は1,190億立米で前年比15.6%増、LNG輸出は472億立米相当で4%増だった。
  • 「シベリアの力」を通じた中国へのガス輸出は、12月1日から、契約にうたわれている最大量である年間380億立米を満たす水準に高まった。結果、2024年の中国向け輸出実績は契約量を超えた。極東ルートのパイプライン建設も進んでおり、2027年稼働予定。
  • 2024年の石炭の生産量は4億4,350万t、輸出は1億9,620万t、国内供給は1億7,800万tだった。
  • 2024年の発電力は1兆1,983億kWhで、前年比2.9%拡大した。2024年には1.7GWの発電能力が新規稼働した。

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 こちらのページに見るとおり、ロシア統計局が2024年のロシアGDPの速報値を発表したので、拝見してみることにしよう。ただし、統計局のページは、たとえVPNを介してもアクセスしづらくなっており、根性で閲覧する他ない。

 統計局によると、2024年のロシアの実質GDP成長率は4.1%だった。なお、いつの間にか2023年の数字も改定されたようで、くしくも2023年も同じ4.1%成長に修正されたようだ。

 上図は、主な生産部門別に、2024年の生産増減を見たものである。先日の鉱工業統計の際にも触れたが、軍需景気で製造業が伸びる一方、鉱業が沈んでいることが、GDP統計からも確認できる。今回特に目を引いたのは、農林水産業の落ち込みが大きかったことで、これは天候不順等による穀物収穫の低下と関係していよう。

 もう一つ目立つのは、2023年には9.5%も伸びていた建設が、2024年には1.7%増へと減速したことで、これは以前もお伝えした国の支援による優遇ローンの打ち切りで新築住宅ブームが一段落したことに起因しているはずである。

 2024年に伸びがきわめて大きかったのは、金融・保険、情報・通信、ホテル・外食などの新興サービス系であり、2023年から引き続く成長であることから、今のロシアで成長産業になっていると考えてよさそうである。たとえば、こちらの記事に見るように、2024年のロシア国内旅行者は前年から25%ほど伸びたということであり、外国旅行に行きにくくなった影響もあってか、国内観光業が栄えているようである。

 一方、保険に関しては、もしかしてだが、影の船団による石油輸出にロシアが独自に付保していることで、事業が拡大しているとか、何らかの特殊事情があるかもしれない。


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 今般ロシア統計局から2024年の鉱工業生産統計が発表されたので、主な産業部門に絞り、過去3年間の生産動向を上図のとおりグラフにしてみた。

 2024年のロシアの鉱工業生産は、前年比4.6%拡大した。前年の4.3%増よりも、さらに加速している。しかし、全体が好調というわけではなく、かなりまだら模様である。

 ロシアの本来の基幹産業である鉱業は、2023年の1.0%減に続き、2024年も0.9%減を記録した。

 伸びが大きいのは製造業であり、2023年の8.7%増よりはやや減速したが、2024年も8.5%増と成長を続けた。しかし、今回は割愛するが、それを牽引しているのは軍需産業である。その他の主要部門では、石油精製等、冶金、機械・設備など、2024年に落ち込みを記録している部門もある。


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 私のこのブログが旧来のURLであるhttp://のままになっていて、セキュリティ対策が講じられたhttps://になっていないことが、個人的にも前から気になってはいたのだけど、ライブドアブログがそういう仕様なのかと思って、特に対策していなかった。しかし、昨日、Xで指摘してくれたフォロワーさんがおり、改めてブログの設定を見ると、httpsへの移行はワンタッチで簡単に出来ることが分かった。というわけで、今のところ旧来のブックマークで新しいhttpsに飛べるようではあるけれど、ブックマークしてくださっている方は、念のために再ブックマークしてくださると確実かもしれません。

 ちなみに、私はテレビ出演の告知などはあまりしませんが、本日は東京にお邪魔してNHK総合「クローズアップ現代」に出演予定。飛行機がちゃんと飛ぶのかという若干の不安はありますが、まあたぶん出てロシア経済について解説することになるので、ご興味のある方はどうぞ。

 それで、番組への準備もあり、ロシア経済の情報をアップデートしている中で、住宅ローンのデータを改めて整理してみた。上図は、横にだいぶ長くなってしまったので、ご興味のある方は、拡大してご利用を。

