ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

カテゴリ: ロシア

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 こちらの記事が伝えているとおり、3月18日にプーチンがトランプと電話会談する前に、プーチンはロシア産業家・企業家同盟の総会に出席し、その席でウクライナ戦争についても言及したということである。プーチンは、ロシアが達成したもの、すなわちクリミア、セヴァストーポリ市、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国、ザポロジエ州、ヘルソン州をロシアから奪うことはできず、それらがロシア連邦の領土であることを認めるべきだとした上で、もしその承認が近いうちになされるのであれば、ロシアはオデーサその他の現在ウクライナに属している地域を要求することはしない旨述べたということである。

 そもそも、オデーサをはじめ、ロシアが占領すらしていない地域に対し潜在的に権利を有するかのような発言がイカレているが、問題は今回のプーチン発言をどう捉えるかである。ロシアの報道振りでは、「オデーサまで攻め込むつもりはない」と、ロシアの「善意」を強調したものが目立つ。他方、反政府派のモスクワタイムズはむしろ、こちらの記事で、もしもウクライナ側が一連の占領地のロシアによる編入を飲まなければ、ロシアはオデーサにまで攻め入るというニュアンスで捉えている。

 私自身も、モスクワタイムズの受け止め方に近い。停戦の機運が出てきたとはいえ、現時点でウクライナのゼレンスキー大統領が占領地の全面的な割譲に応じるのはあまりにハードルが高く、ロシア側もそのことは見透かしているだろう。しかも、おそらくロシアは、ウクライナ東部・南部の4地域につき、実際に占領しているエリアだけでなく、ウクライナ側が保持できているエリアもロシアへの編入を要求し、わざと飲めないような厳しい条件を突き付けるのではないか。そうすると、「ウクライナが条件に応じないから停戦できない」と称し、あたかもロシア側にオデーサに攻め入る大義名分が生じたかのような立場をとるのではないか。ロシアとしては、万が一ウクライナ側が「4地域の編入を認める」と回答して来たらそれでよし、断ってきてもそれを理由にさらに攻撃を続けられるのでそれもよしということではないだろうか。

 もちろん、ロシアとしては今すぐに地上部隊をミコライウ州やオデーサ州にまわす余裕はないだろうし、ウクライナの攻撃で黒海艦隊の揚陸艦を失っていることからも、オデーサ攻略は難易度が高い。しかし、以下のようなことから考えて、プーチンがオデーサ州を諦めたとは、個人的に思えないのである。

  • オデーサ一帯はプーチンも尊敬する女帝エカテリーナ2世が獲得した領土で、その思い入れが強い。
  • オデーサは、言語的にはロシア語圏(現実には、だからといって、現地住民のロシアへの親近感が特に強いわけではないのだが…)。プーチンは2023年12月に「オデーサは完全にロシア人の街だ」と発言した。
  • 2014年にオデーサで親露派多数が労働組合会館で焼き殺された事件は、プーチンが主張している「ウクライナ=ネオナチ」のエビデンスとされており、ロシア側は同事件の首謀者を捕らえ裁くとしている。
  • ウクライナがオデーサの港を失い、内陸国になってしまえば、食料や鉄鋼・鉄鉱石の輸出もままならなくなり、ウクライナを経済的に弱体化させられる。
  • 逆にロシアは港と(日本人から見るとしょぼいが)ビーチを手に入れられる。
  • ウクライナが海への出口を失えば、ロシア黒海艦隊への脅威もなくなり、活動範囲を広げられる。
  • オデーサ一帯を支配できれば、ロシアはモルドバにも直接的に軍事的圧力を行使できる。

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 こちらの記事が、ロシアのITソリューション・サービスが成長していることを伝えている。

 記事によると、2024年のロシアにおけるITソリューション・サービスの売上高は、2023年比で46%増加し、4.5兆ルーブルとなった。これは、ロシア・デジタル発展省のM.シャダエフ大臣が下院で発表した報告書による。

 「これは非常に良好な数字だ。2024年については、我々にとって非常に重要な数字である国内ITソリューションの売上が、50%近く伸びている。我々が推進している仕組み、つまり国産ソフトウェアや機器の需要が効果的に機能していることを意味する」と大臣はコメントした。

 2024年末時点のロシアのIT企業の従業員数は99.2万人で、2023年より16%増加している。現在ロシアのGDPに占めるIT産業の割合は2.4%で、1年間で0.3ポイント増加した。


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 こちらの記事が、ロシア漁業の2024年の収益が顕著に悪化したことを伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 全ロシア漁業生産者協会によると、2024年に漁業と養殖業を含むロシアの水産企業の収入は、前年比1.8%増の6,640億ルーブルとなった。同年のインフレ率は9.52%なので、収入は実質では減少したことになる。

 過去15年間、漁業者の年間平均収入増加率は約11%で、2021年は31.%増、2022年は7.8%増、2023年は18.3%増だった(上掲グラフ参照)。収益の伸びが急激に鈍化したのは、外国による制裁、ロシアの政策金利の高さ、ルーブル安といった悪条件の結果である。

 カムチャッカ地方でカニの事業に従事するレーニン漁業場によると、収入の減少とコストの上昇という極めて不利な状況下での操業を迫られ、投資プログラムを実施せざるをえない状況である。投資割当プログラム(漁業割当は、加工工場や漁船を建設する投資家の義務に基づき、または競売により発給される)の価格はほぼ2倍になっており、高い金利にも苦しめられている。

