ユーラシアリサーチ 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心に旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ロシア

5.Sotsialnye-seti

 ロシア当局がかなり大掛かりなネットおよびSNSの規制に乗り出し、それが言論空間だけでなく庶民の日常生活にも影響するようになってきている。ロシアの政治情勢を読み解く上で、きわめて重要な要因になっていくだろう。そうした観点から、ロシアのネット・SNS事情の基礎的なところを確認できるレヴァダ・センターによるこちらの調査結果は、ぜひチェックしておきたいところである。

 3月にレヴァダ・センターがロシア全土で18歳以上の回答者を対象に行った今回の調査結果によれば、ネットを日常的に利用しているという者は83%で、ここ1年は横這いだった。

 SNSにアクセスする頻度は、ほぼ毎日が58%、週に数回が10%、週に一度以下が8%、まったくアクセスしないが24%、分からないが1%だった。

 では、何にアクセスしているかという回答結果を時系列的に追ったのが、冒頭のグラフである。直近では、フコンタクチェ:53%、テレグラム:46%、TikTok:21%、Odnoklassniki:18%、YouTube:18%、RuTube:10%、インスタグラム:10%、Dzen:9%、Moy Mir:2%、フェイスブック:1%、X:1%となっている。

 ロシア版フェイスブックと呼ばれることの多いフコンタクチェが、何しろ強い。テレグラムも強いが、絶賛規制中。YouTubeにも規制が入り、ロシア版の動画サイトRuTubeに誘導されている。先日、ある人の研究計画で、「Xを手掛かりにロシアの言論空間を解析する」といった構想があって、ダメダコリャ感を抱いたが、やはりロシアではXはほとんど存在感がない。

 なお、同じくレヴァダ・センターによる3月のこちらの調査では、過去1か月で携帯からのネットアクセスに問題が生じたという者が77%、生じていないという者が19%、分からないが4%だった。


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 海外出張中もブログが途切れないよう、最近出た本の中から特に気になる(しかしまだ読めてない)本を取り上げるシリーズ。今日は、リー・ネヴィル(著)・村上和久(訳)『ヴィジュアル版 現代の地上戦大全:中東、ウクライナの前線から戦術、将来戦まで』(原書房、2025年)のご紹介。内容は以下のとおり。

21世紀地上戦の全貌から「未来の戦場」まで集大成!
戦争は、時代が変わっても地上戦で決まる
21世紀の地上戦を現在に至るまで詳細に分析、さらに世界の火薬庫――台湾、南シナ海、中東をめぐる「未来の戦場」を予測、ドローンやAIなど最新兵器の情報も満載した集大成!


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 海外出張中もブログが途切れないよう、最近出た本の中から特に気になる(しかしまだ読めてない)本を取り上げるシリーズ。今日は、エドワード・フィッシュマン(著)『チョークポイント アメリカが仕掛ける世界経済戦争の内幕』(日経BP、2025年)のご紹介。ただ、この本はタイトルが誤解を招くかもしれない。チョークポイントと言うと、先日も当ブログで取り上げたように、物流のボトルネックをどうしても意識してしまうが、この本がテーマとしているのは地経学全般である。またアメリカだけでなく、ロシアに関しても詳しい記述が見られる。内容は以下のとおり。

 トランプ関税に代表されるように、米国は自由貿易に背を向け、経済を武器に自国に利益を誘導し始めている。経済面で中国に猛追されているが、米国は巨大な消費市場、インターネットや銀行間決済システム、半導体技術など世界経済の要衝(チョークポイント=相手の経済活動を締め上げ、息の根を止める急所)を押さえており、他国の米国依存を逆手にとって、攻勢を強めている。これに対し、他の大国も自国が強みとするチョークポイントを使って反撃しつつ、他国に依存するチョークポイントをなくそうと競うように動き始めている。今起きているのは、チョークポイントをめぐる世界経済戦争だ。こうした動きは一時的なものではなく、今後も続いていくと見られている。だからこそ、チョークポイントを使った経済戦争の本質をよく理解しておくことが欠かせない。経済兵器は威力も大きいが、それに伴う代償も大きい。乱用すれば、国際社会からの信用を失い孤立するおそれもある。本書は、この経済戦争の時代をいかに読み解き、生き抜くか。その知恵と未来のシナリオを提示する。


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 海外出張中もブログが途切れないよう、最近出た本の中から特に気になる(しかしまだ読めてない)本を取り上げるシリーズ。今日は、出たばかりの、松本祐生子(著)『傷ついた身体と都市:「大祖国戦争」の経験と記憶』(白水社、2026年)のご紹介。内容は以下のとおり。

 「大祖国戦争」と称される第二次大戦時の独ソ戦は、現代ロシアのナショナル・アイデンティティを構成するきわめて大きな要素だ。露宇戦争においても開戦時、プーチン大統領がゼレンスキー政権を「ネオナチ」と名指したのは、その「特別軍事作戦」の正当性を国民の「大祖国戦争」の神話に訴えかけるためであった。「大祖国戦争」の(大文字の)記憶=神話は、戦時からすでに形成されていったものではあるが、しかし、個々人の戦争の経験と記憶は一枚岩のイデオロギーに回収しつくされるものではなく、そもそもそのイデオロギーが形成される過程にもさまざまな政治的・文化的背景があったのは言うまでもない。
 本書は、戦中に870日以上の「包囲」を経験したレニングラード(現サンクト・ペテルブルク)を主たる舞台とし、この街の労働者の身体、レニングラード防衛博物館、そして都市の祝典をとりあげながら、国家の公的な「歴史」からは取りこぼされてしまう人々の「大祖国戦争」に対する「応答」の痕跡を掬いとる試みである。過去に生きた人々の営為に対して歴史研究は何ができるのか─傷ついた都市と傷ついた住民と、その復興=回復の「歴史」。


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 海外出張中もブログが途切れないよう、最近出た本の中から特に気になる(しかしまだ読めてない)本を取り上げるシリーズ。これは、界隈では話題作だろう。太田就士『ロシア革命の歩き方: ペトログラード・ガイドブック』(パブリブ、2026年)である。個人的にも、世が世なら、この本片手にペテルブルグをそぞろ歩きたいが、そんな日は来るだろうか? 内容は以下のとおり。

サンクトペテルブルクに遺る共産主義革命聖地を巡礼する!
★タヴリーダ宮殿 ペトログラード・ソヴィエト樹立
★冬宮殿 10月革命で臨時政府崩壊
★フィンランド駅 レーニン封印列車で凱旋帰国
★クシェシンスカヤ邸 レーニンがバルコニーから四月テーゼを演説
★スモーリヌイ女学院 ボリシェヴィキの革命司令部
★ネフスキー大通り デモ行進武力衝突の舞台
★巡洋艦アヴローラ 冬宮殿攻撃の合図となった空砲を放った艦
★モイカ宮殿 ラスプーチン暗殺現場
★ツァールスコエセロー ニコライ2世家族居住地
★グランドホテルヨーロッパ 外交官・諜報員の溜まり場
★「戦時下ロシア渡航方法」「革命を目撃した日本人・芦田均」等のコラム


