ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ロシア

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 これまで当ブログでは、ロシアの自然独占問題研究所というところの資料に基づいて同国の港湾貨物量を紹介することが多かったが、どうやら同研究所は最近その資料を出さなくなってしまった。ただ、ロシア港湾協会のこちらのページに2025年1~5月の港湾貨物量が出ていることが判明したので、今回はこれを紹介する。やはり全般に調子が良くない。

 2025年1~5月のロシアの港湾による取扱貨物量は、前年同期から4.9%低下し、355.3(単位100万t、以下同様)となった。貨物のカテゴリー別には以下のとおり。

  • 輸出貨物:279.8(-5.3%)
  • 輸入貨物:17.6(+3.9%)
  • トランジット:30.2(+6.0%)
  • 内貿:27.7(-15.4%)

 海域別では以下のとおり。

  • バルト海:113.6(-3.0%)
  • 黒海:104.5(-10.6%)
  • 極東:98.0(+2.0%)
  • 北極海:36.4(-7.5%)
  • カスピ海:2.7(-35.4%)

 貨物の種類別では、まずドライカーゴは170.6(-6.0%)で、主なものは以下のとおり。

  • 石炭:78.3(+1.5%)
  • コンテナ:23.1(-0.3%)
  • 肥料:19.8(+12.1%)
  • 穀物:14.6(-54.2%)
  • 鉄鋼:10.3(+24.5%)
  • 鉱石:5.4(+41.3%)
  • フェリー輸送:3.4(+6.5%)

 最後に液体貨物は184.7(-3.9%)で、主な貨物は以下のとおり。

  • 原油:110.8(-3.9%)
  • 石油製品:53.3(-5.1%)
  • 液化ガス:16.2(+0.9%)
  • 食品貨物:2.5(-12.0%)

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b61

 こちらの記事が、FAOのレポートに基づき、ロシアが世界の肥料市場で存在感を増していることを伝えているので、以下抄訳しておく。

 FAOはこのほど発表した報告書で、ロシアがほとんどの主要な肥料カテゴリーの世界輸出市場でシェアを拡大していると指摘した。FAOによると、2021年、ロシアは世界最大の肥料輸出国のひとつとなり、世界の肥料供給の19%を占め、窒素、リン酸、カリを含む様々な種類の肥料2,970万tを輸出した。2024年には、世界の肥料供給におけるロシアのシェアは21%、3,400万tに上昇した。他方、窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料の総合価格は、ピーク時の2022年4月の1t当たり815ドルから、2025年5月のには437ドルとほぼ半減している現実もある。

 報告書によると、ウクライナ紛争によって穀物と肥料の世界的なサプライチェーンが寸断され、世界市場で供給不足が発生するという当初の懸念は現実とはならなかった。しかし、多くの国々が代替のサプライヤーやルートを探さざるを得なくなり、貿易の著しい変化につながった。一方、世界の小麦、トウモロコシ、大麦輸出の4分の1近くを占めるロシアとウクライナの紛争が続く中、両国は総じて安定性を示し、輸出に適応してきたと指摘されている。

 FAOの最新の予測では、世界の食料品市場の見通しは比較的楽観的で、砂糖を除くすべての農産物の生産増加が予測されている。コメ、トウモロコシ、ソルガム、油糧種子の世界生産量は、過去最高水準に達すると予想されている。しかしながら、世界の食糧生産は、悪天候、地政学的緊張、貿易政策の不確実性、不安定な経済情勢に対して依然として脆弱であることが指摘されている。


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 ロシア統計局より5月のロシア消費者物価が発表されたので、定番のグラフを更新してお目にかける。毎度のことながら、グラフがだいぶ横長になってきたので、クリック・タップし拡大してご利用を。

 5月の消費者物価には、大きな変化はなかった。消費者物価全体では、前月比0.43%増、前年同月比9.88%増であった。

 まあ、物価がある程度落ち着いてきたという手応えがあるからこそ、先日ロシア中銀は政策金利を21%から20%に引き下げたのであろう。なお、カテゴリー別に見ると、下図のとおりこのところ非食料商品が値下がり傾向である一方、サービスの物価上昇が目立つ。サービスでは、旅行料金や交通料金が特に高いようだ。

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 ロシアは現在、「2027~2036年の軍備国家プログラム」というものを策定しようとしているそうで、こちらに見るとおり、6月11日にクレムリンでプーチン大統領が主宰しその基礎パラメーターを検討する会議が開催された。