 スケトウダラ漁業者協会(この魚種はロシアの漁獲量の40%以上を占める)もまた、2024年の減収を記録した。 この部門のルーブル収入総額は、約1,400億ルーブルで、ルーブル安にもかかわらず前年比5%減となった。ドルベースでは、輸出市場での価格下落により、前年比24%減となる。

 2桁のインフレと急激なルーブル安という同じような経済状況に見舞われたことは以前にもあり、2014~2015年がそうだったが、当時とは漁業の収益が根本的に異なっているという。2014~2015年に水産業の収入は倍増したという。2015年、ロシアの漁業セクターの輸出には制裁という障害がなかったためである。

 EUは2024年、ロシアからの白身魚(タラ、ハドック、パイクパーチなど)の輸入に13.7%の輸入関税を課した。この関税が課される以前は、EUが白身魚のフィレの主要市場であった。しかも、ロシア政府はルーブルの為替レートに連動した輸出関税を引き続き課している。

 ルーブル安により、2024年には輸入機器のスペアパーツの価格上昇を含め、船舶の修理費が割高になり、燃料費も上昇している。さらに、ロシアの加工業者や卸売業者は、出荷した魚介類に対する分割払いを求める傾向が強まっているという。

 2025年の第1四半期には、2022年から2024年にかけてのマイナス傾向がさらに強まると見られる。毎年、第1四半期と第2四半期にスケトウダラの主な輸出が行われ、足元のルーブル高は漁業企業のルーブル収入の減少につながると。


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 こちらの記事が、ロシアのアルミ大手「ルサール」の2024年経営実績について報じているので、以下要旨をまとめておく。

 ルサールによるアルミニウム地金販売量は2024年に386万tとなり、前年比7%低下した。これは2019年以来の低い数字である。棒、ワイヤー、ホイルといったアルミ鋼材の販売も140万tと、8%減だった。

 2024年の売上原価は92.6億ルーブルで、前年比11%減だった。販売のうち、ロシアおよびCIS市場が34%、アジア市場への販売が42%を占めた。

 2024年には、原料価格の不安定、需要の弱さ、高い金利に、制裁やサプライチェーン再構築の困難が重なった。EUは2023年12月にアルミ半製品の輸入を制限、米は2024年3月10日からロシア産アルミに200%の関税を導入、英はロシアからのアルミ輸入を全面禁止した。EUは2025年2月の第16次制裁パッケージでアルミ地金の対ロ輸入を禁止した。

 ルサール・グループのアルミ生産自体は390万tで、前年比4%増だった。中国工場買収により、アルミナの生産は25%ほど伸びて630万tとなった。ギニアでの生産能力拡張によりボーキサイトの生産は19%増の1,590万tとなった。

 2024年のルサールの純利益は2.8倍増の8億ドルとなった。売上高は1%減の120億ドルであった。アナリストによると、純利益の伸びは、完成品在庫が6億ドル以上増加したことによる製造コストの減少など、非現金支出項目によるところが大きかったという。


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 そんなわけで、本日14:30より東京において、北極域研究セミナー「サハ共和国が問いかけるロシア北極域経済の変動」を開催し、そこで私が「制裁下のサハ共和国ダイヤモンド産業の行方」という報告を行うことになっている。対面・リモートともお申し込みは当日でも間に合うと思うので、ご興味があったらぜひどうぞ。

 ダイヤモンドの報告に関連して、上掲のようなグラフを作成した。サハ共和国を拠点にロシアのダイヤモンド採掘をほぼ独占しているアルロサ社の、売上高と純利益を跡付けたものである。2024年に入りG7の制裁が段階的に実装されていったのに連れて、アルロサの経営は厳しくなってきている。こちらの報告およびこちらの記事によれば、2024年の売上高は2,391億ルーブルで前年比25.9%減、純利益は192億ルーブルで前年比77.4%減だった。2024年のダイヤモンド採掘は3,300万カラットで、前年比2%減だった。


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 ロシア・シベリアのクラスノヤルスク地方では、ノリリスクという街で、ノリリスクニッケル社によるニッケル、白金、パラジウムの採掘が行われている。そのノリリスクの近郊で、別会社により新たない白金・パラジウムの開発が始まろうとしているということなので、こちらの記事の概要を以下のとおり紹介しておく。

 タイムィルのチェルノゴルスク白金・パラジウム鉱床を開発している「ロシア・プラチナ」グループは、2026年に採掘・加工複合施設の第1段階を建設する予定である。同グループ傘下のチェルノゴルスク鉱山会社のA.バジャエフ社長との会談後、M.コチュコフ・クラスノヤルスク地方知事が明らかにした。

 知事はテレグラムチャンネルに、「最大級の白金・パラジウム鉱床であるチェルノゴルスクの開発が始まった。年間700万tの鉱石を処理する能力を持つ採掘・処理複合施設の第1段階の建設が進行中である。これは同社初の北極圏プロジェクトである。複合施設は2026年に稼働する予定」と記した。