 ロシアは現時点で政策金利が21%という高金利社会なわけだが、政府の補助による各種の優遇住宅ローンが用意されている。昨年6月までは、新築住宅の購入であれば、ほぼすべての市民が8%の優遇金利でローンを借りられた。元々コロナ後の経済・社会危機対策だったのが、いつしかプーチン政権の人気取り政策となり、大統領選もあったので、止めるに止められなくなってしまったのだ。しかし、中銀界隈から、金利政策の整合性を損なうものだというもっともな批判が寄せられ、市民が無条件で借りられる優遇金利は昨年6月で打ち切られた。それでも、幼い子供がいる家庭向けの「家族ローン」(年利6%)、IT技術者向けの「ITローン」(6%)、極東・極北居住者向けのローン(2%)は依然残っている。

 昨年7月以降はこれらの条件付き優遇ローンだけになったので、上図に見るとおり、昨年6月の駆け込み利用を過ぎると、7月以降国の補助による優遇ローン利用は低下し、これに伴い住宅ローン全体も低下した。2024年全体でも、住宅ローンの貸し出しは4.9兆ルーブルに留まり、前年比37%低下した。

 こちらの記事によると、2024年にロシアで建設された住宅は1億700万平米で、前年比2.7%減だったという。当然、下半期に限れば、より大きな落ち込みだろう。


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 私が研究している旧ソ連諸国にとって、中国との関係の重要性が高まっており、多くの国で中国が最大の貿易相手国という状況となっている。他方、ロシアやベラルーシが統計を出し渋る中で、発表されるのが早い中国の貿易統計は、有難い存在だ。そこで、今般発表された中国の2024年通関統計を利用し、中国と私の関係国との輸出入額を図示してお目にかけたい。本日は、国際的な孤立ゆえに中国に期待するところが大きいロシアとベラルーシを取り上げる。後日、ウクライナ、モルドバ、カザフスタン、ウズベキスタンも取り上げたい。

 まず、中国とロシアの貿易動向が上図のとおり。2024年の中国の対露輸出が1,155億ドルで前年比4.0%増、輸入が1,293億ドルで0.7%増だった。一応は拡大し、過去最高を更新はしたが、明らかに伸びは鈍化している。2024年に米バイデン政権が中国の銀行に二次制裁を適用し、中国の銀行や企業が対露取引を見合わせたことが大きかったと思われる。

 一方、2024年の中国の対ベラルーシ貿易は、輸出こそ65.8億ドルで前年比12.8%増だったが、輸入は18.1億ドルで30.5%減となった。ベラルーシが欧州で売れなくなったカリ肥料をコンテナに詰めてせっせと中国に輸出していると聞いていたので、中国の対ベラルーシ輸入減は少々意外だった。

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 こちらおよびこちらの記事によると、ロシア鉄道のM.グラスコフ副社長が、同社で生じている貨物車両の問題につき語ったということなので、以下要旨を整理しておく。

 グラスコフ副社長によると、2025年初頭の時点で、ロシア鉄道で利用されている貨車は138.2万両に上っており、過去最高水準である。しかし、適正量は97万両であり、40万両程度が余剰となっている。貨車が多すぎることで、運行業務に悪影響が及び、貨物の流れが遅れ、貨物運送の信頼性に問題が生じる。その結果、鉄道の質的・量的指標が低下している、という。

 その一方で、グラスコフ副社長によると、一部の特殊貨車が不足している。無蓋車、石油・石油製品運搬車が過剰である一方、化学肥料、穀物、メタノール運搬車が不足している。ロシア鉄道としては貨車生産企業に、これらの不足貨車の生産に集中するよう要請したいと、グラスコフ副社長は表明した。


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 ロシア『イズベスチヤ』のこちらのインタビュー記事で、ベラルーシのM.ルィジェンコフ外相が同国の対外政策について語っているので、気になった部分だけ発言内容を以下のとおりまとておく。2022年以降、ベラルーシは相手国別の貿易額を発表しなくなっているので、大まかにでもそれに言及した箇所が、貴重と言えば貴重である。

 今日、ロシアとの貿易はベラルーシの貿易総額の65~70%に近づいている。今日のロシアとの政治的な交流は非常に強力で強固なものであり、我が国の外交政策において他のいかなる戦略的方向性もそのレベルに到達することはできない。ロシアとの文化的、人道的な結びつき、共通の歴史ゆえに、他の国家や国家グループとこのような関係を繰り返すことは不可能である。伝統的な家庭生活からスラブ的な正教の価値観に至るまで、現代のあらゆる物事に対する両国によるアプローチのメンタリティも、他のいかなる相手とも再現することは不可能である。したがって、ロシアは常に最も重要な位置を占めている。今日、我々が置かれている状況により、この関係は発展のピークにあり、相互統合の道を最大限早く進むことができる。多くの輸入代替策や革新的な開発プログラムが実施されており、両国にとって強力な経済基盤となっている。ロシア抜きで我が国経済のあらゆる分野の発展を想像することは不可能である。2020年という年は、我々の真のパートナーが誰なのか、そして誰がベラルーシを、経済的観点から、あるいは資源基盤や地政学的野心の実現という観点から、常にパートナーとして見ているのかを如実に示している。