 会議におけるプーチンの発言振りによれば、2027~2036年という期間は、国の軍事組織全体のための兵器システム開発の主要な基準点となり、2030年代におけるそれらの新たな質の形成のための最も重要なツールとなる。今日、ロシアの任務は、今後有望な兵器も含め、兵器システムとサンプルの全範囲について、新たな長期計画を策定することである。そのためには、特別軍事作戦や様々な地域紛争の経験を最大限に活用すべき。軍事技術開発における世界的な動向を考慮に入れることも重要。この分野で積極的に活動している国の数は増加しており、これは多極化した世界における技術・科学・産業発展の新たな中心地の形成という客観的なプロセスを反映している。かつて我々は2008年から始まり、2009年、2010年とタイムリーな決定を下したからこそ、現在の軍備レベルがある。当然のことながら、重視していくのは核の三位一体であり、それがロシアの主権の保証となり、世界におけるバランスの確保にとり鍵を握る。現時点で戦略核戦力の95%は近代的なモデルであり、世界の核保有国で最も高い指標だ。特別軍事作戦の経験によれば、航空宇宙軍の航空は敵施設の破壊に大きく貢献しており、策定される国家プログラムにはロシア軍のニーズに合わせて航空装備と航空破壊手段を開発、購入、近代化、修理する一連の体系的かつ一貫した措置が含まれるべきである。と同時に、地上部隊は、いかなる規模・強度の近代軍事作戦の遂行においても、依然として支配的な戦力であり、その戦闘能力をできるだけ早く向上させ、発展のための強固な基盤を築き、最高の戦術的・技術的特性を備えた先進的な兵器設計・システムの開発と近代化資源を確保することが重要である。そしてもちろん、新しい軍備国家プログラムは、最近承認された2050年までの海軍発展戦略を実施するための効果的なツールとなるはずだ。また、ロシア製兵器・装備の輸出可能性を高めることも必要であり、特に実際の高強度戦闘でテストされ、信頼性と有効性が証明された設計のものを輸出する必要がある。同時に、コストとメンテナンスコストの両面で競争力がなければならない。プーチンは概要以上のように語った。


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 先日、「ロシア造船業発展戦略が描くシナリオ」という話題をお届けした。その時は触れなかったが、くだんのロシア造船業発展戦略には、造船業に占める民需の比率という指標が出ていた。それによると、2025年時点で民需の比率が68%とされていた(言い換えれば軍需が32%)。これは実績値ではなく目標値のはずだが、2025年の数字がいま現在の実際の数字からそう大きく変化することはないはずなので、ほぼこれが現状の民需比率と見ていいだろう。

 それで、個人的に、「航空機産業についても、同じように、民需と軍需の比率が、どこかに出ていないか?」という関心を抱いた。それで、頑張って調べたのだが、それらしい数字はなかなか出てこない。ようやく、だいぶ古いが、2017年9月18日に採択された「2025年までのロシア連邦航空機産業民需製品輸出発展戦略」の中に、当該の数字を見出すことができた。これによると、2016年のロシア航空機産業の販売額は1.15兆ルーブル(172億ドル)で、それに占める民需製品の比率は約17%ということである。逆に言うと、軍需が83%ということになろう。少々古いのが残念だが、政府文書に出てくる数字なので、信頼性は高いだろう。ロシアの造船業では民需が主流だが、航空機産業では軍需が主役ということが、具体的な数字で一応確認できた。


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 ロシアの解釈によれば、今年はロシアによる北極海航路の開発開始から、500周年に当たるということのようである。プーチン大統領が3月27日に行った北極演説では、「ロシアの船乗り、漁師、ポモール人の大胆なアイデア、いわゆる北東航路(これが北極海航路の原型となった)に沿って北の海を東に進み、中国に至る可能性のある貿易ルートについて、歴史的資料の中で初めて言及されてから今年で500年になることを指摘しておきたい」という言及があった。そして、こちらに見るように、プーチンは3月10日付の大統領令で、北極海航路500周年を祝うための準備作業を命じていた。

 さて、500年前に北極海航路の開発が始まったとする史実に関しては、こちらのサイトの情報が分かりやすいか。これによると、北東航路の実用化の可能性は、1525年にロシアの外交官で翻訳家のドミトリー・ゲラシモフによって初めて発表されたと考えられている。イワン雷帝の父ワシーリー3世の治世のことだ。ゲラシモフは、北東航路の利用について、13~14世紀にバレンツ海で海獣を狩るために小型船で航海し、オビ湾に到達した白海沿岸の住民ポモール人の航海に言及した。さらに、イタリアの学者パウル・ヨヴィウスは、ゲラシモフの話を基にした1525年の「モスクワ大公ワシーリーのクレメンス7への大使館書」の中で、次のように書いている。 「...誰も大洋に到達した者はいない。彼らは、噂や、商人たちのほとんど作り話によってのみ知っている。しかし、ドヴィナ川は無数の河川を内包しており、速い流れに乗って北に運ばれていること、そして、そこの海は非常に長いため、信頼できる説によれば、右岸に行き、そこから船で中国の国境に到達することができる。」

 要するに、ゲラシモフ自身は北極海航路を探検したわけではないが、古くから白海沿岸に進出していたスラヴ人のポモール人の話を伝え聞いており、それをイタリア人に伝え、その話を基に初めてモスクワ大公国の地図が作成された際に北極海あたりまで描かれることになったので、これが北極海航路開発の出発点というような位置付けになったらしい。歴史のことにこれ以上深入りする余裕はないので、このあたりにしておく。なお、上掲地図はこちらから拝借。