 この複合施設の設備は友好国から供給される予定である。鉱石から金属を抽出するためには、特別な技術を適用する必要もある。そこで知事は、この会社を新しいナショナルプロジェクト「バイオエコノミー」に含めるべきだと提案したという。知事によると、第1段階で16万人の雇用が創出される予定である。知事はまた、第2ステージの枠組みの中で、ノリリスク1鉱床の開発が計画されていると述べた。このプロジェクトは2077年までの長大なものである。


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 ロシア統計局のこちらのページで、2月のロシア消費者物価が発表されたので、定番のグラフを更新してお目にかける。毎度のことながら、グラフがだいぶ横長になってきたので、クリック・タップして拡大表示していただければ幸い。

 なお、発表されたインフレ率の数字以上に気になるのは、ロシア統計局のサイト閲覧に、ヤンデックス・ブラウザの利用が半ば義務付けられるようになったことである。もしかしたらこの動きが今後ほかのロシアの公的機関にも広がっていくかもしれない。

 さて、2月のロシア消費者物価は、前月比0.81%増、前年同月比10.06%増だった。年間インフレ率がついに10%の大台に乗ったというのが、今回最大のトピックであろう。

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 こちらの記事で、2人の有識者が米国による対ロシア制裁解除の可能性についてコメントしている。そのうち、モスクワ国立大のA.シドロフ氏の発言要旨を、以下のとおりまとめておく。

 たとえ双方が望んだとしても、制裁をすぐに解除することはできない。というのも、制裁の解除と発動は、複雑で多段階のメカニズムに支配されており、米大統領は本人の意向にかかわりなくそれに従わなければならないからだ。

 このメカニズムは、特別軍事作戦が始まるより前の2017年8月に採択された法律に規定されている。同法では、ロシアはイランと北朝鮮と同列に扱われているため、純粋に法的な理由から、イランと北朝鮮に対する制裁を有効なままにして、ロシアに特別な例外を設けることはできない。今日の連邦議会においても、共和党議員の中に親ウクライナ派がいるため、この法律を廃止するにはまだ票数が足りない。

 米財務省のような個々の機関のレベルで課される制裁は、いくぶん簡単かもしれない。同省は大統領直属であるため、トランプ大統領は理論上、ロシアの特定の企業や個人に対する特定の制限措置の解除を命じることができる。たとえば、ロシアの企業や個人が、当初いわゆるSDN(特別指定国民)の対象になった理由や根拠が消滅した場合だ。

 しかし、これは主に心理的な効果であり、現実にはほとんど影響を与えないだろう。というのも、貿易・経済制限措置の大部分を占める分野別制裁を解除する方法ではないからだ。問題は、米国が国家安全保障に脅威をもたらすとレッテルを貼っている国家(ロシア、中国など)に制裁を課していることだ。米国の国家安全保障戦略(NSS)は数年ごとに改訂される。ちなみに、トランプ大統領の1期目に採択された前回のNSSは、ちょうど2025年に期限切れとなる。米国の制裁解除プロセスを開始できるかどうかは、新NSSにおけるロシアの位置づけがどのように定義されるかにかかっている。


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 こちらの記事で、在ロシア米国商工会議所のロバート・エイジー会頭が、米露経済関係に関するインタビューに応じている。気になった発言内容を以下のとおりまとめておく。

  • ロシア市場から撤退した米企業が150社、ロシア側に買収された米企業が50社、操業を続けている米企業が150社くらい。
  • 商工会議所では、情勢にもかかわらず、すべての委員会が活動を続けている。2024年だけで企業との面談を200以上こなし、ロシア側の省庁とも問題の解決のため折衝を重ねている。
  • 現在、米政府に提出するための報告書を作成中。過去3年間、どんな制裁措置により、米企業がどんな問題に直面したかをまとめている。具体的には、米政府に以下のような4点の要望を働きかけたい。
  • 第1に、我々は航空分野における制裁の解除を求めている。これはスペアパーツの供給と航空機のメンテナンスに適用される。これは商業上の要望というよりは、人道的な必要性である。我々は、仏露商工会議所と航空安全に関して連携しており、共同で「2大陸イニシアティブ」を立ち上げ、現在この問題についての共同見解を形成しているところ。
  • 第2に、米企業に対する対ロシア投資の解禁である。多くの企業がロシアでの事業拡大や生産拡大に投資する用意があるが、この禁止措置が非常に足かせとなっている。
  • 第3に、国境を越えた決済の問題を解決するために、ロシアの銀行に対する制裁を解除することである。これによって、米企業もロシア企業も、そしてその他の企業も、ビジネスを行うためのコストを即座に削減することができる。現在の制限のせいで、ビジネスを行うためのコストは数倍になっている。
  • 第4に、化粧品を含む贅沢品の供給制限の解除である。これは奇妙な制裁であり、多くの企業がこの分野での市場シェアを失うことになった。
  • ロシアの諸銀行のSWIFT復帰に関しては、実現すれば米企業にとっても有難い。ただ、すぐには実現するまい。
  • 在露米企業がOFACから許可を得なければならない場面は多い。2024年、我々は米政府を説得し、ロシアに医療機器を供給する際の許可取得の義務を廃止することに成功した。しかし、医療機器や医薬品に関連する特定の汎用品のライセンスについては、まだ問題が残っている。これは人々の健康に関わる問題であり、人道的な問題である。
  • 企業には業種というものがあり、ロシア市場への復帰のスキームはそれにより異なる。まず、買い戻しオプションがあり、日用消費財などでは、ロシア市場復帰後すぐに事業を再開できる。これらの企業は、撤退企業全体の10%から20%である。これらの企業は主に、侵攻最初の年に事業を停止し、最長5年間の買戻しオプション付きでロシアでの事業を売却した企業である。ただ、そのために必要なのは紛争の和平協定の成立であり、それが結ばれればコールオプションを有する企業はロシア復帰を真剣に検討するだろう。
  • 第2に、撤退と称し、実は休眠していた企業がある。事務所と数名の職員を残し、ライセンスもそのままというパターン。工場を残し、職員に給与を払い続けていたような会社もここに含まれる。こうした企業は事業再開の難易度がずっと低い。
  • しかし、突然すべての資産を売却し、感情的になって去った企業にとっては、復帰は難しい。すべては状況次第だ。しかし、復帰希望者が殺到しているとは言えない。いくつかの企業は関心を持ち、弁護士も電話をかけてきている。私の予想では、2024年はこうした企業の復帰は4~5社くらいではないか。日用消費財の企業になるだろう。
  • ロシアには膨大な数の西側航空機があり、ほとんどがボーイング社製だ。我々は、これらの航空機にスペアパーツと技術サポートを提供する必要があると考えている。ロシアの純国産航空機はまだ存在しない。スホーイがニッチな分野を占めようとしているが、ボーイングはボーイングだ。ボーイングに取って代わるには、どれだけの時間と労力がかかるか分からない。
  • 別の例では、シスコ・システムズは何百万ページものコードと20~30年にわたる仕事をしている。だから、多くの企業の挑戦にもかかわらず、取って代わるのはそう簡単ではない。中国人は何でも上手にコピーできるが、それでも彼らでさえ問題を抱えている。