 あらゆる制裁にもかかわらず、ベラルーシとEUの貿易額は依然として約80億ドルに及んでいる。興味深いことに、この額のほとんどは、EU内でベラルーシを批判し、反ベラルーシのレトリックを展開する急先鋒の国に属している。つまり、ベラルーシ当局の違法性を訴え、制裁を唱える一方で、商売はしているのである。というわけで、今日、ベラルーシとの貿易と経済協力への関心は存在する。EUの中核諸国が、ますます関心を示している。このことは経済関係の各種のイベントによっても裏付けられている。

  ベラルーシはBRICSのパートナー国となったが、正式メンバーになる可能性も常にある。しかし、正式なメンバーになるためには、まずこの組織の主な参加者すべてに、我が国の意図が本気であること、そしてベラルーシがこの組織に求められていることを証明する必要があるだろう。BRICSのメンバーになることは、ベラルーシの課題である。しかし、組織内を見渡し、他の人々が私たちに慣れ、私たちの加盟希望が安定していることを確認してもらうことも必要だ。そうすれば展望が見えてくるだろう。


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 上の図は、少々古いが、昨年10月にロシア紙のこちらの記事に出たグラフ。開戦後、ロシア産原油輸入の双璧となっている中国とインドの、輸入量の推移を示しており、左の紫が中国、右の赤がインドとなっていて、単位は100万t、2024年は1~8月の途中経過である。

 ことほどさように、ロシアの石油輸出ビジネスの生殺与奪の権を握るようになった中国とインドなわけだが、昨日ロイターのこちらの記事が、その両国がロシア産石油の購入を停止したと報じ、衝撃が走った。ただ、記事を読むと両国が政策的にロシア産原油の輸入を禁止したといったことではなく、米制裁等により生じた状況により輸入取引が麻痺しているということのようである。

 記事によると、米国が1月10日、ロシアの石油サプライチェーンを標的とした新たな制裁措置を発動。中国やインドの一部のバイヤーや港湾が制裁対象船を避けたため、タンカー運賃が高騰した。

 トレーダーや海運データによると、これにより米国の制裁の影響を受けていないタンカーの傭船費が急騰。これを受け、中国で売り手と買い手の間に大きな価格差が生じたため、ロシアの主要市場であるアジアにおける3月積みロシア産原油の取引は停止している。

 太平洋航路のアフラマックス・タンカーの運賃が数百万ドル高騰すると、太平洋のコズミノ港から中国向けに輸出される3月積みロシア産ESPOブレンド原油の提示価格が、DES(船渡しベース)でICEブレントに対して1バレルあたり3~5ドルのプレミアムに跳ね上がった。

 1月の米制裁に先立ち、旺盛な冬場の需要とイラン産のライバル原油の堅調な価格により、中国向けESPOブレンド原油のスポットプレミアムは1バレル2ドル近くまで上昇した。

 インドは通常、毎月中旬にロシア産原油のオファーを受けるのだが、1月には3月分のオファーをまだ受けておらず、3月着のオファー貨物量は1月と12月より減少する見込みだという。

 ロシア産原油は2024年のインドの輸入量の36%、中国の輸入量のほぼ5分の1を占めた。


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 やや紹介が遅れたが、ロシア財務省のこちらのページで、2024年のロシア連邦財政の速報値実績が発表されたので、恒例のグラフを更新しつつ、概況をお伝えする。なお、ロシア財務省のページは日本を含む外国からはアクセス不能なので、当方はVPNで接続。

 2024年のロシア連邦財政は、歳入が36兆7,070億ルーブル、歳出が40兆1,920億ルーブル、収支は3兆4,850億ルーブルの赤字(対GDP比1.7%)だった。歳入の内訳は、石油・ガス歳入が11兆1,310億ルーブル、非石油・ガス歳入が25兆5,760億ルーブルだった。

 ちなみに、2024年の当初予算では、歳入が35兆267億ルーブル、歳出が36兆6,221億ルーブル、収支は1兆5,954億ルーブルの赤字(対GDP比0.9%)に設定されていた。10%近いインフレを差し引いても、財政は想定以上に膨張したことになる。