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2180

 ロシアの首都モスクワと、北朝鮮の首都平壌との間には、かつて鉄道の直通列車が走っていた。その運行はコロナ禍により2020年2月に中断されていたのだが、こちらのニュースによると、再開が決まったということである。以下記事の概要をまとめておく。

 モスクワ~平壌間の直通列車は6月17日から、平壌~ハバロフスク間の列車は6月19日から再開される。ロシア鉄道のテレグラム・チャンネルで報告された。

 平壌発は毎月3日と17日、ロシア着は毎月11日と25日、モスクワ発は毎月12日と26日、朝鮮民主主義人民共和国着は毎月20日と4日となる。

 ロシア鉄道によると、平壌~モスクワ間は世界最長の直通鉄道路線であり、首都間の距離は1万キロ以上、所要時間は8日間である。列車はハサン、ウスリースク、ハバロフスク、チタ、イルクーツク、クラスノヤルスク、ノヴォシビルスク、オムスク、エカテリンブルグ、キーロフ、コストロマなどの駅に停車する。

 ハバロフスクとの直行便は毎月1回運航され、19日平壌発21日ハバロフスク着、21日ハバロフスク発23日平壌着となる。所要時間は2日強。

 乗客は北朝鮮鉄道のコンパートメント車両で輸送される。チケットは近日中に鉄道切符売り場で購入できるようになる。販売期間は出発の60日前まで。


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2176

 「ロスアトム」は、ロシアの原子力公社だが、原子力砕氷船を抱えるということで、北極海航路に深くかかわるようになった。そして、2023年11月に、ロシア随一の海運会社「FESCO」を傘下に収め、より一層、物流会社という性格を強めるようになった。

 そして、最新のこちらの記事によると、ロスアトム傘下のFESCOは、バルト海のカリーニングラード港の買収に向け交渉中ということである。以前お伝えしたとおり、プーチン政権は現在、北極海横断輸送回廊(サンクトペテルブルグ~ムルマンスク~アルハンゲリスク~ウラジオストク)を構築しようとしているところであり、カリーニングラード港もそのルート上に位置するということで、おそらくはそんな背景があるのではなかろうか。

 今回の記事によると、カリーニングラード港には、以前オーナーたちがいたが、2年前に検察の提訴により没収され、現在はロシア国有資産管理庁の管理する国有資産となっている。FESCOはそれを買収すべく交渉しており、数ヵ月以内の妥結を見込んでいる。買収額は27億~28億ルーブル程度と見られる。なお、カリーニングラード州のネマン市にカリーニングラード原発が所在し、ロスアトムはそれに隣接してリチウム電池工場を建設中である。


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 以前もお伝えしたように、本日、北大の学祭の出し物で、サイエンストーク「ロシア・ウクライナ戦争で私たちの食卓はどうなる?」というのをやらせてもらう。基本的には農業についての報告なのだが、北海道にとっての重要性にかんがみ、ロシアからの魚介類輸入にも少しだけ触れることにした。その目的で、上掲のようなグラフを作成した。

 現在のところ、日本はロシアからの魚介類輸入の関税率をわずかに引き上げただけで、輸入は禁止していない。実際にもグラフに見るように輸入額はあまり減っていない(円表示なので、過去2年くらいは円安で額が膨らんでいる面もあるかもしれないが)。

 北海道は例年、日本の対ロシア魚介類輸入の20~30%程度を占めている。「お魚王国」であるはずの北海道が、現実にはかなりの資源をロシアに依存しているのである。

 北海道がロシアから輸入している主な品目は、うに、かに、さけ・ます、いくら、ほたて等と見られる。


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2179

 こちらなどが伝えるとおり、ロシア中央銀行は本日6月6日の政策決定会合で、21%だった政策金利を、20%に引き下げることを決定した。6月9日から施行する。次回政策決定会合は7月25日の予定。


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2175

 Wedge ONLINEに、「ロシア経済は明らかに失速中! それでもプーチンがウクライナへの攻撃をやめない理由」を寄稿しました。無料でお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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2174

 いつも寄稿しているWedge ONLINE向けの原稿を書き終えたところ。発表されたらまた当ブログでも紹介するので、お楽しみに。

 上に掲載したのは、同原稿のために作成したグラフ。要するに、ロシア経済が昨年までの「過熱」とまで言われた状態から、今年に入ってだいぶ冷え込んでおり、それが経済指標にも表れ始めているので、代表的な指標のGDPを四半期ベースの数字で見たものである(2025年Q1は速報値)。

 さて、実はロシアでは統計局に加えて、経済発展省もGDPの数字を発表している。上のグラフに見た統計局のGDPは、出るのは年次と四半期ベースだけであり、発表されるのに少々時間がかかる上に、事後に修正されもする(それだけ緻密に計算した統計値ということになる)。他方で、経済発展省は月ベースのGDPを発表しており、これは統計局ほど精密ではないが、月ベースの上に早く出るので、重宝はする。