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2101

 2年半前に私が札幌に移住してきた時は、まだ北海道新幹線の札幌延伸は2030年度の予定と言われていた。それが、現在では2038年度とされ、さらに遅れてもおかしくなく、自分が現役でいるうちに東京~札幌間の行き来に利用できる可能性は絶望的だ。想定されている札幌駅の新幹線乗り場が我が家から結構近く、楽しみにしていたのだが、残念至極である。

 それに対し、ロシア初の高速鉄道であるモスクワ~サンクトペテルブルグ線は、2028年の開業が予定されている。トンネルだらけの北海道新幹線と、もっぱら平原を行くロシア版新幹線では、工事の難しさが段違いとはいえ、もし本当に2028年にモスクワ~ペテルブルグ新幹線が開業したら、国としての勢いの差を感じることになるかもしれない。

 さて、前置きが長くなったが、タス通信のこちらのページで、そのモスクワ~ペテルブルグ新幹線に関する図解資料が出ていたので、正直とりたてて目新しい情報は含まれていないが、上掲のとおり拝見することにする。2つの「首都」を鉄道で行き来すると、現状では4時間かかるところ、それが2時間15分に短縮されるということである。トヴェリ、ヴェリーキーノヴゴロドという大都市を経由する。


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20250317

 ご紹介がすっかり遅くなってしまいましたが、3月17日に東京に出向いて、TKP東京駅カンファレンスセンターにて、北極域研究セミナー「サハ共和国が問いかけるロシア北極域経済の変動」を開催し、その中で私は「制裁下のサハ共和国ダイヤモンド産業の行方」という報告を行います。お近くの方はぜひ対面でご参加いただければ幸いですし、リモートでの参加も可能です。対面・リモートとも事前申し込みが必要となります。

 ちなみに、今月、田畑伸一郎(編著)『ロシア北極域経済の変動 ― サハ共和国の資源・環境・社会(スラブ・ユーラシア叢書 17)』(北海道大学出版会)という新刊が出ることになっており、今回のセミナーはその発行記念イベントということになります。


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 今般ロシアのM.オレーシキン大統領府副長官がベラルーシを訪問し、最高権力者のA.ルカシェンコと会談したということである。その中でロシア側はいくつか具体的なベラルーシへの投資プロジェクトを提案したようだ。オレーシキンはプーチンのお気に入りなどとも言われているので、これはプーチン政権としての正式な提案ということになろう。

 まず、こちらに見るように、ベラルーシにデータセンターを建設することを提案した。ベラルーシ原発が稼働したので、その電力の有効活用という意味合いだろう。記事によるとオレーシキンは、「ミンスク州とオルシャ市にロジスティクス・センターを計画しているが、それだけでなく、我々はベラルーシに大規模なデータ処理センターを建設する可能性を検討している。使用可能な電力容量がある。データ経済における協力の可能な分野としては、デジタル・プラットフォームや標準の作成と導入、原子力発電を利用したデータセンターの建設、人工知能分野における共同研究センターの設立、法律の調和などが挙げられる。ここで、両国はまだやることがあるように思える。科学的な分野、訓練や研究において、私たちはもっと緊密に交流する必要がある。もっと積極的に前進する必要がある」と発言した。