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 昨日から海外出張中であり、旅先ではブログが更新できるか、心許ない。なので、更新が途切れないよう、甚だ簡単な内容ながら、出張期間中の記事をあらかじめ書き溜めて予約しておくことにする。今回は、最近入手した書籍の中で、特に気になっている(しかしまだ読めていない)ものを、1日1冊紹介する。

 まずは、こんな本から始めてみようか。ドミトリー(ディマ)アダムスキー(著)・岡田美保(訳)『ロシアによる「抑止」の技法:戦略文化、 強制、戦争』(芙蓉書房出版、2025年)である。 内容は以下のとおり。

 ロシアは何を抑止し、いかに強制するのか――本書は、その鍵を握る「戦略文化」と「抑止」を正面から解き明かす一冊である。第一章では、戦略文化論と抑止論という二つの分析概念を定義し、研究動向を概観。以後の章で用いる用語と視座を提示し、読者が本書の主張を素早く把握できる設計となっている。
 本書の白眉は、ロシアの「強制」行動の系譜を辿り、その文化的・理念的・歴史的要因を掘り下げることで、ウクライナ戦争の前後を貫く行動の源泉を読み解く点にある。これにより、ロシア的抑止の理論と実践の今後の展開を見通すための思考枠組みが手に入る。
 さらに本書は、核抑止だけでなく、政治エリートから社会・価値観へと広がる「情報抑止」や「あらゆるものの抑止」といった近年の概念を射程に収め、ロシアの「戦略的抑止」を全領域的・ツール横断の発想として捉え直す。戦略環境の不確実性が増す現在、政策・安全保障・国際政治を学ぶ者にとって実務的示唆に富む内容である。
 国際政治・安全保障の基礎を学ぶ大学生から、政策立案に携わる実務家まで。ロシアをめぐる意思決定の「内側」を読み解くための、必携の一冊である。


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 『L&A Network』という物流関係の業界誌があり、このほど発行された2026年4月号で、「世界のチョークポイントが国際間物流に与える影響」という特集が組まれている。私はこの特集号に、「中国~欧州物流の裏技『中欧班列』の現在地」と題するレポートを寄稿した。

 それにしても惜しいと思うのは、この特集が基本的に、現在大問題となっているホルムズ海峡危機の前に企画され、各レポートも対イラン戦争後の状況を取り入れられなかったことであろう。チョークポイントという特集の着眼点は素晴らしかったが、時期的に2ヵ月くらい後ろで、今日の危機を活写できたら、もっと価値の高い特集号になっただろう。


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 このほど昭文社から刊行された『地図でスッと頭に入るロシア』で、私・服部が監修を務めましたので、ご紹介いたします。地理だけでなく、ロシアの様々な基礎知識、政治、宗教、資源と経済、外交および対日関係、文化などが学べるようになっています。ぜひ手に取っていただければ幸いです。電子版もあります。


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 ロシアのインターネット空間では、銀行のカード決済、送金、現金引き出しができないという大規模な障害が発生したようである。これについて、フォーブス・ロシアがレポートを掲載したところ、当局のお気に召さなかったのか、記事は削除されたようだ。ただ、インターネットアーカイブのこちらのページで読むことは可能なので、以下主な内容をざっとまとめておく。

 ロシアのインターネット空間、いわゆる「ルネット」では、スベルバンク(Sber) をはじめとする銀行の利用者から、カード決済、送金、現金引き出しができないといった大規模な障害について多数の苦情が寄せられていた(その後、銀行側はサービスが復旧したと報告)。発生した大規模な障害の原因は、当局による各種サイトのブロッキング作業であった可能性がある。サイバーセキュリティ業界の関係者2人が 語った。通信業界の関係者の一人は、この問題は「脅威対抗技術手段」の運用によって引き起こされた可能性があると指摘した。もう一人は、これらの脅威対抗システムが「多数のブロック規則」に対応しきれず、負荷に耐えられずに停止している可能性があると付け加えた。Telegramチャンネル Mashは、銀行インフラで使用されているIPアドレスのブロックが今回のルネット障害の原因となった可能性があると報じた。

 利用者はスベルバンクのサービスに大規模な障害が発生したと報告していた。モスクワ、サンクトペテルブルグ、その他の都市や地域の住民から、スベルのカードが決済端末で使えない、モバイルバンキングで送金ができない、SBP(高速決済システム) やQR決済が通らないといった投稿が相次いだ。さらに、現金を引き出せないとの苦情も寄せられた。障害に関する報告は、1時間で5000件を超えた。その後、VTB銀行、Tバンク、アルファ銀行、Ozon銀行 など、他の大手金融機関のサービスにも不具合があるとの報告が寄せられ始めた。スベルバンクの広報は、障害が発生していた事実を認め、その後サービスが復旧したと発表した。一方、VTB銀行、アルファ銀行、Tバンクは、自社システムは通常通り稼働していると説明した。ただしTバンクは、他行の決済ネットワークやATMを利用する際、一部の顧客で「取引が成功しない場合」がある可能性があるとし、その問題は同行のシステム自体とは無関係だと述べた。

 またタス通信は、モスクワの住民の間で地下鉄や近郊列車の運賃を銀行カードで支払えない問題が発生していると報じた。その結果、モスクワ地下鉄の職員は「大規模なシステム障害」を理由に、乗客を無料で改札に通す対応を取った。

 記事はまだまだ続くが、技術的な難しい問題なので、このあたりにしておく。


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38

 昨日は、ロシア最大の石油会社ロスネフチが石油生産量を含め2025年の業績を発表したという話題をお伝えしたが、本日はロシア全体の生産量の話である。

 ロシアでは、こちらに見るように、2023年4月26日付の政府指令により、統計局の公式統計で発表が伏せられる項目に、石油および天然ガス生産量が加わった。当初その措置は2024年3月31日までとされていたが、戦争が長期化したため、1年ごとに延長。そして、こちらに見るとおり、今般出た3月31日付の政府指令により、当該措置は2027月3月31日までと、さらに1年延長されることになった。

 ところで、当該措置は石油と天然ガスの生産量を発表しないとしているのだが、私の認識する限り、実際にはその後も統計局による天然ガス生産量の発表は続いている。


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 国として経済データを公式に開示する度合いが低下しているロシアだが、企業レベルでは意外に緩いのだろうか。ロシア最大手の国営石油企業、ロスネフチの2025年の業績が、こちらのページで発表された。それを紹介したのがこちらの記事である。

 今回の発表によると、2025年のロスネフチの売上高は8兆2,360億ルーブル(前年比18.8%減)、EBITDAは2兆1,730億ルーブル(28.3%減)、純利益は2,930億ルーブル(73.0%減)であった。

 2025年の炭化水素の採掘は2億4,660万標準t(日量502万バレル相当)、うち液体炭化水素(原油とガスコンデンセート)は1億8,110万t(日量369万バレル相当)、ガスが796億立米(日量133万バレル相当)であった。なお、これらの指標の前年比増減率は示されていない。


