
昨日述べたように、ロシア旅行に何冊かの新書を持って行った(そしてそれがアダになった)のだが、その中で恒川惠市『新興国は世界を変えるか ―29ヵ国の経済・民主化・軍事行動』(2023年、中公新書)は以前から大事だとは認識しチラホラ眺めてはいたものの、読破できていない一冊だった。今回、ようやく読むことができた。Amazonに出ていた紹介文は以下のとおり。
21世紀以降、ますます存在感を強めている「新興国」。特にブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国は「BRICS」と呼ばれ、リーマンショック後の世界不況を立て直す牽引役として期待された。一方、中国は海洋進出を進め、ロシアはウクライナに軍事侵攻を行う。力をつけた新興国は世界にどのような影響を与え、どこへ向かうのか? 本書は29ヵ国を新興国と特定し、経済成長、政治体制、軍事行動を分析する。
さて、この『新興国は世界を変えるか』には画期的な点がいくつかある。最大の点は、「新興国」に該当する国の基準を示していることである。具体的には、1990~2015年の経済成長率が米国のそれよりも高く、なおかつ2015年段階のGDPの大きさが米国の1%以上であった国というのが、その基準となっている。ただし、ロシアはソ連崩壊後の経済落ち込みが大きかったので前者の基準を満たさず、バングラデシュとベトナムは後者の基準をわずかに満たさないものの、これら3国については事情を考慮し追加されている。
その結果、「新興国」に該当するのは、本書のサブタイトルにもあるとおり、29ヵ国ということになっている。私の研究対象である旧ソ連・東欧圏では、ポーランド、ロシア、カザフスタンが名を連ねている。逆に言うと、ウクライナは元々の経済・人口規模がソ連第2の存在だったにもかかわらず、独立後の低迷で、「新興国」の仲間入りはできていなかったという結論になる。
本書で、個人的に「すごい」と思ったのは、タイトルにある『新興国は世界を変えるか』という問いに、著者が真摯に回答を示していることである。普通、「●●は世界を変えるか?」といったタイトルは、風呂敷を大きく広げて見せる時の常套句であり、必ずしもその問題に真面目に答えを示そうとはしないものだろう。こうした壮大な問いに、奇をてらわず、冷静に答えようとする姿勢に、知識人としての誠実さを感じた。
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