 もう一つ、こちらによると、(軍事用なのか民生用なのかは不明だが)無人機の生産工場をベラルーシに建設することも提案した。こちらは、ベラルーシでは高度人材を得やすいという判断なのか、はたまたロシア本土と違いベラルーシに工場があればウクライナの攻撃を受けにくいという判断なのか。記事によるとオレーシキンは、「基本的な提案は、年間10万台の無人機を生産できる工場を1年以内に建設するというものだ。これがロシア側の提案だ。現在、我々はパラメータについて議論しており、今後合意する予定だ。ベラルーシは、国の経済と安全保障を真に主権的なものにするために、独自の生産設備を持つべきだ。我々は、ロシアで利用可能な技術開発やソリューションを利用することについて話している。そして、共通の技術プラットフォームを使用することで、経済効率を確保することができる」と発言した。


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 このほど発行された『比較経済研究』第62巻第1号に、拙稿「ロシアのウクライナ侵攻を受け中欧班列に生じた異変」が掲載されています。昨年の比較経済体制学会での報告を論文にしたものです。こちらからPDF版をお読みになれますので、ぜひご利用ください。


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 日本からはVPNを介さないとアクセスできないが、ロシア連邦税関庁がこのほど2024年のごくごく大掴みな貿易統計を発表したので、紹介してみたい。

 現在、税関局が普通にホームページなどで開示しているのは、1.大陸別の輸出入高、2.大分類(食品、鉱物、機械といったレベル)の商品別輸出入高、という2種類のデータだけである。当ブログで何度か触れたように、実は紙の通関統計集ではもっと詳しいデータを見ることができるのだが、それは一部の購読者だけが入手でき、しかも出るのがだいぶ遅い。とりあえずは今回の簡易データで我慢するしかない。当ブログでは差し当たり、上掲のとおり、輸出入の大陸別内訳をグラフにしてお目にかける。

 2024年のロシアの商品輸出総額は4,339億ドルで前年比2.0%増、輸入総額は2,830億ドルで前年比0.8%減であった。

 ロシアでは、「東方シフト」と称し、国の対外関係の軸足を欧州からアジアへと移している。2024年の貿易統計も一応はそれに沿っており、欧州との貿易は輸出が20.4%減で輸入が6.9%減、アジアとの貿易は輸出が7.6%増で輸入が1.9%増となっている。ただ、さすがにそのプロセスも一段落した感もあり、2022~2023年と比べると、2024年にはそれほど劇的な変動ではなかった。


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 こちらのページで、しばらく前に1月のロシアの消費者物価が発表されていたのだが、最近ロシア統計局のサイトが(VPN云々は関係なく)アクセスが困難になっていたりして、何となく紹介しそびれていた。とはいえ、他に手頃なブログネタもないので、遅れ馳せながら、いつものグラフを更新してお目にかける。なお、このグラフは2022年2月の全面軍事侵攻以降の動きを見るのが目的なので、だいぶ横に長くなってきた。そのままでは見づらいと思うので、よかったらクリック・タップして拡大しご利用いただければ幸い。

 前置きが長くなったが、2025年1月のロシアの消費者物価は、前月比1.23%増、前年同月比9.92%増だった。相変わらずインフレ率は高い。

 下の図は、物価のカテゴリー別に、戦争後の物価の動きを示したものである。1月は食品に加えて、サービスがかなり値上がりしたが、特に住宅分野での値上げが目立ったようである。

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 少々風変わりな話題だが、こちらの記事が、ロシア語圏のネットで使われるヤンデックス・ブラウザで翻訳される動画の言語について伝えている。

 私は使っていないから知らないのだが、記事によると、ヤンデックス・ブラウザには、ニューラルネットワークという技術を使って、Bilibili、YouTube、Coursera、VK Видео、Rutube、Дзенで流れる外国語の動画をロシア語に翻訳してくれる機能があるらしい。記事によれば、翻訳される元の言語としてはやはり英語がトップだが、それ以外の言語として、2025年1月に中国語がトップになったということである。中国語は非英語言語で27.6%のシェアを占め、1年前から7.2%ポイント増となった。1年前はスペイン語が非英語言語でトップだったが、1年間で7.3%ポイント低下し、シェア22.7%となった。中国語・日本語・韓国語という東アジア系3言語で48.6%を占めており、1年間で5.6%ポイント増加した。


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 EUはこのほど発表した第16次対ロシア制裁パッケージの一環として、ロシア産アルミニウムに対する制裁を取り決めた。こちらの記事によると、12ヵ月間で27.5万tという輸入割当を導入したものであり、これはEUが2024年にロシアから輸入した量の80%に相当するということである。

 この措置の影響に関し、こちらの記事の中で、ロシアの専門家2名がコメントしている。まず、A.アリエフ氏。EUが2024年にロシアから輸入したアルミニウム地金は34万tで、前年比34%減であった。この数量はルサールの総販売量の約8~9%に相当する。長期的には、金属需要が毎年2~5%増加し、品薄が予想される中国を含むアジア市場に振り向けることが可能。ただ、短期的には、販売市場の再編はルサールにとってコスト増に繋がるかもしれない。アリエフ氏はこうした見方を示した。

 次に、M.フダロフ氏。ロシアからEUへのアルミニウム輸出量は、2024年は34万tだったが、数年前には100万tを超えていた。34万tはわずかな量で、他の市場に振り向けることは充分に可能。リスクにさらされる量が多くないため、今回の規制に対する市場の反応はないだろう。欧州勢は、気候変動への懸念が依然として存在する中で、炭素の観点で最もクリーンな金属を市場から排除することで、偽善者の正体をさらすことになる。フダロフ氏はこのように述べた。