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 Wedge ONLINEに、「中東危機で現実味を帯びるヘリウム不足…世界資源の4分の1握るロシアには有望な代替供給国になるのか?半導体や医療機器を支える素材の現在地」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 このほど発行された雑誌『外交』(Vol.96 2026 Mar./Apr.)に、「ロシア戦時経済の内実 —『いつ戦費が尽きるか』は愚問である」を寄稿しました。『外交』は一部の記事を無料公開することがありますが、私の論稿がその対象になるのかは不明で、もし公開されたらまた案内します。

 本稿を校了したのが3月初頭、つまりイスラエルと米トランプによるイラン攻撃が始まった直後であり、最終段階で「中東情勢で国際石油価格が上昇する可能性もあるとはいえ、ロシアの石油輸出にも恩恵が及び、歳入増に繋がるかは不透明だ」というくだりをねじ込むのが精一杯だった。それから1ヵ月が経ったが、いまだに先行きは不透明なままである。


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107

 ロシアがイランで建設を続けてきたブーシェフル原子力発電所の現状、ロシア人関係者の退避につき、こちらおよびこちらの記事が伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 ロスアトムのA.リハチョフ総裁によると、イランのブーシェフル原子力発電所の敷地内の状況は悪化し続けており、給水ポンプ場の近くで弾薬が3度目の爆発を起こした。このポンプ場は、原子炉設備を含む施設に水を供給している。「敷地内の状況は悪化し続けている。昨日の夕方、稼働中の第1号発電ユニットの敷地がすでに3度目の攻撃を受けた。弾薬は、2回目の時と同様、原子炉設備にも水を供給しているポンプ場のすぐ近くで爆発した。これが核安全に直接的な脅威を生み出すことは想像に難くない。幸いにも死傷者は出ていない」と彼は述べた。また、ブーシェフル原発からの人員退避の新たな段階が完了し、163人の職員が発電所を離れたと語った。「本日、ブーシェフル原発からの人員退避の新たな段階を完了した。水曜日に発電所を離れた163人の職員はすべてすでにロシアに帰還し、現在それぞれの自宅へ向かっている。全体のプロセスは3日余りで完了し、事故もなく実施された。現在さらに2つのグループの退避を準備している。引き延ばすつもりはない。準備が整い次第、今後数日以内に仲間たちを帰国させる」と彼は述べた。さらに総裁は、発電所に残る最小限必要な要員の人数を現在検討していると述べた。その任務は、敷地内の設備の稼働状態と保全を維持するとともに、職員居住区の機能を維持することだという。「残る人数は数十人になるだろう」と彼は付け加えた。


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106

 こちらの記事が、ある不動産開発会社がロシア国民を対象に行った調査結果を伝えている。住宅開発会社「白い砂浜」が行ったアンケート調査の結果、ロシア国民のおよそ50%が、退職する前に海辺へ移住してリモートワークをする計画を立てていることが明らかになった。回答者の73%が、山よりも海の方により強く魅力を感じると答えた。またほぼ同程度の72%が、海辺の住宅購入を単なる夢としてではなく、現実的な選択肢として検討している。さらに回答者の47%は、退職前の段階で海辺に移住し、リモートで働くことを計画している。海を選ぶ主な理由として回答者が挙げたのは、温暖な気候(回答者の49%)と、好きなときに泳げること(40%)だった。また回答者の44%は、水辺での生活は常に休暇を過ごしているような感覚をもたらすと考えている。さらに回答者の4分の1は、海辺にアパートを所有し、自ら住みながら収益も得るという形を望んでいる。一方、山については、景観の美しさ、雄大な風景、独特の雰囲気などが評価されているが、山間部の住宅を恒久的な居住地として検討する用意があると答えたのは回答者の28%にとどまった。購入の障害としては、回答者の25%がインフラからの距離を挙げ、22%が道路事情の不便さを指摘した。また約20%は、気圧の問題や頭痛などの健康上の問題を訴えている。

 この記事をぱっと見た時には、ロシア国民の南国ビーチリゾート好きが改めて裏付けられたなという感想だった。しかし、調査を行ったくだんの住宅開発会社「白い砂浜」のことをちょっと調べてみたところ、この会社はウクライナ・ヘルソン州のロシア側占領地であるスカドフスクにおいてリゾートマンションを開発しているところであることが明らかになった。現に、同プロジェクトでは住宅ローンが年利2%という破格の低水準であることを売りにしているが、これはロシア政府が「新領土」を対象に設定している優遇ローンに他ならない。ということは、今回のタス通信の記事自体、ロシア国民の南国ビーチリゾート好きに訴求するような形で、占領地への移住を促進するキャンペーン的な位置付けの記事であると受け取って、それほど的外れではないだろう。


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 代わり映えがなく、恐縮である。ロシア統計局より2月の鉱工業生産統計が発表されたので、それと使い定番のグラフを更新しお目にかける。

 鉱工業全体と、その二本柱である鉱業および製造業の生産指数を見たのが、上図となる。2025年までは製造業が牽引する形で鉱工業全体が伸びていたが、2026年に入り製造業に急ブレーキがかかり、1~2月には製造業は前年同期比2.9%減を記録した。逆に、マイナスが続いていた鉱業は、今年に入り若干持ち直している。

 製造業が2025年までは伸びていたと言っても、民需や外需向けの一般的な基幹部門をピックアップした下図を見れば、2025年には軒並み落ち込んでおり、2026年に入ってからは不振がより一層明瞭となっている。

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 それでも2025年まで製造業が全体としてプラスだったのは、軍需生産の増産によるものに他ならない。しかし、下図に見るとおり、その軍需関連部門も、今年に入り減産や伸び率の鈍化に直面している。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2026年4月号のご案内。今号は「ユーラシアのエネルギー最新トレンド」と題する特集となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 今号では私は、「ロシア鉱工業生産の異変 ―外需・民需の崩壊と軍需の限界」、「2025年のウクライナ貿易統計 ―食料輸出減と戦時輸入増で赤字拡大」という短い連載記事のみ書きました。

 在露ジャーナリストの徳山あすかさんによる連載「ロシアメディア最新事情」は今号で終了ということです。日本からは見えにくいロシア社会の「ひだ」の部分を伝えてくれる貴重な情報源だっただけに、残念。

 なお、『ロシアNIS調査月報』は、今号をもって紙の冊子としての印刷は終了し、全面的に電子版に移行する由。


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 ロシアの石炭産業は、採炭量という観点から見れば、上図のとおりウクライナ侵攻後も微減程度となっている。しかし、収益が非常に厳しいという現実を、こちらの記事が伝えているので、以下で記事の主要点をまとめておく。

