ロシアの政治工学センターのA.マカルキン第一副所長が5月3日付の『エジェドネーヴヌィ・ジュルナール』に寄せた論考が、こちらのサイトに掲載されているので、重要部分だけ以下のとおり抄訳しておく。

 メドヴェージェフは非力ではあったが、自分の力の範囲内で、国の優先的な発展課題を見直そうと努力した。また、それなしでは脱工業化的な発展が不可能であるダイナミックな社会層に対する政権側の態度を、変えようとした。「スコルコヴォ」はすでに笑い話の対象になっているが、こうしたイノベーションセンターを作るという構想自体は有意義なものだった(すでに入居者のいるシベリアのハイテクセンターの一つを指定した方が賢明だったというのは、別の議論である)。国際的な経験を部分的に考慮した反腐敗法もいくつか採択された。及び腰ではあったが、国家が経済に君臨することを拒絶しようという試みもなされた。

 しかし、現在、すべてが反転している。シベリアおよび極東開発のための新たな国家コーポレーションが創設されようとしており、これがその他の国営主体よりも効率的になるとは思えない。I.セーチンをはじめとする有力者たちが、反民営化の強固な同盟を組んでいる。メドヴェージェフは新たな現実への適応を余儀なくされ、自らを保守派と宣言し、プーチンと一心同体であるということを誇示しているが、そうしなければ首相のポストは得られないからである。しかし、タンデム体制が垂直的な権力構造に取って代わられようとしている現在、こうした首相の値打ちは大幅に下がることになる。むろん、今後のロシア政治が反動一色ということにはならないだろうが、それが近代化路線になることはなく、むしろ「一歩前進、一歩後退」といった形で進んでいくと思われ、現代社会において効果的な発展を遂げるためには甚だ不充分である。

 しかも、プーチンは工業社会の人間である。プーチンにとっては、たとえ軍が購入を拒否するような時代遅れの製品を生産していても、労働者は尊い勤労者なのである。逆に、ウェブデザイナーや銀行のアナリストなどのことは、理解できない。プーチンは、伝統的な支持層からの支持を確保するために、ソ連的な時代遅れの手法に、西側のポピュリズムを折衷した方法に訴えた(ソ連共産党の幹部はビアホールに出かけるわけには行かなかったので)。ただ、公務員や労働者を動員した大集会は全国民的支持の効果を確かに発揮したものの、それは一過性のもので、経済次第で変わっていく。政権が支持層の家父長主義的な要求に応えられないと、政権への忠誠は急激に低下していく。カオスへの恐怖にもとづく保守的な動員は、選挙を勝つのには役立っても、国の現代的な発展を可能にしてくれるわけではない。これがロシア社会に立ちふさがる最大の問題であり、政権がそれへの適切な答えを出すのはきわめて困難だろう。

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