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 先日、「2024年に北極海航路は好調だったとの報告」との話題をお伝えしたが、もっと良い情報を見付けたので、追加でお届けする。こちらの記事には、上掲のように、2011年から2024年までの北極海航路の貨物輸送量の推移を示した有難い表が掲載されている。表の左の列が総量、真ん中の列がロシアの北極海港湾を利用した輸送、右の列がトランジット(つまりロシアの北極海港湾での積み下ろしが目的でないアジア⇔ヨーロッパ間の輸送)を示している。もしかしたら割とありふれたデータなのかもしれないが、個人的にこういう網羅的なデータは始めて見たので、取り上げた次第。


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 こちらの記事がロシアのリチウム資源について伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 ロシア天然資源省によれば、ロシアにはリチウムの大規模な原料基盤があり、国内の酸化リチウムの埋蔵量は約350万tで、これは国内経済のニーズを満たすのに充分な量だという。

 同省によると、現在ロシアでリチウムが採掘されているのは、スヴェルドロフスク州のマリシェフスコエ鉱床にあるマリインスキー鉱山の1社である。2023年には27tのリチウムが採掘された。

 さらに、ムルマンスク州のポルモストロフスコエ(アークティック・リチウム社が開発中)とコルモゼルスコエ(ノリリスクニッケルとロスアトムの合弁ポーラー・リチウム社が開発中)の2つの鉱床でのリチウム生産が段階的に拡大し、2030年にフル稼働に達する予定である。ポルモストロフスコエ鉱床では、2025年にリチウム濃縮のためのスポジュメン鉱石の試験採掘を開始する予定。この期間中に、100万tの鉱石(1万2,400tの酸化リチウム、平均酸化リチウム含有率1.24%)が採掘される。一方、ポーラー・リチウム社は、2028年までに最初の製品を生産し、2031年までに採掘・加工工場の建設と試運転を完了する予定。

 ロシア天然資源省は、リチウムのような経済にとって戦略的な原材料の採掘と加工のための強力な生産施設をできるだけ早く立ち上げることが重要であると指摘した。同省は、この課題に積極的に取り組んでいることを強調した。レアメタルの採掘税は10分の1に引き下げられ、支払い開始の方法は更新され、ロシア大統領の個別指示により希少原料の支払い開始を引き下げるメカニズムが法制化された。リチウムは、2050年までのロシア連邦の鉱物資源基盤開発戦略の優先希少金属の一つであるという。

 以前、プーチン大統領は、ロシアは自力でリチウムを生産すべきであり、そのためのすべての能力を持っている、10~15年前にリチウム生産を開始して然るべきだった、と述べたことがある。


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 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターでは、2月14日、17日の2日に分けて、特別連続セミナー「2.24から3年を経たスラブ・ユーラシア世界」を開催しました。私は「ロシア・ウクライナ経済のレジリエンス」という報告を行いました。なお、6本すべての講演動画が、こちらでアーカイブ視聴できますので、ぜひご利用ください。

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 当ブログではこれまで、ロシアの自然独占問題研究所というところの資料に基づきロシアの港湾における取扱貨物量の動向を取り上げてきたのだが、今回はどうも2024年通年のデータが出るのが遅い。もしかしたら、情報開示・発信の方針が変わったのかもしれない。ただ、2024年のロシア港湾貨物量自体は、ロシア港湾協会のこちらのページに出ていたので、以下でそれをまとめておく。

  • 2024年のロシアの港湾における取扱貨物量は8億8,630万tで、前年比2.3%減少した。
  • ドライカーゴは4億4,110万t(▲1.9%)、うち石炭は1億8,810万t(▲9.8%)、穀物は7,480万t(+6.0%)、コンテナ貨物は5,550万t(+10.8%)、肥料は4,250万t(+15.7%)、鉄鋼は1,900万t(▲10.8%)、鉱石は1,230万t(+26.3%)だった。
  • 液体貨物は4億4,520万t(▲2.6%)、うち原油は2億6,750万t(▲1.7%)、石油製品は1億3,110万t(▲7.1%)、液化ガスは3,630万t(+5.9%)、液体の食品は640万t(+14.0%)だった。
  • 貨物のカテゴリー別では、輸出が6億9,970万t(▲1.9%)、輸入が4,290万t(+11.0%)、トランジットが6,490万t(▲0.5%)、内貿が7,870万t(▲12.1%)だった。(毎度申し上げるとおり、このように重量ベースでは輸出貨物が圧倒的に多いのがロシアの港の特徴)
  • 海域別では、黒海が2億7,570万t(▲5.4%)、バルト海が2億7,300万t(+0.6%)、極東が2億3,650万t(▲2.3%)、北極海が9,290万t(▲5.2%)、カスピ海が810万t(+4.9%)だった。

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 私が以前編集長を務め、今も寄稿を続ける『ロシアNIS調査月報』の2025年3月号のご案内。3月号は、「ロシア・NISビジネスとROTOBOの活動」と題する特集号となっております。詳しい内容とお問い合わせ・お申し込みはこちらまで。

 服部個人は今号では、いずれも特集の枠外ですが、「軍需以外は停滞感が出てきたロシアの鉱工業生産」、「独自航路で活路を開いたウクライナの海運」を執筆しています。


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 ブルームバーグのこちらの記事が、G7がロシアの石油輸出に対する価格上限制をより厳しくすることを検討していると報じている。上掲図も同記事から拝借したもの。