 エネルギー省のD.イスラモフ次官がこのほど記者団に明らかにしたところによると、ロシアの石炭産業の損失は、現在の不利な市場環境が続いた場合、2026年には前年に比べて41%増加し、5,760億ルーブルに達する可能性がある。この予測は、市場環境、すなわち石炭の輸出価格、ドル為替レート、政策金利が2025年第4四半期の水準にとどまることを前提としている。エネルギー省および国際機関の見通しでは、石炭価格の本格的な上昇は2026年末、もしくは2027年になってようやく始まる。中東での武力衝突は世界の石炭市場において価格のわずかな上昇をもたらしたものの、ロシア企業には恩恵を及ぼしていない。逆に、石油製品価格が上昇し、船舶燃料の価格を押し上げ、その結果として海上運賃の急騰を招いている。

 ロシア統計局によれば、2025年の石炭産業の純損失は4,080億ルーブルで、前年の3.6倍に達した(下図参照)。

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 イスラモフ次官によると、赤字企業の数が急速に増えている。現在、62のロシアの石炭企業が「レッドゾーン」にあり、そのうち20社が採掘を停止している。さらにその中の14社は、操業の休止または清算を決定した。石炭産業の債務(買掛債務)は1.5兆ルーブルを超えた。その一方で、多くの企業が政府支援として、鉱物資源採掘税および社会保険料の支払い猶予を受けている。具体的には、138社が支払い猶予を受けており、これらの企業で国内石炭生産の約90%を占めているという。これらの支払いに関する未払い額は、3月1日時点で約660億ルーブルに達していた。これらの資金が企業の手元に残ったことで、企業は流動性を高め、運転資金を維持することができた。対ロシア制裁のもとで、またそれに伴う物流や決済の複雑化により、企業は輸出した石炭の代金をすぐには受け取れない状況にある。ロシア石炭産業における赤字企業の割合は下図のとおりとなっている。

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 ロシア政府の広報は3月24日、ロシア石炭産業の企業に対する支援措置の期限を延長したと発表した。これに関する政令は3月20日にミハイル・ミシュスチン首相が署名した。鉱物資源採掘税および社会保険料の支払い猶予は、2026年4月30日まで有効となる。さらに分割払いも認められており、企業は2026年5月から11月末までの期間、毎月均等に分割して未払い額を返済することができる。石炭企業への支援措置は、プーチン大統領の指示に基づき、政府が2025年6月に導入した。支払い猶予は2025年6月1日から適用されている。当初は2025年11月30日までの措置とされていたが、その後12月に2026年2月28日まで延長されていた。


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 イラン情勢による資源パニックが石油・ガス以外にも広がる中で、憂慮されている資源の一つがヘリウムである。では、ロシアの地歩はどうなのかと関心を抱いたところ、折よくこちらの記事で最新の生産動向が伝えられた。これによると、2025年のロシアのヘリウム生産量は1,730万立米で、前年比32%増だったということである。2022~2024年の生産量はこちらの記事に出ていたので、両者を合わせ上掲のグラフを作成してみた。

 グラフを見ると、右肩上がりで急上昇しているが、実はこの生産動向は事故による紆余曲折と結び付いている。2025年の時点で、ロシアのヘリウム生産の95%は、アムール・ガス加工工場一箇所に集中している。そして、同工場では2021年6月に稼働開始したものの、10月に火災が、2022年1月には爆発・火災が起き、ヘリウム生産がいったんゼロになった。本来であればもっと早く生産拡大が実現したはずなのだが、2025年にかけてようやく段階的に増産が進んできたというのが真相のようである。


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 石油収入が低迷を続けていることを受け、2月25日にA.シルアノフ蔵相は2025年の連邦予算を修正する方針を明らかにした。しかし、その3日後にイスラエルと米国によるイラン攻撃が始まり、石油価格が急騰。しばらく連邦予算の修正に関する続報がロシア政府から伝わってこなかったが、最新のこちらの記事によると、どうもロシア政府は当面修正を見合わせることにしたようである。

 記事によると、イラン戦争によって引き起こされた原油価格の急騰により、ロシア政府は長期的な財政準備を増強する計画を先送りすることが可能になった。3人の関係者がロイターに語ったところによれば、これにより短期的な財政への圧力が和らいでいる。イランで戦争が始まる前、ロシアはより多くの石油収入を準備基金に回すことを目指し、いわゆる「カットオフ価格」を引き下げる計画を検討していた。また、予算支出の削減についても議論されていた。政府はこのカットオフ価格の変更を当面延期する見通しだ。また、支出削減の必要性についても疑問が生じているという。


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 ちょっと紹介が遅くなったが、ロシア統計局より2月のインフレ率(消費者物価上昇率)が発表されたので、定番のグラフを更新してお目にかける。毎度申し上げるように、ウクライナ侵攻後の物価変動を跡付けるのが目的であり、戦争が長期化するにつれグラフもどんどん横長になってしまっているので、クリック・タップし拡大してご利用を。

 さて、2月のロシアの消費者物価は、前月比0.73%増、前年末比2.36%増、前年同月比5.91%増だった。2月の前月比を部門別に見ると、食料品が0.84%増、非食料商品が0.28%増、サービスが1.10%増と、引き続きサービスの値上がりが大きい。ただ、前月と異なり、2月は住宅・光熱費などの値上がりは目立たず、主に上がったのは交通運賃や旅行料金(特に外国旅行)であった。

 なお、一部でロシア経済崩壊の兆候(!?)として注目されたキュウリに関して言うと、2月の価格は前月比7.9%増であり、高いことは間違いない。ただ、鶏卵の値上がりが9.3%で、そちらの方が大きかった。いずれにしても、ロシアでは生鮮食品は季節的要因がきわめて大きいので、月単位の上下動で一喜一憂すべきではない。

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 以前も少し触れたが、イラン情勢は石油・ガスだけでなく、その他のコモディティ市況にも影響する可能性があり、特にアルミニウムへの影響が小さくないと考えられる。こちらの記事でロシアの専門家2名が見解を示しているので、以下紹介する。

 投資ファンド「インドゥストリアリヌイ・コード」の運用責任者顧問M.シャポシニコフによると、エネルギー価格の上昇とペルシャ湾地域の生産者の問題により、2026年の世界のアルミニウム生産は最終的に300万~400万t程度不足する可能性がある。2026年のアルミニウム需要は、世界的な景気後退の可能性により150万~200万t減少するかもしれない。それでも、ペルシャ湾地域の生産者が抱える問題や、エネルギー価格の上昇に伴う電力料金の上昇の影響により、世界の生産量はおそらく300万~400万t不足することになる。また、2026年のアルミニウム価格は年末時点で1t当たり3,100~3,200ドルになると、シャポシニコフは予想する。

 一方、アルファ銀行証券市場分析部門の責任者B.クラスノジェノフによると、ペルシャ湾岸諸国からの供給が大幅に制限されるとの見方は誇張されている可能性がある。湾岸諸国は、世界の一次アルミニウム生産の約8%を占めているだけだ。バーレーンのアルミ企業ALBAの生産設備が深刻な損傷を受けたという情報は確認されていない。依然として最大のプレーヤーは中国であり、世界のアルミニウム消費と生産の約3分の2が中国に集中している。中国はアルミニウムの純輸出国であり、アルミ半製品の大きな在庫も抱えている。アルミニウム消費の増加が見られるのは中国のみであり、中国は生産能力を迅速に拡大することができる。また、中国は先進的な電解槽技術を使用しており、それは他国の競合企業の技術よりも数世代先を行っていると、クラスノジェノフは強調する。