 当然のことながら、財政規模と、その赤字をもたらしている最大の要因は、国防支出であると考えられる。しかし、財務省は歳出実績の内訳を発表しなくなっているので、検証は不可能である。

 2023年と2024年の比較は下表のとおり。

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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日(金)と17日(月)の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催します。無料、かつリモートで視聴できるので、是非ともチェックいただき、事前登録いただければ幸いです。全体では長大なプログラムですが、もちろんご関心のあるコマだけ聴いていただいても結構です。

 ロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻開始から3年ということで、各所で色んな企画が進行していると思いますが、私どもスラブ・ユーラシア研究センターでは、しばしば語られる大国政治や戦況というよりは、地域研究拠点としての特色を生かしたプログラムを組んでみました。2月14日の第1部では、「周辺国からの視点」と題して、国末憲人「アゼルバイジャンとアルメニア ―もう一つの戦争をめぐって」、松澤祐介「中欧の小国開放経済とウクライナ戦争 ―スロバキアの『親ロシア』のコンテクスト」、六鹿茂夫「ロシアの巻き返し戦略とモルドヴァ・ルーマニア」という報告をお届け。2月17日の第2部では、「戦争で変わるロシアとウクライナ」と題し、山添博史「ロシア大国化構想から規範毀損型サバイバルへ」、田中祐真「戦時下3年間のウクライナ国内情勢」、服部倫卓「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」というプログラムを組んでみました。いずれも、他では聴けない濃い報告になると思いますので、ぜひご期待ください。


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 こちらの記事によると、ロシアのA.チェクンコフ極東・北極発展相が、2024年の北極海航路の利用拡大について述べたということである。

 チェクンコフ大臣いわく、専門家にとって、北極海航路には2つの異なる次元のルートがある。比較的快適な西ルートと、チェリュースキンの乗組員が遭難し救助された氷に覆われた東ルートだ。北極海航路のうち、この難所を通る貨物輸送量は、2024年に69%増加し、トランジットは44%増加した。我々は氷を克服しつつある。

 2024年の北極海航路の貨物輸送量は合計3,790万tとなり、これまでの記録を160万t以上上回った。2024年には92回の航行が行われ、トランジット貨物は300万tを超え、2023年のほぼ1.5倍となった。


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 先日、「紅海危機という追い風で勢いを取り戻した中欧班列」という話題をお届けしたが、その補足である。

 繰り返しになるが、「中欧班列」とは、中国と欧州を結ぶコンテナ鉄道輸送サービスであり、その主要部分はカザフスタン~ロシア~ベラルーシ領を経由する。ロシアのウクライナ侵攻で、このルートのトランジット輸送はいったん下火になり、中国⇔ロシア・ベラルーシの貨物増により補われる状態が続いていたが、2023年終盤にイエメンの武装組織フーシ派の商船に対する攻撃が発生すると、東西輸送の「裏技」として再び中欧班列のトランジット輸送への需要が盛り返した。

 それで、本日は、こうした変動の前提となっている海運の動きにつき、補足的にお伝えしたい。国際的な海運のボトルネックとなりうるような難所のことを「チョークポイント」と呼ぶが、上掲のグラフはその中でも重要なパナマ運河、スエズ運河、喜望峰周りの船舶通航数を図示している。パナマ運河は、降雨不足による水位の低下で2023年終盤に利用制限が課せられ、現在はそれからの回復途上にある。問題はやはり2023年暮れから生じたスエズ運河利用の急減であり、これがまさにフーシ派問題の影響によるものである。そして、スエズ運河航行数と反比例するように、喜望峰周りが拡大し、船舶が大回りを余儀なくされていることが確認できる。

 私の集計によれば、2023年から2024年にかけて、パナマ運河は10,870隻から8,760隻へと19.4%減、スエズ運河は26,884隻から12,059隻へと55.1%減、喜望峰周りは17,862隻から29,043隻へと62.6%増だった。


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 先日、「食料品の高騰で亢進した2024年ロシア消費者物価」という話題をお届けしたが、せっかくなのでもう少し詳しく紹介することにした。食料品、非食料商品、サービスと3つのカテゴリーに分けた上で、主要品目の小売価格が2024年の1年間でどれだけ上昇したかを、下図のようにグラフ化してみた。