 そして、こちらに見るとおり、昨日経済発展省は4月のGDPを発表した。それによると、2025年に入ってからの月別GDP成長率は(前年同月比)、1月:2.7%、2月:0.5%、3月:1.1%、そして4月は1.9%だったということである。1~4月全体では前年同期比1.5%増だった。


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 モスクワ郊外のジュコフスキー空港を舞台に開催されているロシア航空宇宙展「MAKS」というのがある。これまでは隔年で、基本的に奇数年の夏に開催されていた。私も、ロシア経済のイノベーション化を調査する事業を実施していた際に、一度だけ見学に行ったことがあった。

 ところが、結論から言えば、ウクライナへの全面軍事侵攻開始後、MAKSは一度も開催できていない。本来であれば2023年が開催年であったが、安全上の考慮と称し、2024年に延期された。しかし、2024年も開催できず、今年2025年に延期されていた。

 そして、最新のこちらのニュースによれば、結局今年の夏も開催しないことが決まり、2026年に延期されたということである。

 まあ、「安全上の考慮」というのはそのとおりなのだろうが、特に航空ショーなので、その晴れ舞台がウクライナのドローン攻撃でダメージを受けるような事態になったら、赤っ恥だ。次回のMAKSが実際にいつ開催されるかは、対ウクライナ戦争次第と言えそうだ。


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 最近、スコット・レイノルズ・ネルソン(著)・山岡由美(訳)『穀物の世界史 小麦をめぐる大国の興亡』 (日本経済新聞出版、2023年)という本を読んだ。Amazonから紹介文を拝借すると、以下のとおり。

 《戦争や革命勃発の背後にアメリカ産小麦の存在――》 19世紀初頭より帝政ロシアは、ウクライナの黒海に面したオデーサの活況を呈する港を通じて、ヨーロッパの大部分に食糧を供給していた。しかし、アメリカ南北戦争の後、大量のアメリカ産小麦が大西洋を渡ってヨーロッパに押し寄せるようになり、食糧価格は急落した。安価な外国産穀物は、ドイツとイタリアの台頭、ハプスブルク家とオスマン帝国の衰退、そしてヨーロッパ各国による勢力圏の争奪戦に拍車をかけ、第1次世界大戦とロシア革命が勃発する決定的な要因となった。
 国家の盛衰に説得力ある新たな解釈を加えた本書は、大国同士が鎬を削るなかにあって、穀物の支配が比類のない力を示してきたことを物語っている。従来の歴史観をゆさぶる注目書。

 この本の原題は、Oceans of Grain ―How American Wheat Remade the Worldという。いわば米国が主役なわけだが、ロシアが裏主題のようになっている。やや一面的かなと感じるところもあるが、ロシアに関する書き振りはかなり踏み込んだものであり、18世紀以降のロシアの発展、ヨーロッパとの関係、そしてウクライナというものの成立を考える上で、まさに小麦という要因が鍵を握っているのではないかと考えさせられた。

 そもそも、本書によると、現在のウクライナの地に当たる黒海北岸で、農民たちが数世紀にわたり様々な小麦を交配して気候に適した品種を作り、それが北米、アルゼンチン、オーストラリア等世界全体に広がっていったのだという。

 時代は下り、18世紀のエカチェリーナ2世の治世で現ウクライナの大半が帝政ロシア領となった。本書の第3章によると、

 1760年代、帝国と穀物の関係はエカチェリーナ2世の治世下でふたたび変化する。ロシア帝国を拡大するために未加工の穀物を販売するというまったく新しい政策をエカチェリーナは採用したのだ。それ以前の帝国は農地を掌握し、港を拡大し、さらに穀物を国内で流通させて都市を養い、国外に運んで陸海軍を養っていた。だがエカチェリーナは、重農主義者(フランスの経済思想家や王室顧問のグループ)の影響を受けていた。経済を農業者、地主、職人、商人のあいだの商品の交換と見なしていた重農主義者は、余剰穀物を輸出して希少な外国産品と交換する商人は帝国に利益をもたらすと考えた。それ以前の思想家は国際貿易を不穏当で危険なものと考えていたが、この紳士たちは穀物栽培に対する国家の支援や、穀物取引を妨げる国内障壁の撤廃、広範な教育、輸出入の慎重な管理が必要であると説いた。かれらは現代の意味での自由貿易論者ではなかったが、しかるべく管理された穀物輸出は帝国の富の基盤となりうると考えていた。……エカチェリーナは重農主義の理論をロシアの状況に会うようにさらに読み替えて100ページの文書に収め、印刷のうえロシア全土に配布した。