 以上が、ロシア専門家2名の見解であった。できればロシアのアルミ産業への影響についても論じてほしかったが、その点の言及はなし。


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 調べものをしていて、ロシアの工場について調べるのに便利なサイトを見付けた。ЗАВОДЫ.РФというのがそれである。ただ、「サイトについて」というページを見ても、運営主体についての情報がなく、公的なものか私的なものかも良く分からない。

 まあ、日本にとりロシアは敵国になってしまったので、昔のように日本企業のパートナーを探せ!ということにはならないが、私はもともとロシアの経済地理のことを研究していたので、「この街にはどんな工場がある」といった情報収集には役立ちそうである。

 意外と重宝しそうなのが、企業グループについての情報である。上の画像は国家コーポレーション「ロステク」の傘下企業を地図上に表示した状態であり、国防企業がどのように分布しているかといったことを調べるのに使えそうだ。


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 トヨタ自動車は、サンクトペテルブルグの工場で現地生産を行っていたが、当然のことながら、ロシアによるウクライナ侵攻を受け工場を売却し撤退している。その旧トヨタ工場で、ロシア独自ブランドの「アウルス」車を生産する計画が進んでいるということを、こちらの記事が伝えているので、その中身をざっと紹介する。

 記事によると、今年のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムでは、大きな目玉となる新発表が予定されている。会場では新型のAurus車が披露される予定で、同車はまもなくシュシャリにある旧トヨタ工場で組立が開始される見込みだ。生産開始は2026年前半に予定されており、2022年にトヨタが撤退した後、北都に自動車産業が象徴的に復活することになる。

 生産されるのは、ロシアのプレミアムブランドにおける基幹モデルである「Senat」である。ラインナップにはセダン2種とSUV1種が含まれる予定。専門家によれば、これらの車両はプレミアム市場において、撤退したトヨタ・カムリ、メルセデスEクラス、ジェネシスG90の代替となることが期待されている。このプロジェクトはD.マントゥロフ第一副首相が自ら監督しており、ロシア自動車産業にとっての戦略的重要性が強調されている。

 もっとも、この立ち上げに至る道のりは平坦ではなかった。当初は、中国の自動車メーカーである紅旗(FAWの高級ブランド)を技術パートナーとして招き、生産体制の構築を支援してもらう計画だった。しかし交渉は決裂した。関係筋によれば、中国側はロシアブランドに関わる制裁リスクを理由に「手を引いた」とされる。現在は、友好国の別のパートナーとの交渉が進められているが、その名称はまだ公表されていない。

 シュシャリ工場は2007年に稼働を開始し、年間最大8万台のカムリやRAV4を生産していたが、トヨタ撤退後、象徴的な1ルーブルで国営企業「NAMI」に譲渡され、買い戻し権は付されていない。その後、株式の63.5%を保有するAurus社が同工場の管理を引き継いだ。これにより、旧トヨタの資産は、国産プレミアム車開発の中核拠点へと転換されることになる。

 現在、Aurusの主な生産はタタルスタン共和国の特別経済区「アラブガ」(年産能力最大5,000台)に集中しており、VIP用に装甲リムジン化されたバージョンはモスクワで組み立てられている。サンクトペテルブルグ工場の稼働により生産量の大幅な拡大が可能になるが、専門家によれば、年間1万~2万台以上を生産しなければ採算は見込めないという。これは、外国メーカー撤退後に生じたプレミアム市場の空白を埋めるために必要な規模でもある。

 新型Senatの公式価格はまだ発表されていないが、おおよその水準は明らかである。現行のSUV「Komendant」は約3,370万ルーブル、セダン「Senat」は約5,000万ルーブルで販売されている。ただし、サンクトペテルブルグでの生産向けには、企業向けや政府機関での利用を想定し、より手頃な仕様が用意される可能性が高い。詳細は、同フォーラムでの初公開時に明らかになる見込みである。

 以上が記事のあらましであった。日本のトヨタ関係者の皆さんにとっては、話題にもしてほしくないところだろうが、個人的にはどうしても気になるので、ご容赦を。


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 こちらの記事が、ロシアの労働市場が売り手市場から買い手市場へじわりとシフトし始め、また副業が盛んになっていることを伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 記録的な求人増はすでに解消された。2026年初頭、SuperJobのデータによると、公開求人の数は平均で12%減少し、一方で求職者数は2025年と比べて22%増加した。こうしたバランスが見られるのは2022年以来初めてだという。労働市場のバランスは徐々に買い手市場に移行している。

 労働市場の変化は一様ではない。依然として人手が強く求められている分野もある。医療・製薬分野では人材需要はほとんど減少しなかったが(前年比で求人は−1%)、一方で求職数は7%増加している。教育分野でも似た状況で、求人は2%減に留まったが、求職は10%増加している。一部の業界では、需要と供給のギャップが顕著に拡大している。ITおよび通信分野では求人が13%減少し、求職は11%増加した。特に不況に直面している業界では、需要の減少が目立つ。運輸・物流分野では人材需要が15%減少し、求職者数は27%増加した。自動車輸送業界にとって2025年は非常に厳しい年であり、コストの上昇に対して運賃や受注量が減少したため、多くの企業が市場から撤退を余儀なくされた。建設・不動産分野では、求人が13%減少し、求職は22%増加した。これは優遇ローンの廃止で住宅建設が鈍化しているためだ。

 SuperJob広報のN.イリチェンコによると、労働力の供給が需要よりも速いペースで増加する新たなトレンドが生じている。しかし、労働市場が完全に転換したと結論づけるのは、時期尚早と考えられる。ロシアが人口減少の谷から抜け出し始めるのは、統計局の予測によると、2030年代の初めごろになる。最も楽観的なシナリオでも、人口減少が増加に転じるのは2030年になってからであり、そのため、熟練かつ意欲的な人材をめぐる競争は今後も続く。ロシアにおける失業率の急激な低下は2022年に始まり、その年には歴史的低水準の3.7%まで低下した。2025年には、ロシアはG20で最も失業率が低い国となった。2025年12月には、ロシアの失業率は過去最低の2.2%に達し、2024年と比べて0.1ポイント低下した。2022年以降、人々は戦闘地域や防衛産業へと流出しており、さらに移民政策の厳格化によって外国人労働者も減少している。「大規模な人材不足の問題を主要なリスクの一つとして挙げる企業の割合は依然として高い」と、2025年9月に発表された当局のレポート「トレンドが語るもの」には記されている。

