3~4月は1年間取り組んできた調査・研究の成果をアウトプットする時期なので、このところ新規のニュースのフォローがなかなか行き届いていなかったのだけれど、仕事的にはアウトプット作業も一段落したので、またロシア・ウクライナ・ベラルーシ情勢の日常的なフォローを強化していきたい。ちょうど、今は同諸国も連休シーズンで、新聞も休刊の日があったりするので、このタイミングを利用し、ちょっと遡ってこの間の動きなどを取り上げてみたい。
4月24日、ロシアで国家評議会の拡大会議が開催され、退任するメドヴェージェフ大統領が自らの4年間の成果を総括する演説を行った。そのテキストはこちらで読むことができる。『コメルサント』紙のこちらの記事が、メドヴェージェフ演説の経済部分に関し論評しているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。
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演説においてメドヴェージェフ大統領は、経済の成果を総括するとともに、5つの優先的な原則について語り、これらの原則を来たるメドヴェージェフ内閣の指針に据えようとしていることが見て取れた。演説は出席者向けにかなり簡略化された内容で、予算のルール、年金改革、資源部門への負担、国営銀行といった政府部内で現在論議となっている複雑な諸問題には触れなかった。自らが5月7日に首相候補として推挙されようとしていることについての直接的な言及はなかったものの、それをほのめかした上で、自らが率いることになる新政府の新たな課題を挙げた。それらの課題が野心的であることは、メドヴェージェフがF.ルーズベルト米大統領に言及したり、詩人V.ジューコフスキーが皇太子時代のアレクサンドル3世に示した助言などを引用していることからも、窺い知ることができる。
プーチンと同様に、メドヴェージェフも、自らの2008~2012年の治世の成果として、経済危機の第一波によるカオスを押し留め、経済を安定させたことを挙げた。そして、メドヴェージェフは2012年以降の政府の7つの目標として、以下の点を挙げた。これらは主として、プーチンが選挙論文で提案したことと重なり、それを若干精緻化したものとなっている。すなわち、2017年には所得が最低生計費を下回っている世帯の比率が10%以下になることや、2,500万の新たな雇用を創出するという課題に加え失業率を5%以下とするという要請が加わったことである。新たな目標としては、ロシアの家庭の大多数は15年に一度はより良い住宅に引っ越せる可能性を持てるようにしなければならないという点や、ロシアの大学のうち5校は世界の大学ランキングトップ100に入らなければいけないという点、またロシアは生活の全分野でのエレクトロニクス技術導入度において世界のベスト10に入るべきだという点があった。
そして、新政府の指針となる5つの原則が示された。具体的には、1.企業家としての才能を重要な社会的価値として認めること、2.国家の経済への介入は最小限で透明なものとすること、3.司法機関は対象の所有形態にかかわりなく分け隔てない態度をとること、4.規制のあり方の質を国際的なレベルにすること、5.社会がゲームのルールの形成に参加すること、である。メドヴェージェフは、「国家行政の手動的な手法に代わって、透明で、分かりやすく、公平なルールが基盤となる」と発言しているが、ちなみにプーチン内閣がこれら5原則から逸脱したことについては、やはり危機の局面ゆえだったとされ、それゆえに経済の成果も達成されたと説明された。国家管理のモデルを手動から自動に変更することも、経済が安定する状況下でのみ可能となるが、来たるプーチン大統領がメドヴェージェフ新首相にそれを保証できないことは明らかである。
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