 こうやって見ると、全般に値上がりが目立った食料品の中でも、やはりバターの高騰が突出している。他方、卵は2023年に行き過ぎた値上がりがあった反動か、主要品目の中では唯一、2024年に値下がりした。比較的安定が続いた非食料商品の中では、ガソリンが引き続き機微な品目となっている。サービスのインフレは、選挙のみそぎが済んだことを受け、2024年7月に住宅・光熱費が一斉に引き上げられたことに起因する部分が大きい。

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 最近、ロシアの製油所がウクライナのドローン攻撃を受けることが増えてきた。ロシア経済の機能、継戦能力を見る上で重要な要因なので、主な製油所の生産能力、親会社、所在地を整理し、上掲のとおりグラフにしてみた。出所はこちら


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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年2月号のご案内。2月号は、「ユーラシア空間におけるBRICSの現在地」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「ロシアのアルミニウム輸出にも制裁の影が」、「2024年のロシア軍と軍需産業を振り返る」、「ウクライナ経済はロシア経済より健全?」を執筆しています。


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 こちらの記事が、ロシアからの石炭輸出の不振につき伝えているので、以下主要点をまとめておく。

 調査機関Argusのデータによれば、2024年のロシアの石炭輸出は1億9,500万tで、前年比8%減であった。オーストラリア産、コロンビア産の後塵を拝する形で、中国、韓国、トルコ向けの輸出が落ち込んだ。

 一部の採炭企業、たとえばクズバスラズレズウーゴリなどは、輸出の低迷を、電力消費増で需要が高まっている内需で補おうとした。そうしたこともあり、2024年のロシアの石炭生産量は4億3,870万tで、前年から0.2%減っただけだった。

 輸出の不振の原因となっているのは、対ロシア経済制裁、鉄道インフラの問題、世界市場における価格低迷である。

 ロシアの石炭産業の状況は、鉄道の問題によって悪化した。機関車と運転手の不足により、ロシア北西部と南部の港を経由する積み出しが減少した。この原因でロシア企業が2024年下半期に輸出できなかった石炭は、300万t以上に上った。

 また、ロシア鉄道の東部管区(シベリア鉄道とバム鉄道)の近代化工事により、極東の港への輸送が制限された。その結果、2024年のロシア鉄道の輸送量は過去15年間で最低となり、合計11億8,000万tに留まった。うち石炭は3億3,140万tで、前年比5%減となった。

 さらに、2024年初頭、ロシアの石炭会社は、OTECOターミナルでの積出料金をめぐる紛争により、黒海最大の石炭輸出港であるタマニ港経由の出荷停止を余儀なくされ、これによる輸出減も250万tに上った。


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 こちらのページに見るとおり、2024年12月のロシア消費者物価がロシア統計局より発表され、それにより2024年通年のインフレ率も明らかになったので、早速恒例のグラフを更新しつつご紹介したい。

 2024年12月のロシア消費者物価は、前月比1.32%増、前年同月比9.52%増だった。ここにきて食料商品の値上がりが顕著になっており、12月には前月比で2.60%もの上昇を示した。

 ゆえに、下図のとおり、カテゴリー別の物価動向を示すと、年末にかけて緑・点線の食料商品が急上昇を描いている。おそらく庶民の肌感覚ではもっと高騰している印象ではないか。

 余力があったら後日より詳しく取り上げるかもしれないが、今日のところはこのへんで。

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 以前、「いまだ先進国市場にもはびこるロシア産アルミニウム」と題し、上図とともに、アルミニウムは先進国がロシアからの輸入を断ち切るのが難しい分野だとお伝えしたことがある。それでも、こちらの記事によると、目下EUは取りまとめを進めている第16次対ロシア制裁パッケージにおいて、ロシアからのアルミニウム地金の輸入禁止を検討しているということである。

 記事によると、EU諸国は、侵攻3周年の機会を捉え、2月に第16次制限パッケージを採択する意向。欧州委員会は14日、EU諸国と非公式会合を開き、近々発表されるパッケージの詳細について協議した。ある情報筋は、アルミニウム輸入禁止措置は段階的に導入されるだろうとしている。EUのうち10カ国が昨年暮れの書簡で、アルミニウムなどの金属を含むロシアの貿易に対するさらなる制裁を提案していた経緯がある。

 これまでのところEUは、ワイヤー、チューブ、箔を含むアルミニウム製品の輸入を禁止している。これらは、輸送、包装、建設産業で使用される金属で、EUの輸入の15%弱に相当する。鉄鋼よりも大幅に軽いアルミニウムは、現在、電気自動車の幅広い部品に使用されている。EUによるロシア産アルミニウム地金の輸入量は、禁止はされていないにもかかわらず、過去2年間で減少している。2024年1~10月にEUがロシアから輸入したアルミ地金は13万t強で、総輸入量220万tの約6%にあたる。2023年と2022年の同時期はそれぞれ11%と19%だった。EUと米国の企業は、UAE、バーレーンを含む中東からの代替供給を求める競争を引き起こす可能性がある。この地域は2024年には世界供給の9%ほどを生産している。