 HRMarketingの代表であり、民間雇用エージェンシー協会のCEOであるN.シチェルバコヴァは、2026年以降の労働市場では相反するトレンドが見られると指摘する。求人は減少し、求職は増加しているので、一見すると雇用主にとって状況は楽になるはずだが、人材不足は依然として解消されていない。オフィス職の分野では確かに徐々に雇用主優位の市場へと移行しており、求職側の競争は激化している。現在、企業は組織構造の最適化を進めており、人員削減が行われ、業務は他の従業員に再配分されている。こうした削減は民間企業に限らず、3月初めにはモスクワ市長S.ソビャーニンが市役所および一部の関連機関の職員を15%削減する決定を発表した。

 一方で、労働者や熟練専門職も市場を注視しているが、その目的は異なり、彼らは深刻な人材不足の中でより有利な条件を求めている。溶接工、旋盤工、フライス盤工、CNCオペレーター、電気工事士などは、やむを得ずではなく、より良い条件を見つけるために転職を試みている。彼らの受動的な求職活動もまた雇用主へのシグナルであり、市場は過熱しており、人材をめぐる競争が必要になる。同時に、特に工業や製造業における現場労働者の需要は依然として高く、さらに増加し続けている。熟練労働者の不足は実体経済にとって最大の課題である。このトレンドは、求人サイトhh.ruの給与ランキングによっても裏付けられている。トップ20は、現場労働職、IT分野、そして経営層によってほぼ均等に占められている。例えば第3位には溶接工が入り、今年2月には約29万ルーブルの給与が提示されており、2025年2月と比べて45%増加した。比較すると、ランキング首位の開発チームリーダーの中央値給与は今年2月で30万3800ルーブル(2025年比+22%)、販売責任者は30万ルーブル(同+50%)となっている。他のブルーカラー職では、 設備・設置作業員が12位に入り、中央値給与は1年で80%増の19万8600ルーブルとなった。15位には配達員が入り、この分野の需要は引き続き増加しており、中央値給与は35%増の18万4900ルーブルに達している。

 もう一つのトレンドは、パートタイムやプロジェクトベースの雇用の求人が増加していることである。SuperJobのデータによると、副業・兼業・短時間勤務の求人は増加しており、2026年2月は2025年2月と比べて11%増、さらに2年前(2024年2月)と比べると41%増となっている。2026年1月の時点では、副業を探している、または一時的な雇用に応じる意思のある人の履歴書数は、2025年の同時期と比べて11%増加した。副業は主に会計・財務、営業、リモート顧客サポート、受注対応、配送、医療(医師、看護師、検査技師)といった分野で求められている。会計や財務では、特定の会計業務の担当や報告書作成、複数の小規模企業のアウトソーシング対応などが挙げられる。医療分野では、追加シフトやコンサルテーション、複数のクリニックでの勤務など、兼業が一般的になっている。プラットフォーム型の働き方の発展により、雇用主側からの厳しい条件なしに、単発の仕事を見つけやすくななった。一方で、パートタイム就労の人気の主な理由は収入不足にある。ロシアの平均賃金は2025年に13.5%上昇したが、実質賃金の伸びはわずか4.4%にとどまった。HRエージェンシーのA.チハチョフによると、主な仕事があっても、もはや一つの収入源だけでは不十分な人が多くなっている。副業は、支出増加や会社の不安定さ、昇進の停滞に備える個人的な保険として捉えられることが増えている。SuperJobのデータでは、すでに23%のロシアの就業者が副業を持っており、さらに52%が追加収入を得たいと考えている。これは一時的な現象ではなく、国民的な行動モデルになりつつある。求人の減少と求職の増加という状況は、副業需要のさらなる拡大を引き起こす。人々は単一の雇用主に依存しないために、より積極的に働き方を分散させるようになるという。


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 イランとの戦争によりホルムズ海峡を通る石油供給が事実上停止し、価格が上昇している状況を背景に、米国は3月12日までにタンカーに積み込まれたロシア産原油について、4月11日まで取引を認める方針を決めた。こちらの記事が、それにより実際にロシア経済にどの程度の恩恵が生じるかについて、有識者の見解をまとめているので、以下各専門家の発言要旨をまとめておく。

 ロシア国際問題評議会のI.ティモフェエフ事務局長は、今回の制裁緩和は特定の企業に関するものではなく、ロシア産、またはロシア由来の石油に関する一般的な取引、つまり販売、輸送、保険が許可されていることを重視する。バイデン政権下で採択された米大統領令のいくつかの条項が停止された。トランプ大統領が最終的な決定を下したのは、原油不足に伴う「価格ラリー」への懸念からである。ただし、ワシントンがこの結論に至るまでには時間を要した。

 一方、ロシア政府付属の金融大学の専門家I.ユシコフは、この許可の内容が曖昧である点に注意を促す。今回の一般ライセンスは実務的措置ではなく、市場を落ち着かせるための言葉による介入にすぎない可能性がある。米国は、制裁やディスカウント、そして以前の低い世界価格のために滞っていた原油が、いま市場に出てくるかのように示したい。

 米国は3月6日、4月4日までの30日間、ロシア産原油をインドが購入することを認めていた。BGP Litigationのパートナー弁護士S.グランジンによれば、この措置は、制裁対象のタンカーによるものも含め、ロシアのあらゆる生産者による原油を対象としていた。今回の新たなライセンスは、すでに制裁下にある別の企業にも関係するものである。これまでは、制裁対象のタンカーは港への入港、石油取引に対するドル決済、そしてそれらの船舶へのサービス提供を恐れて控えられていた。今後はこれらの制限が一時的に取り払われるはずだと、グランジンは説明する。

 米国・カナダ研究所の上級研究員P.コシキンによれば、制裁の緩和や強化は、トランプが圧力や報奨の手段として用いるテコである。トランプは世界の指導者を通じてイランに影響を及ぼす方法を模索している。トランプは対イラン戦争によって今のところ自らを行き詰まりに追い込んでいる。目標も期限も明確に示されていない。米国ではガソリン価格がすでに上昇しており、選挙シーズンは真っ最中で、世論調査も否定的な傾向を示している。トランプが9月までイランとの戦争を続ける用意があるなら、代替となる原油供給源を見つけることが重要になる。問題は、ロシアに対する石油面での譲歩が議会やトランプ政権内でどのように受け止められるかで、そこには多くの強硬派がいると、コシキンは指摘する。

 金融グループ「フィナム」のアナリスト、S.カウフマンによれば、戦争が長引くほど、このような制裁緩和が延長される可能性は高まる。ここ4カ月間、ロシアの主要燃料エネルギー企業の輸出は、米国の制裁とインドに対する関税圧力によって困難になっていた。インドはロシア産原油の購入量を日量150万~200万バレルから100万バレルへと減らしていた。同規模の代替市場が存在しないため、行き先が明確でないロシア産原油が「海上」に滞留する事態が生じていた。これらの原油は、アラブ産原油に依存する東アジアや南アジアが取り合うことになる。タンカーに滞留している在庫はインドと中国が吸収するだろう。トランプはそれを加速し、簡素化した。市場は、G7の備蓄から放出される4億バレルを十分とは見ていない。ホルムズ海峡の封鎖による供給障害は日量1,200万~1,400万バレルと見積もられる。現在の状況と1カ月の一般ライセンスでは、タンカーに滞留しているロシアの在庫の一部を処理できるだけで、将来の安定した輸出の回復を保証するものではないと、カウフマンは言う。