 (中略)エカチェリーナが1796年の死去以前に任命した県知事たちは、彼女の重農主義的ユートピアを現実へと変えた。すべての中立国に加え、革命中のフランスも君主制のイギリスも、イスタンブールの海峡を通行して安全地帯のオデーサで穀物を自由に買い入れることができた。1800年にはわずか数軒の家しか建っていなかったオデーサだが、1807年以降は、ヨーロッパが戦火に包まれているあいだに、ヨーロッパ向け穀物の国際市場となった。……乾燥した草原に穀物の栽培地が瞬く間に広がり、オデーサの人々とロシア帝国に富をもたらした。……オデーサが建設される前、ロシア帝国の膨張は慎重かつ緩慢で、要塞線も一本ずつ築いていくという具合だった。オデーサが建設されたからのロシアは、アメリカと同じように外貨を手に入れ、飛躍的な膨張も可能になった。

 ただし、エカチェリーナを単に開明派と位置付けるのは難しい面がある。「エカチェリーナは穀物の集約的生産を推し進めるべく私有財産の制度を設けたが、これは帝国の将来に深い影響を及ぼすことになる。彼女は農奴制をアメリカの奴隷制に近いものにしようとした」からである。

 やはり第3章で、次の記述も非常に興味深かった。

 帝国が戦争を遂行するに当たってエカチェリーナが建てた構想も、穀物を軸に据えたものだった。彼女はまず、帝国の外から穀物を手に入れてそれを軍の食糧にしながら、乾燥した平原の占領を進めていった。それから外国人入植者に補助金を出し、港に資源を注ぎ込み、海外で穀物を売却して外貨を得た。それから1世紀以上にわたって、ロシアのツァーリと役人は、この小麦を土台にした膨張という政策を続けることになる。


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2168

 こちらの記事が、ロシアの政策金利の見通しについて伝えているので、要旨をお伝えする。

 記事によると、6月6日にロシア中央銀行の政策決定会合が開催される。これに向け、ロシアの大手銀行や投資会社のアナリスト30名のうち10名が、現状の21%からの利下げを予測している。ただ、下げ幅の予測には幅があり、19%までの利下げを見通す専門家もいれば、20.5~20.75%の間と見る向きもある。

 他方、30名のうち20名は、現状の21%での据え置きを予測している。仮にそうなれば、5会合連続の据え置きとなる。

 ただし、仮に据え置かれるにしても、中銀は今後の利下げに向けたシグナルを発する可能性が高いと、多くの専門家が見ている。


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 米国の著名な経済学者であるジェフリー・サックス氏は、こちらの講演などに見るとおり、米国の論壇では異例なほど、対ウクライナ戦争に関してもロシア寄りの発言を続けているようだ。

 それで、そのサックス氏が、ロシア国営タス通信のインタビューに応じたということで、タスはいくつかの記事に分けて配信している。こちらでは、欧米の制裁は意図したような結果をもたらさなかった、ある意味では逆にロシア経済を強めることになった、といったことを述べている。

 こちらでは、サックス氏が米国とウクライナのレアアース・ディールについてコメントしている。サックス氏いわく、レアアース・ディールで米国は大して得をしない。ウクライナにどんな資源があるのか、その採掘がどれだけ採算がとれるのか、開発に何年かかるのか、金属の加工・精錬をどうやってやるのか、正確なことは誰にも分からない。ウクライナの鉱物資源に関しては、誇張されているところが多いと思う。実際に何らかのものはあるのだろうが、それが米国にとってのドル箱になるとは思わない。サックス氏は以上のように述べた。


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 今般、ロシア統計局より、2025年1~4月の鉱工業生産統計が発表された。それを使った原稿を書いているところであり、詳しくはそれが出てから読んでいただければと思うが、ここではさわりだけご紹介する。

 ロシアの鉱工業生産は、2023年が4.3%、2024年が4.6%と、概ねGDPの実質成長率と同程度の伸び率を示してきた。しかし、上図に見るとおり、2025年1~4月の伸び率は前年同期比1.2%に留まっており、明らかに昨年までとは様相が異なっている。

 鉱工業の中でも、鉱業(マイニング)はロシア本来の花形部門だが、上図に示されているとおり、2023年以降は減産続きで、今年1~4月にはマイナスが3.0%に広がった。1~4月も、金属鉱石や石炭は悪くないので、それだけ本丸の石油・ガスの調子が悪いことになる。

 鉱業の不振と対照的に、製造業は高い伸びを示してきたが、2025年に入り同分野にも陰りが見える。現状で伸びているのは軍需だけで、その軍需にしても伸び率はかなり鈍化してきている。


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 お待たせいたしました。私ども北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは先日、講演シリーズ「危機を生きるウクライナと世界」第8回として、中居孝文さんに「落日の日露ビジネスに復活の日は来るか」という講演をしていただきましたが、このほど講演動画をYouTubeでアーカイブ公開しましたので、ぜひご利用ください。

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 ちょっと取り上げるタイミングを逸していたが、こちらに見るとおり(ただし日本からの閲覧には障害が)、先日ロシア統計局が4月の消費者物価を発表していたので、遅ればせながら定番のグラフを更新してお目にかける。グラフはクリック・タップし拡大してご利用を。