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 時々参照するロシア自然独占問題研究所のこちらのページに、ロシア鉄道による2024年の貨物輸送動向の資料が出ていたので、取り上げることにする。なお、貨物輸送の統計には、①重量、②重量×距離という2種類があり、今回は主に①の数字を見ている。

 この資料によると、①重量で見た2024年のロシア鉄道の輸送量は、前年比4.1%減だった。なお、②重量×距離では4.3%減だった。

 上図は、2022~2024年の月別の輸送量推移を示しており、グレーが2022年、青が2023年、赤が2024年である。2024年は年間を通して過去2年の水準を下回っており、特に下半期に落ち込みが目立った。

 さらに、個別品目の輸送量も出ている。2024年に輸送量が好調だったのは穀物、肥料くらいで、その他は石炭、金属など、軒並み輸送量が低迷している。


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 いつも思うことだけど、中国という国は政治的にはアレだが、経済統計が出るのが早いのは、経済をやっている私のような人間にとっての好感度が高い。先日、「遅れ馳せながら中欧班列のHPを発見」というエントリーでお伝えしたとおり、このHPの統計コーナーに中欧班列の輸送データが毎月掲載されており、早くも2024年通年のデータが発表されたので、それを使って上図を更新してみた。

 改めて説明すると、中欧班列というのは中国と欧州を鉄道コンテナ列車で結ぶ輸送プロジェクトであり、習近平政権の一帯一路の旗艦的位置付けになっている。主要ルートは、カザフスタン~ロシア~ベラルーシ領を通過するものである。上図に見るとおり、その列車本数、輸送コンテナ量は、一貫して増え続けている。

 しかし、内実は見かけの印象とは異なる。2022年にウクライナでの戦争が起きると、EU企業は侵略国ロシアと、その同盟国ベラルーシを通過する輸送スキームを敬遠するようになった。そうして生じた顧客離れにもかかわらず、2022年、2023年も中欧班列が拡大を続けたのは、中国⇔ロシア・ベラルーシ輸送が急拡大したからである。ロシア・ベラルーシは、地理的には一応欧州ということで、中国鉄道はその分も中欧班列の実績に加えているのである。

 こうして、中国⇔EUのトランジット輸送路としてはいったん斜陽化し、どちらかと言うと中露貿易の輸送手段になりかけていた中欧班列だったが、2023年暮れからまた様相が変わる。イエメンの武装組織フーシ派による商船への攻撃が発生し、東西の大動脈だった紅海・スエズ運河が麻痺、中国⇔EU輸送の裏技として、再び中欧班列の利用が拡大に転じたのだった。


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 Wedge ONLINEに、「<ロシア経済 2025年に臨界点は来るか?>プーチンも語る『ミサイルかバターか』の問題、ロシア政府の2024年経済10大ニュースから見える“実態”」と題する論考を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。タイトルが長いですが(笑)、編集部が付けてくれたものなので、悪しからず。


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 ロシアの石油大手ルクオイルは、ブルガリアでビジネスを展開してきた。ブルガスに製油所を有するほか、ガソリンスタンド、石油貯蔵所、船舶・航空機向けの燃料供給を手掛けてきた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻後の事業環境の悪化を受け、ブルガリア・ビジネスを手放す方針を、1年ほど前に表明していた。そう言えば、以前に「ウクライナに燃料を供給していたのはブルガリアだった」などという話題もあった。

 されで、今般伝えられたこちらの記事によると、カザフスタンの国営企業であるカザムナイガスが、ブルガス製油所買収の競売に参加する招待を受けているということである。カズムナイガス側では、我が社はブルガリアの隣国であるルーマニアでも2箇所の製油所に出資しており、ブルガリアの製油所を加えれば、国際エネルギー市場におけるプレゼンスが強化されるとして、前向きな姿勢を示しているということだ。


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 ウクライナ系メディアのこちらの記事が、米戦争研究所の情報等にもとづき、ロシア軍は戦線での装甲戦闘車両の損耗が激しいので、節約するようになっていると伝えている。

 記事によると、2024年にウクライナ軍は、ロシア軍の戦車3,000両、装甲車両9,000両を破壊するか、損害を与えた。それゆえ、ロシア軍が戦車・装甲車両の戦闘での使用を縮小せざるをえない場面が、非常に増えている。