 ベロゴリエフ、カウフマン、ユシコフの推計では、タンカーに積まれたロシア産原油の在庫は1億2,000万~1億5,000万バレル程度であり、ホルムズ海峡封鎖による需給ギャップを埋められるのはせいぜい2週間だという。「市場は多少楽になるが、根本的でも長続きするものでもない」とベロゴリエフは述べる。カウフマンによれば、これら滞留在庫のうち、真に需要がなかったものは半分以下であり、それが追加供給となる。その大部分は出発地から目的地へ向かう途中にある。アラブ産原油の一部が紅海経由に振り替えられ、イランからの供給も部分的に続いたとしても、ホルムズ海峡の航行が正常化しても原油価格が100ドルを大きく下回る可能性は低いという。ベロゴリエフは、米国の制裁緩和の最大の効果は、原油価格が高止まりする中でロシア産ウラル原油のディスカウント幅を縮小させることだと考えている。


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 こちらの記事が、統計局の発表に基づいて、2025年のロシア企業部門全体の財務結果について報じているので、以下ざっと内容を紹介する。

 ロシア企業は昨年、総合財務結果(利益から損失を差し引いたもの)を3.9%減少させ、2024年の28.2兆ルーブルから27.1兆ルーブルとなった(上掲グラフ参照)。ロシア統計局が3月11日に発表した。なお、この指標は名目価格ベースで算出されており、小規模企業、信用機関、国および地方自治体の機関、ならびに非銀行系金融機関は対象に含まれていない。

 2025年の結果として、4万6,400社(全体の72.9%)が利益を計上し、合計35.9兆ルーブルの利益を上げた。この数字は前年と比べて1.3%減少した。一方、1万7,200社(27.1%)は損失を計上し、その総額は8.9兆ルーブルで、2024年比で7.5%増加した。

 産業別に見ると、最も良好な財務結果を示したのは情報技術分野であり、総合財務結果は6.2倍に増加した。次いで航空・宇宙輸送(6.1倍)、その他鉱物の採掘(3.6倍)、教育(3.3倍)であった。また、電力の生産・供給、建設(いずれも2.7倍)、漁業(2.2倍)、コンピューター・電子・光学機器の製造(2.1倍)でも増加が記録された。これに対して、自動車製造企業の財務結果は大きく悪化し、総合財務結果は79.7%減少した。さらに、貨物輸送(77.4%減)、コークス製造(66.6%減)、石油・天然ガス採掘(63.9%減)、紙および紙製品製造(61.5%減)でも大幅な悪化が見られた。2025年の結果では、赤字企業の割合が黒字企業を上回った分野として、石炭採掘(66.1%)、蒸気および温水の生産・供給(63.8%)、その他の陸上輸送(58%)、水供給および廃棄物収集(51%)、石油・ガス採掘(50.9%)が挙げられる。

 同時に、企業は2025年、投資活動も縮小させた。統計局の推計によると、2025年の固定資本投資は2.3%減少した。これに先立つ4年間は増加が続いており、2024年は8.4%増、2023年は9.8%増、2022年は6.7%増、2021年は8.6%増であった。統計局によれば、2025年第4四半期の投資は2024年同期比で5.3%減少した。このような動きは、ロシア中央銀行が政策金利の引き下げサイクルを開始したにもかかわらず生じた。

 格付会社AKRAの企業格付グループ上級ディレクター、V.タヌルコフによれば、企業が借り入れた資金の金利が高かったことにより、利払いが大幅に増加した。また、ルーブル高が輸出志向型産業に追加的なマイナスの影響を与えた。同時に、投資活動の低下は、投資需要に依存する企業の財務結果にも悪影響を及ぼした。2025年後半には、ロシア中央銀行が金融政策の緩和に転じており、一定のタイムラグを伴いつつも、将来的には企業の財務結果にプラスの影響を与える。改善のペースは、金利引き下げの速度、ルーブル相場の下落、そして対外経済環境の改善の度合いに左右されると、タルヌコフは指摘する。

 格付会社「エクスペルトRA」の企業格付担当ジュニアディレクター、O.エメリチェンコフによると、商品部門の中で2025年に最も大きな打撃を受けたのは石炭産業であった。これは主として、欧州市場の喪失を背景とした輸出価格の大幅な下落、アジア市場の需要環境の弱さ、制裁によるディスカウント、さらに物流費の増加によるもの。ルーブル高は利益率をさらに圧縮し、エネルギー用石炭の輸出はすべての方向で採算割れとなった。東部鉄道管区の輸送能力の制約や、ロシア鉄道の運賃引き上げ(6~10%)により、これらの損失を補うことはできなかった。また、高い政策金利が債務負担を増大させ、石炭産業を最も脆弱な産業の一つにしてしまった。2026年も石炭企業の財務結果は引き続き圧力にさらされる見通し。イランをめぐる地政学的危機は、ロシアの石炭産業にとっての厳しい状況をある程度緩和する可能性はあるが、根本的に変えるものではない。同時に、中国での生産拡大、東部鉄道管区の物流制約、制裁による価格ディスカウントといった構造的問題は依然として残ると、エメリチェンコフは見ている。

 アルファ銀行のチーフエコノミスト、N.オルロヴァによれば、まず第一に打撃を受けたのは輸出志向型産業であり、これはルーブル高によって名目ベースでの財務結果が低くなるためであり、利益にも影響が及んだという。輸出企業の不振は、輸送サービスにも間接的な影響を与えた。陸上輸送や郵便通信分野の状況悪化は、全体的な輸送量の減少によるもの。2025年のロシア企業の財務結果は、年間GDP成長率が1%まで鈍化したという全体的な状況を考えれば、決して悪くないと評価できる。これは、国家による需要支援、特に製造業や機械工業部門への支援があったためだと、オルロヴァは説明する。

 投資会社「リージョン」分析部門長のV.ワイスベルグによると、ルーブル相場に加え、2025年には高い金利と賃金の急速な上昇も影響を及ぼした。特に軍需産業や内需志向型産業で賃金上昇が顕著だった。特に大きな影響を受けたのは、金利が急上昇した時点で投資プロジェクトの途中段階にあり、高コストにもかかわらずそれを完成させる決断をした企業であった。ただし、大型投資プロジェクトの完了は、こうした企業にとって今年は利益を拡大する機会をもたらす可能性がある。2026年はロシア企業にとって財務状況はやや緩和される可能性がある。賃金上昇のペースが鈍化し、またエネルギー資源や非鉄金属の国際価格の上昇により輸出企業が恩恵を受けるためである。さらに、ガス価格の上昇を背景として、石炭産業の状況もより好転する可能性があると、ワイスベルグは述べた。