 上図に見るとおり、4月のロシア消費者物価は前月比0.40%増、前年同月比10.23%増だった。若干の落ち着きを見せるも、年率10%前後のインフレ率が定着してきた感がある。

 4月の前月比を部門別に見ると、食品が0.71%増と引き続き高く、非食料商品が0.07%減と低下、サービスは0.53%増だった。非食料商品は、輸入品が多いので、ルーブルが持ち直したことで価格が下がったものだろう。ウクライナ戦争勃発後の中期的な物価の推移は、下図のとおり。

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 こちらの記事が、ロシアのリンゴ自給をめぐる動きについて報じているので、以下要点を整理しておく。なお、この記事では触れられていないが、私見によれば、本件はロシアとモルドバの関係にかかわってくるはずである。貿易のロシア離れをかなり進めているモルドバながら、リンゴ輸出に限ってはロシア市場依存度がいまだにかなり高いからである。

 記事によると、このほどカフカス投資フォーラムが開催され、ロシア農業省で農業部門の発展戦略を担当するV.チュグノフが報告を行った。同氏によれば、北カフカスの果実収穫拡大計画により、ロシアでリンゴは2028年までには完全自給を達成する可能性があるという。生産性がきわめて高いタイプの果樹園の比率が、2024年には50%程度だったが、2030年には63%ほどとなる見通しである。

 業界団体「ロシア食品同盟」によると、ロシアにおけるリンゴの自給率は、2024年には79.3%で、2025年には85%超えが見込まれている。


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 ロシアでハイテク部門の企業を束ねる国営コングロマリット「ロステク」のS.チェメゾフ総裁が、こちらでインタビューに応じている。以下、気になった部分だけ発言要旨をまとめておく。

 ロステク傘下企業は真っ先に制裁の対象となったが、ほとんどの輸出契約はルーブルまたは相手国の通貨で締結している。また、オフセット取引やカウンタートレードも利用している。ドルとはずいぶん前に決別した。

 すべての商品を輸入代替することは不可能だし、今はその必要もない。製品の種類によっては、ロシアには採算を確保できる市場がない。第一の課題は、重要な分野で「自国産」に切り替えることである。国家安全保障に関わる分野だ。まず、防衛、宇宙、航空、エネルギー、エレクトロニクス、工作機械、製薬などだ。

 我々の経験は、国際分業体制があまり当てにならないことを示している。だからこそ、我々は非常に困難な課題を解決しようとしているのだ。航空機分野では、エンジン、その他のユニットやシステム、座席に至るまで、ほぼ80品目を輸入代替する。そうすることにより、広大な領土を持つロシアが飛行機なしになってしまうことを避けられる。

 ロシアがどこまで進捗したかは複雑な問題だ。一方では、この3年間で飛躍的な進歩を遂げた。航空機産業だけでなく、自動車産業、医療、エネルギーなどのプロジェクトが急速に発展している。その一方で、我々はまだほんの入り口に立ったにすぎない。医療機器の7割は輸入に頼っているし、工作機械も同様だ。

 新しいものを生み出すのは簡単で、その気になりさえすればいい、と考える人もいる。しかし、ハイテクに奇跡はない。外国企業が何十年もかけて、毎年巨額の投資してきた道を、3年で飛び越えることはできない。多くのプロジェクトにおいて、我々は海外の同業者よりも2倍も3倍も速い。とはいえ、まだやるべきことはたくさんある。


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 こちらの記事によると、ロシアでタクシーの国産化に向けた措置が導入されたということである。5月23日付で当該の法律が成立した。

 記事によると、新ルールにより、自動車がタクシー登録されるためには、2つの条件のうち1つを満たさなければならない。第1に、自動車の生産における現地化ポイントの合計数が、国家調達のために政府が設定したパラメーターに該当すること。第2に、自動車が2022年3月1日から2025年3月1日の間に締結された特別投資契約に基づいて生産されたものであること。

 自動車が2025年3月1日以降に締結された投資契約に基づいて製造された場合でも、政府は個別の決定によりその自動車をタクシーとして使用することを認めることができる。しかし、2033年1月1日以降は、タクシー登録の唯一の基準となるのは現地化ポイントのみである。

 この法律は2026年3月1日に施行される。しかし、地域によっては、新要件の適用開始が遅くなる。例えば、カリーニングラード州とシベリア連邦管区では2028年3月1日から、極東地域では2030年3月1日から適用される。

 現地化ポイントシステムは、その車がどの程度ロシアで生産されたかを示す。ロシア国内で製造された部品や生産工程が多いほど、現地化評価が高くなる。例えば、国内企業によるボディの溶接は400点、ボディの塗装は500点、アルミニウムを含むロシア製金属をボディ総質量の70%以上使用すれば200点、ステアリングギヤのボディ部品の製造(鋳造、鍛造、プレス、機械加工)は60点といった具合である。