 ウクライナ軍情報筋によると、ロシア軍はクラホフスキーなどの戦場で歩兵による攻撃に切り替えている。装甲車は歩兵部隊の火力支援としてのみ使用されている。

 ロシア軍が装甲車両日投入を縮小している理由として、戦争研究所は3点を挙げている。①装備備蓄の減少:ロシア国防総省保有のソ連製装甲車の備蓄は大幅に減少しており、ロシア軍は残存車両の節約を余儀なくされている。②再装備の難しさ:ロシア軍は装備品の補充という問題に直面している。これは、ロシアが失われた装備に代わる十分な新型戦闘車両を保有していないことが原因である。③機械化攻撃にとって不利な条件:クラホヴォやポクロフスクといった大都市近郊での攻撃は、ロシアが過去に戦った野原と比べ、装甲車両の使用にとって不利である。

 ウクライナの中佐が『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せたコメントによると、ロシア軍はウクライナ東部での攻撃に電動スクーターやバイク、全地形対応車を使うことが増えているという。これは、装甲車の損失を補おうとするクレムリンの試みの一環である。このような車両は装甲車よりも安価で入手しやすいが、戦闘において同等の効果を発揮することはできない。

 戦争研究所によると、ロシアが開戦前に保有していた装甲車両のうち、2024年末現在で残っているのは、戦車の47%、歩兵戦闘車両の52%、装甲輸送車両の45%に留まる。

 アナリストたちは、2024年に9,000両近くの装甲戦闘車両が失われたことは、戦争開始後2022~2023年の年間損失量の3倍に相当すると指摘している。このため、ロシアが2025年にこのような損失を許容できる可能性は低い。「このレベルの損失はロシアの再装備能力を超えており、ロシア軍はもはや現在の年間装備損失率を維持することはできないだろう」と戦争研究所の報告書は述べている。


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 ウクライナのルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州を占領している(全領域ではない)ロシアは、2023年春に、占領地の鉄道を統合する形で、連邦国家一体企業「ノヴォロシア鉄道」=ФГУП "Железные дороги Новороссии"なるものを創設した。上の地図は、しばらく前に出たこちらの記事が、ロシア本土のロストフ、タガンロク、ドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のベルジャンスク、メリトポリ、そしてクリミアのジャンコイを結ぶ新線の建設を始めたというニュースを伝えた時のものである。

 そして今般、こちらの記事が、ノヴォロシア鉄道が復興計画をまとめたということを伝えた。自称「ドネツク人民共和国」のD.プシーリン首長が明らかにした。

 プシーリンいわく、鉄道サービスに関しては、列車を運行するための準備はすべて整っている。オペレーションが可能になり次第、直ちに運行させる。戦線が前進するのに応じて、鉄道インフラを監査し、段階的に復旧させている。さらに、ノヴォロシヤ鉄道会社は、デバルツェヴォ、ヤシノヴァタヤ、イロヴァイスク、ヴォルノヴァハといったハブ駅を考慮した2025年から2030年にかけての復旧プログラムを策定している。実際の鉄道運行は、ドンバスとノヴォロシアの領域ですでに行われており、ロシア全体の鉄道網に接続する可能性もある。プシーリンは以上のように述べた。


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Zaporozhje_AES

 欧州最大の原発であるザポリージャ原発は、今般のロシアによる全面軍事侵攻が始まって以来、ロシア側の支配下にある。原発の1号機が稼働開始したのは1984年12月だったので、原発はロシアによる占領という異常な状況下で、このほど稼働40周年を迎えた。

 それで、ウクライナ統治下では原発は「エネルゴアトム」によって経営されていたが、ロシア占領下ではロスアトムの子会社である株式会社「ザポロジエ原発操業機構」=АО «Эксплуатирующая организация Запорожской АЭС»によって管理されているということである。

 そして、その副社長であり、かつ原発の所長を務めているのが、ユーリー・チェルニチュークという人物である。こちらにその経歴が出ているが、ロシア側が派遣したわけではなく、元からウクライナの原子力業界で働いていた人物であり、近年はザポリージャ原発で幹部を務めていたところ、ロシア軍がやってきて、それに協力することにし、2022年11月に現職に就いたようだ。原子力コラボラトゥールといったところか。