 記事によると、G7はロシアの戦費を削ぐため、共同で価格上限制をより厳しくすることを検討している。ブルームバーグが入手した声明文の草案によると、G7は各財務相に対し、現在1バレル60ドルとなっているロシア原油価格の上限を、一斉に引き下げ直すよう指示する可能性があるという。

 現段階では、すべてのG7諸国がこの文書をどの程度支持しているかは不明であり、交渉を続ける中で修正される可能性が高い。

 2022年12月に石油価格の上限が導入された当初は、ロシアにとって回避が容易であり、ロシア国内の石油と燃料の流れを維持することを主目的としているとして、大きな批判を浴びた。その認識は今年1月、退任するバイデン政権が161隻のタンカー、ロシアの大手石油生産者2社、トレーダー数社、そして国内のタンカーの主要な保険会社を制裁指定したことで変わった。スコット・ベッセント新財務長官は、そうすることでウクライナ紛争の解決を早めることができるとワシントンが考えるなら、対策を強化すると話している。

 G7は、ロシアによるウクライナ侵攻から3年となる2月24日に声明を発表することを目指している。


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 こちらの記事が、経済発展省のデータにもとづき、ロシアにおける旅行者数の増大について伝えているので、以下抄訳しておく。

 2024年のロシアにおける観光旅行者数は、外国人観光客数を含め、10%以上増加した。M.レシェトニコフ経済発展大臣が省の理事会で発表した。

 大臣は「我が省は、業界、上院議員、地域と良い相乗効果を生み出してきた。2024年の観光客数は10%以上増加し、そのうち外国人観光客は35%増加した。これは、大統領によって支持された電子ビザ、団体ビザなし渡航に関する決定の直接的な結果だ」と語った。

 経済発展省によると、チェチェン共和国、トゥヴァ州、ウリヤノフスク州、リャザン州は、観光客の増加率において35%以上の増加を示し、増加率という観点で上位であった。客数の上位は、ホテル宿泊者数が前年比7.6%増の1,210万人となったモスクワ市と、14.4%増の1,000万人となったクラスノダル地方が引き続きトップである。第3位はサンクトペテルブルグ市で、23.2%増の640万人の観光客が訪れた。


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 2023~2024年のロシアにおけるブランド別の乗用車販売を示した上表を見ると、中国系ブランドばかりがずらりと並んでおり、壮観である。1位のLadaこそロシア地場メーカーであるAvtoVAZのブランドだが、他は全部中国系と言って差し支えない。2024年のロシア市場における中国ブランド車の比率は、約6割に上ったということだ。初めて知ったが、10位のTankというのも中国Great Wall Motorのオフロード車サブブランドということである。中国メーカーはサブブランドが多く、覚えるのが大変だ。

 さて、問題は9位のBelgeeなのだが、これは中国のGeelyとベラルーシがミンスク郊外に建設した合弁工場である。同合弁は、当初はGeelyブランド車のみを生産していたが、2023年からは独自のBelgeeブランド車の生産も開始され、2024年の生産内訳はBelgeeが約6万台、Geelyが約3万台となった。2024年に生産された9万台のうち、ベラルーシ国内で販売されたのは2.5万台で、残りはすべてロシアに輸出されたということである。ということは、2024年にロシア市場で売られた15万台弱のGeely車のうち、2万台程度がベラルーシ産であり、残り13万台程度がおそらく中国からの輸入といったところだろうか。Belgeeブランド車に関しては、中国車とはカウントしないのが正解なのだろう。


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 昨日に引き続き、私が把握しているデータと、A.ノヴァク副首相が発表したデータを突き合わせ、ロシア・エネルギー部門の数年間にわたる動向を跡付けてみたい。今日は天然ガスを取り上げる。いわずもがなだが、上図では、生産のグラフと、輸出のグラフでスケールが異なるので、その点だけご注意願いたい。最初はスケールを合わせて作図しようと思ったのだが、そうすると輸出の部分が矮小になりすぎて何だか分からないグラフになってしまうので。逆に言うと、ロシアの天然ガス輸出比率は意外と低いということも言えそうである。

 ウクライナ侵攻後、欧州向けが壊滅し、生産およびパイプライン輸出ともに落ち込んできたロシアの天然ガス部門ながら、上図に見るとおり、2024年には一定の回復を示した。おそらく、生産は前年比7%増、パイプライン輸出は18%増となったと見られる。

 それを支えたのは中国向け輸出であり、「シベリアの力」を通じた対中輸出は、2023年の227億立米から、2024年には310億立米程度に高まったと見られる。年間契約量が300億立米だったから、それを超過達成した。もっとも、2024年には欧州向けも若干回復した模様である。

 ロシアとしては、長期的にパイプラインからLNGにシフトし、2030年頃までに差し当たり50:50にするのが目標である。しかし、既存のサハリン2、ヤマルLNGこそフル稼働しているものの、それに続く存在だったアルクLNG2が米制裁の対象になり、LNG部門の一層の拡大は暗礁に乗り上げた格好である。