 政府との契約を締結する際には、現地化の度合いが必ず考慮される。特に、乗用車が国家調達の入札に参加するためには、少なくとも一定のポイントを獲得しなければならない。2023年1月1日以降、この最低基準は3,200ポイントとなり、2027年1月1日以降は3,500ポイント以上、2028年1月1日以降は3,700ポイント以上となる。


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100

 ロシアでは、外為市場を安定させるため、2023年10月の大統領令により、輸出業者に対する外貨の強制売却制度が導入されていた。こちらの記事等が伝えるところによると、このほど同措置の延長が決まったということである。

 記事によると、外貨強制売却措置は今年5月24日までが期限であったが、ロシア政府が今般発出した政府決定により、2026年4月30日までの延長が決まった。

 同措置では、輸出業者は輸出外貨収入の40%以上を指定銀行の口座に繰り入れることになる。そして、その90%以上を、国内の外為市場で売却することが義務付けられる。その際に、個々の輸出契約の少なくとも25%の売却が必要である。

 対象となるのは、エネルギー、冶金、科学、林業、穀物の輸出企業である。


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Skhema

 ブログでロシアの北極域のことを取り上げる機会が増えているが、そういう研究プロジェクトを手掛けているからであり、あまり一般的な話題ではないと思うが、ご容赦願いたい。ただ、それにもかかわらず、重要な政策を見落としていたようだ。こちらの記事に見るとおり、ロシアは北極域でいくつか「拠点都市」、「拠点区域」というものを設けようとしており、その開発のための「マスタープラン」と称するものを策定しつつあるらしい。

 まだフォローが全然追い付いていないが、今年3月のこちらの記事によると、16の拠点都市が選定されたらしい。まあ、こういった諸々のことを、6月27日のこちらのセミナーで発表したい。


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m202506cover

 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年6月号のご案内。毎年6月号はロシア以外のNIS諸国を掘り下げる特集と決まっており、今回は「成長と分断が進むNIS諸国の諸相」と題する特集となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は、「2024~2025年のロシア・NIS諸国の経済トレンド」という巻頭記事の中でウクライナの経済レビューを担当しているのに加え、「落ち込みが目立つウクライナのレミッタンス受入」、「ロシア軍需生産の陰りと強気のプーチン」という連載記事を書きました。


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ris1-1

 マニアックな話題で恐縮。先日「プーチンが北極演説で『北極海横断輸送回廊』提唱」と題してお伝えしたように、3月27日にロシア北方のムルマンスクでプーチン大統領が演説を行い、今後の北極政策に関する戦略的方向性を示した。それを受け、こちらのサイトに見るとおり、今般プーチン大統領が北極政策の具体策を列挙しその策定を政府に指示した。そこで当ブログでは、前回同様、私の最大の関心分野である輸送分野の「北極海横断輸送回廊」についての指示(箇条書きの「5」の部分)を、以下のとおり抄訳しておく。自動翻訳ベースの少々粗いものになるが、悪しからず。

 なお、上掲の地図は、「北極海横断輸送回廊」のルートを直接示しているわけではないが、雰囲気が伝わる地図を、こちらから拝借して掲載したものである。

 5. ロシア連邦政府は、ロスアトムと共同で、国家評議会北極海航路・北極委員会、合同造船コーポレーション、ズヴェズダ造船所、関係する荷主の参加を得て、北極海横断輸送回廊(サンクトペテルブルグ~ムルマンスク~アルハンゲリスク~ウラジオストク)形成のための財政的、経済的、組織的モデルを開発し、承認する。それには以下の事柄が含まれる。

(a) 北極圏横断輸送回廊のインフラ事業者を確定する。

(b) 北極圏横断輸送回廊の機能と発展に関する主要業績指標の一覧を策定し、これらの指標を監視するシステムを開発する。

(c) ロシアからの輸出貨物の輸送を含め、世界市場における競争力を実現するため、北極圏横断輸送回廊のインフラ整備と運営のあらゆる段階において、コスト削減を確保する。

(d) 経済的に妥当な貨物輸送コストを確保するため、ロスアトムと荷主との間で、年間貨物輸送量に関する相互義務を規定した協定、およびテイクオアペイ方式による砕氷船護衛サービスの長期契約を締結する可能性を考慮し、貨物輸送量の見込みを決定する(年別、出荷場所別、輸送方向別)。

(e) 関連措置の資金源を特定し、プロジェクト22220の第7および第8系列万能型原子力砕氷船の建造を開始すること遅くとも2026年までに決定したた上で、2035年までの期間および2050年までの展望において必要な砕氷船隊の形成を確保する(全建設期間の建造費用の少なくとも50%を連邦予算から共同融資することを考慮に入れる)。

(f) 北方海路水域で実施される船舶の砕氷船護衛の料金の競争力を確保するための決定を採択する。北方海路水域において、必要に応じて、砕氷船団サービス費用の補助、およびその他の国家支援措置を規定する。夏から秋にかけてのトランジット航海を行う場合、砕氷船団サービスの料金を補助することを想定する。