 それで、今般TASSのこちらの記事で、ザポリージャ原発40周年を受けたチェルニチューク所長のインタビューが掲載された。あまり詳しく取り上げる余裕はないが、現時点では6つある原子炉のすべてが停止しているところ、2025年には一部でも再稼働にこぎ着けたく、そうなれば「ノヴォロシア」、ドンバス、クリミアの電力需要を全面的に賄えるようになる、といったことを述べている。


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mg

 かつてのソ連/ロシアには「対外経済銀行」というのがあり、近年ではそれが国営の開発機構となり、略称をとってVEB.RFという名称になっている。こちらの記事によると、このほどM.ミシュスチン首相がVEB.RFのI.シュヴァロフ総裁と会談し、国内6箇所の空港の新規建設事業への協力を要請したということである。

 6箇所とは具体的には、ロシア南部の主要都市クラスノダル、ガス王国として知られるヤマル・ネネツ自治管区のサレハルド、シベリアの奥地ゴルノアルタイスク、ウラル地方の製鉄都市マグニトゴルスク、西シベリアの代表都市オムスク、そして北カフカスの保養地アルフィズだという。

 私はプーチン路線のことを、「大砲もバターも、そして、コンクリートも人も」と呼んでいるのだが、果たして無茶な戦争を続けるプーチン・ロシアに、空港6箇所の新規建設という芸当は可能なのだろうか?


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 こちらの記事が、2024年の販売動向を踏まえ、2025年にロシアの乗用車販売市場がどうなるかについての見通しを示しているので、以下で主要部分の要旨を紹介することにする。なお、上図は記事に添付されていた2024年1~11月の主要モデル販売台数の図。

 2024年1~11月のロシアの乗用車販売市場は前年比54.1%増となっており、2023年の62%増に続く成長となった。しかし、2025年には、輸入業者やメーカーはより控えめな販売を予想している。これは、一般的な経済成長の鈍化と、自動車市場特有の要因の両方に起因している。後者は具体的には、リサイクル税の引き上げ、物流コストの上昇、そしてもちろんルーブル安である。にもかかわらず、現時点でロシアでは自動車に対する駆け込み需要は生じておらず、逆に市場に在庫過剰の兆候が見られる。輸入業者は販売促進のため、値引きや販促キャンペーンを実施せざるを得なくなるので、消費者にとっては悪くない。

 2024年4月1日以降、ロシアはユーラシア経済連合加盟国を経由して自動車を輸入する際の規則を厳格化した。これまでは、自動車を購入し、たとえばキルギスに持ち込み、現地の規則に従って通関させ、比較的少額の関税を支払ってロシアに輸入することが可能だった。しかし、4月1日以降、この抜け道は塞がれた。専門家によると、2022年から2023年にかけてはそうした「代替」輸入車が輸入車の35~37%を占めていたのに対し、2024年1~11月の時点ではすでに23%まで減少している。

 2025年の市場成長は期待できない。専門家のA.モジェンコフは、「2025年の総販売台数は2024年に比べて減少すると思う。高い金利とリサイクル税が、購入者にとっての購入価格を上昇させることになる。2025年の販売台数は130万~140万台になるのはずだ」との考えを示している。Avtostat社のS.ウダロフも、2024年の販売台数は158万~159万台だったが、2025年には基礎シナリオでは10%減の143万台、ネガティブシナリオでは20%減の127万台となるだろうと述べている。Avtostatによると、自動車市場は2024年末からすでに減速し始めていたという。


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 Ria Novostiのこちらのページに、I.アルクスニスという記者の執筆で、2024年の10の主要な結果という記事が出ている。ロシア国営通信社の記事につき、あくまでもプーチン体制の世界観によれば、ということになるが、そういうものとして認識しておけば一応参考にはなるので、以下箇条書きで整理しておく。

  1. 「特別軍事作戦」でロシアが主導権を奪い返す。
  2. 2020年の憲法修正を受け、3月の大統領選でプーチン氏が再選。
  3. 3月1日、国家のエリート養成プログラム「英雄たちの時代」が始動。
  4. 11月21日、極超音速中距離弾道ミサイル「オレシュニク」でウクライナのユジマシ工場を攻撃。
  5. 欧米からの圧迫を受けロシア国家・国民の結束が高まる。
  6. ロシア経済は4%に迫る成長を達成も、ひずみも顕著に。
  7. 3月22日にクロックスシティでテロ発生、その他にもウクライナがテロを仕掛ける。
  8. 10月にカザンでBIRICSサミット、欧米によるロシア孤立化の試みが失敗。
  9. 世界的にリベラリズムが危機に直面する。
  10. ガザ、シリアをめぐり中東の危機続く。

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