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 昨日お伝えしたとおり、ロシアのA.ノヴァク副首相が2024年のエネルギー関連指標を公表したのだが、2024年の数字だけだと好不調が分からないので、上図のとおり、まずは石油の数字を数年分のグラフにしてみた。

 まず、原油の生産は5億1,600万tということだったが、私の把握しているデータによれば、これは前年比3%ほどの減ということになるはずである。原油の輸出量は2億4,000万tで、これは前年比1%増になるはずである。

 問題は石油製品の輸出なのだが、ノヴァク副首相は今回その数字を挙げなかった。ただ、ロイターのこちらの記事で、2024年のロシアの石油製品輸出が不振だったことが伝えられている。ロシアは、近隣諸国に陸路で石油製品を輸出するパターンもあるが、大部分は海路での輸出になるはずである。ロイターによると、2024年のタンカーによる石油製品輸出は前年から9.1%低下し1億1,370万tとなったということである。陸路の分が不明ではあるが、まあだいたいトータルで9%くらい低下したのかなと判断し、上図ではその推計にもとづき2024年の石油製品輸出の数字を補っている。原油の生産・輸出はほぼ想定どおりだったが、製品の輸出がだいぶ下ブレしたということだろう。


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 それにしても、ロシアという国で不思議なのは、公式統計で国家機密とされているデータが、わりとあっさり手に入ることである。そのあたりがどうも徹底していないのだ。石油・ガスなどに関しては、ウクライナ侵攻後、生産量も輸出量も統計が発表されなくなったのに、なぜかエネルギー担当のA.ノヴァク副首相がそのデータを堂々と列挙するという、謎現象が見られる。

 そんなわけで、今般、ノヴァク副首相がこちらの論考で2024年の各種のエネルギー関連指標を列挙しているので、主な点を以下箇条書きでまとめておく。

  • エネルギー産業はロシアのGDPの約20%を占める。
  • 2024年の原油の生産量は5億1,600万t、輸出量は2億4,000万tだった。
  • 2024年の製油所における原油の処理量は2億6,650万tだった。得率は前年を上回り84.4%となった。ガソリンの生産は4,110万tに、軽油の生産は8,160万tに拡大した。
  • 天然ガスの採掘は6,850億立米で、前年比7.6%拡大した。パイプラインガスの輸出は1,190億立米で前年比15.6%増、LNG輸出は472億立米相当で4%増だった。
  • 「シベリアの力」を通じた中国へのガス輸出は、12月1日から、契約にうたわれている最大量である年間380億立米を満たす水準に高まった。結果、2024年の中国向け輸出実績は契約量を超えた。極東ルートのパイプライン建設も進んでおり、2027年稼働予定。
  • 2024年の石炭の生産量は4億4,350万t、輸出は1億9,620万t、国内供給は1億7,800万tだった。
  • 2024年の発電力は1兆1,983億kWhで、前年比2.9%拡大した。2024年には1.7GWの発電能力が新規稼働した。

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 こちらのページに見るとおり、ロシア統計局が2024年のロシアGDPの速報値を発表したので、拝見してみることにしよう。ただし、統計局のページは、たとえVPNを介してもアクセスしづらくなっており、根性で閲覧する他ない。

 統計局によると、2024年のロシアの実質GDP成長率は4.1%だった。なお、いつの間にか2023年の数字も改定されたようで、くしくも2023年も同じ4.1%成長に修正されたようだ。

 上図は、主な生産部門別に、2024年の生産増減を見たものである。先日の鉱工業統計の際にも触れたが、軍需景気で製造業が伸びる一方、鉱業が沈んでいることが、GDP統計からも確認できる。今回特に目を引いたのは、農林水産業の落ち込みが大きかったことで、これは天候不順等による穀物収穫の低下と関係していよう。

 もう一つ目立つのは、2023年には9.5%も伸びていた建設が、2024年には1.7%増へと減速したことで、これは以前もお伝えした国の支援による優遇ローンの打ち切りで新築住宅ブームが一段落したことに起因しているはずである。

 2024年に伸びがきわめて大きかったのは、金融・保険、情報・通信、ホテル・外食などの新興サービス系であり、2023年から引き続く成長であることから、今のロシアで成長産業になっていると考えてよさそうである。たとえば、こちらの記事に見るように、2024年のロシア国内旅行者は前年から25%ほど伸びたということであり、外国旅行に行きにくくなった影響もあってか、国内観光業が栄えているようである。

 一方、保険に関しては、もしかしてだが、影の船団による石油輸出にロシアが独自に付保していることで、事業が拡大しているとか、何らかの特殊事情があるかもしれない。


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 今般ロシア統計局から2024年の鉱工業生産統計が発表されたので、主な産業部門に絞り、過去3年間の生産動向を上図のとおりグラフにしてみた。

 2024年のロシアの鉱工業生産は、前年比4.6%拡大した。前年の4.3%増よりも、さらに加速している。しかし、全体が好調というわけではなく、かなりまだら模様である。

 ロシアの本来の基幹産業である鉱業は、2023年の1.0%減に続き、2024年も0.9%減を記録した。

 伸びが大きいのは製造業であり、2023年の8.7%増よりはやや減速したが、2024年も8.5%増と成長を続けた。しかし、今回は割愛するが、それを牽引しているのは軍需産業である。その他の主要部門では、石油精製等、冶金、機械・設備など、2024年に落ち込みを記録している部門もある。


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