(g) 北極横断輸送回廊の目標貨物輸送量を達成するため、北極海貨物船団の建造プログラムを策定する。その際に、国内造船所の能力と国内船舶部品設備の最大限の活用を想定し、国内造船企業による適時の供給の可能性がない場合には、必要に応じて当該船舶の建造および外国での購入・建造に対する国の支援を確保する。

(h) 2025年から、北極海横断輸送回廊の港湾水域で操業する国内浚渫船団の創設を確保し、必要であれば、港湾浚渫料金の経済的に正当な料金を確立するための国家支援措置の適用を規定する。

(i) 北極海横断輸送回廊の東部方面における通年航行への移行を確保するためのインフラ整備のための措置の実施時期と実施段階を決定し、必要な国家支援措置を提供する。

期限:2025年7月31日。

責任者:M.ミシュスチン、A.リハチョフ。


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2139

 戦争のどさくさに紛れて、すっかり見落としていたが、こちらのサイトに見るとおり、ロシア政府は2024年12月30日付の政府指令により、「2042年までの総合電源立地計画」を採択していたということである。

 それで、今般こちらの記事を目にし、ロシア極東の沿海地方に原発を建設しようとしているということを知り、その流れでくだんの電源立地計画について遅れ馳せながら認識した次第である。

 それで、電源立地計画によれば、ロシア極東では沿海地方だけでなく、ハバロフスク地方でも原発建設を予定しているということである。ロシアの中では日本から比較的近い位置関係なだけに、気になるところだ。なお、沿海地方ではウラジオストクから程近いフォキノ市に、ハバロフスク地方ではコムソモリスクナムーレから近いソルネチヌィ地区のエヴォロン村に建設する方向のようである。


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2138

 昨日、「第1四半期のロシア貿易、輸出の不振が際立つ」という話題をお届けしたが、主要部門の中では、化学品の輸出が例外的に拡大していた。それに関連し、こちらの記事が、肥料輸出が拡大しているということを伝えており、おそらく化学品の伸びはそれによるところが大きそうである。なお、昨日申し上げたとおり、目下ロシア税関は品目別の輸出動向は発表していないので、今回の記事の情報源となっているのはMetals & Mining Intelligenceという調査会社のレポートである。

 記事によると、ロシアの四半期別の肥料輸出量は、上図のように推移している。2025年第1四半期の輸出量は1,190万tで、前年同期比27%増であった。

 品目別に見ると、カリ肥料の輸出は380万t(12%増)、窒素肥料の尿素は150万t(36%減)、硝酸アンモニウムは34.6万t(39%減)、リン酸肥料は130万t(1%増)であった。最も輸出量が多いのは複合肥料だったが、具体的な量はMetals & Mining Intelligenceも示していない。

 ただし、業界関係者は、ルーブルの回復、増税、輸出割当、対ロシア制裁などの要因から、今後の輸出収益確保を決して楽観視していないという。


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95a

 こちらのページに見るとおり、ロシア税関が2025年第1四半期(1~3月期)の通関統計を発表したので、それを紹介する。ただし、日本を含む外国からはVPNを介さないとアクセスできない。また、既報のとおり、現在ロシア税関が発表している貿易統計は、1.大陸別の輸出入高、2.ごく大掴みな商品カテゴリー別の輸出入高という、簡単なものだけであり、たとえば「第1四半期にロシアが中国からどれだけ輸入したか」とか、「穀物をどれだけ輸出したか」といったデータは得られない。

 2025年第1四半期のロシアの貿易は、輸出が949億ドルで前年同期比6.8%減、輸入が631億ドルで前年同期比0.1%増であった。輸出の不振が際立っている。

 大陸別に見たのが、上表。輸出においては、すでに欧州からアジアへのシフトが一段落した感もあるが、それでもやはり東方シフトの流れは続いている。輸出はあらゆる大陸向けが減少しているが、アジアへの減少率が最も小さい。

 商品別の輸出入動向が、下表のとおり。輸出減の主因は鉱物製品の減少にあり、おそらくはトランプ再登板後の不透明感で石油価格が下落していることが効いているのだろう。トランプもたまには良いこともする?

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94

 こちらのページに見るとおり、ロシア政府は5月12日付の政府指令で、「ロシアの2036年までの造船業発展戦略および2050年までの見通し」を採択した。正確に言うと、2019年10月28日付で採択されていた2035年までの戦略というものがあり、それから「色々」あったので、その改訂を図ったものだろう。

 ロシアのこの種の政策文書には、数値目標が付き物であり、今回も付属文書の中から船舶の建造目標数の部分を抜き出して、上表のとおりお目にかける。日本語訳に自信がないので、元のロシア語も添えておく。なお、惰性、基礎、楽観の3種類のシナリオが示されているが、上表に示したのは基礎シナリオである。原典に示されているのは2025~2030年の合計建造数という分かりにくいものなので、当方が年平均に換算して示した。くだんの造船戦略は、軍需部門も射程に入れているはずだが、建造数の目標が開示されているのは民需だけであり、上表も民需に限られる。


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