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 ロシアには社会主義時代の名残で数多くの企業城下町があり、ロシア語では「モノゴーラド」と呼ばれるが、リーマンショックの時にそれらの街で社会・経済情勢が緊迫化したことを踏まえ、企業城下町の具体的なリストを制定して対策を講じている。私は以前はロシアの地域経済の研究に力を入れていたので、その問題に関する論文を書いたこともあった。そして、こちらに見るとおり、今般2026年3月11日付ロシア政府指令No.469により、企業城下町のリストに新たに26の自治体が加えられ、他方で指定を外された自治体もあり、その結果、合計数が264になったということである。今回の追加の眼目は、ロシア連邦への編入を主張しているウクライナ東部・南部の4地域の自治体を加えることにあったようだ。

 まずは、今回の動きを伝えるこちらの記事の要旨をまとめておく。

 ロシア政府は、単一産業型自治体の一覧を更新し、ドンバスおよび「ノヴォロシア」の地域を含む264のモノゴーラドを同リストに含めた。ロシア経済発展省の広報によれば、「新しい版では264のモノゴーラドが確定された。既定の基準に合致する24の新たな自治体がリストに追加される一方、70の自治体は単一産業型という特徴を失った。これは実施された支援措置の効果による部分もある。新しい版のリストには、同国の新領土にある9つの自治体も含まれている。すなわち、ドネツク人民共和国およびルガンスク人民共和国、さらにザポロジエ州の都市区および自治体区である」とされている。なお、モノゴーラドのリストから除外されたとしても、それが国家支援の停止を意味するわけではないと指摘されている。そうした地域も、一般的な条件のもとで連邦および地域の開発プログラムに引き続き参加することができる。

 大統領アカデミー応用経済研究所のD.ゼムリャンスキー空間分析・地域診断研究センター所長は、「今回のリスト更新は前向きに評価できる。前回、体系的な更新が行われたのは2014年で、すでに10年以上前である。その間に産業構造と地域構造は大きく変化した。ただし、今回の変更は決して大規模なものとは言えない。モノゴーラドの大部分はその地位を維持している。近年は規模こそ大きくないものの、支援の重点は徐々に、状況が最も困難で、これまで産業別など他の支援措置を利用できなかった小規模なモノゴーラドへと移りつつある。前向きな点としては、地方自治制度の新しい組織形態の現実に合わせてリストが整理されたことが挙げられる。今回の更新により、支援手段を自治体の実際の構造や現在の経済状況により正確に対応させることが可能になる」とコメントした。

 これまでモノゴーラド支援は主にVEB.RF(ロシア対外経済銀行)を通じて行われてきた。2022年に同開発機関へ関連機能が移管されて以来、24のプロジェクトに対して資金支援が行われた。具体的には、15のモノゴーラドにおける17プロジェクトが、総額45.1億ルーブルの優遇融資を受けた。また、6つのモノゴーラドにおける7プロジェクトについては、総額15.9億ルーブルのインフラ建設共同出資に関する協定が締結された。これらのプロジェクトの実施により、モノゴーラドでは1万667人の雇用が創出され、339.9億ルーブルの投資が呼び込まれた。2025年末以降、モノゴーラドへの金融支援措置は中小企業公社(Корпорация МСП)およびMСП銀行を通じて実施されている。さらに、中小企業支援措置が優先的に適用される26のモノゴーラドの特別リストも作成された。

 以下では、リストの中から、「新領土」にかかわるものを抜き出してみる。ロシアの政策の話なので、ロシア語読みでご容赦いただく。

1.カテゴリー1(とりわけ深刻な社会・経済状況のモノゴーラド):DNRエナキエヴォ、DNRマリウポリ、DNRトレズ、DNRシャフチョルスク、ザポロジエ州エネルゴダル、LNRアルチェフスク、LNRロヴェニキ、LNRクラスノドン

2.カテゴリー2(社会・経済状況悪化のリスクがあるモノゴーラド):DNRスネジノエ


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 小泉悠さんの新著『現代戦争論 ―ロシア・ウクライナから考える世界の行方』(ちくま新書)を読了したので、簡単にご紹介。サイトから紹介文をコピーさせていただくと、

 わずか3日で終わると予想されたウクライナ戦争は、開戦からもう4年を迎える。なぜここまで長期化したのか。どれだけの人が死んだのか。米トランプ政権成立で激変した世界秩序の中、日本はいかにふるまうべきか。21世紀における戦争を私たちはどう考えたらいいのか。ロシア情勢の第一人者として悲惨な実態を伝え、ロシアへの無期限入国禁止処分を受けた著者が、詳細なデータとともに戦争の本質に迫る。著者個人の経験や信念までも込められた、今最も読むべき戦争論。

 正直言うと、タイトルから、ロシア・ウクライナ戦争を踏まえ、世界における今日と今後の戦争のありようを一般論として論じた内容なのかと想像していたのだが、実際には、主にロシア・ウクライナ戦争そのものを論じた作品と位置付けられそうである。構成は以下のとおりとなっている。

第1章 どれだけの人が死んだのか?──データで見るウクライナ戦争
第2章 なぜ終わらないのか?──軍事戦略理論から見たウクライナ戦争
第3章 いかにして軍事国家となったのか?──戦時下ロシアの横顔
第4章 この国はどこへ向かうのか?──世界の中のロシア
第5章 日本はいかにロシアと向き合うべきか?──ウクライナ戦争と安全保障

 「あとがき」によると、編集側から当初提示されたテーマは、ウクライナ侵攻を引き起こしたロシアとは一体どんな国であるのかという問題であったということである。その問いを踏まえ、ロシア・ウクライナ戦争につき5つの問いを設定し(それが上掲の5つの章に対応)、2025年秋に一気に書き上げたということだ。

 本書の中でも、第3章の「いかにして軍事国家となったのか?──戦時下ロシアの横顔」は、ウクライナ侵攻を続けるロシアの社会・経済に迫ったものであり、私自身も研究に注力したいと思っている分野なのだが、本書の完成度を目の当たりにすると、なかなかこれを超えるのは容易ではなさそうだと実感する。まあ、何とかしたいものである。


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 こちらに見るとおり、ロシア政府は2026年3月6日付の政府指令第434号で、ロシアの金融主権の状態を数値指標で測定するための計算方法を制定したということなので、その内容を拝見しておく。

 今回の文書によれば、ロシアの金融主権の評価になる指標は、①金融機関資産の対GDP比、②非銀行金融機関資産の対GDP比、③株式市場の時価総額の対GDP比、④家計の長期金融資産の割合、⑤対外取引における「ルーブル・友好国通貨」決済比率とされている。

 通常「金融安全保障」を評価する場合は、金・外貨準備、対外債務、経常収支などがよく指標とされる。しかし、今回の方法論では、金融主権を「国家の資金調達能力と金融市場の自立性」として定義しており、金融市場の構造や国内資金の厚みを重視したものと見られる。

 なお、一部には、今回ロシア政府が制定した方法論は、 中国の「金融安全指数」モデルに近い設計だとする指摘もある。


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