
プーチン・ロシア大統領は9月28日付で、大統領令第686号「燃料・エネルギー複合体に関するアクセス制限情報の一覧の承認およびその利用手続きについて」に署名した。石油・石油製品などの輸出に関する企業別・取引別の詳細情報を、従来よりも厳格なアクセス制限の対象とするものとなっている。しかも、単に企業に情報公開を控えさせるだけでなく、税関統計や国家機関が保有する情報の取り扱いまで対象にしている。特に目を引くのは、輸出数量・価格だけでなく、取引相手、決済、輸送ルート、港湾ターミナル、さらには石油精製所の稼働状況まで、広範な情報を制限対象にしている点である。以下で大統領令の主な内容を整理しておく。
今回の大統領令では、制定理由を「米国およびこれに同調する外国・国際機関による非友好的で国際法に反する行為に対応するため、緊急措置を講じる必要性」としている。そして、2006年7月27日付連邦法第149-FZ号「情報、情報技術および情報保護について」第9条第1・2項、2018年6月4日付連邦法第127-FZ号「米国その他の外国の非友好的行為への対抗措置について」第4条を法的根拠としている。その上で、燃料・エネルギー複合体に関する特定情報について、アクセスを制限するとともに、その秘密保持を義務付けている。
大統領令では、大きく4種類の情報がアクセス制限対象として指定されている。第1に、最も広範なのが、法人による商品輸出の詳細情報で、以下の情報が列挙されている。
特に、輸送ルートや港湾ターミナルだけでなく、保管施設の地理座標まで明示されている点が特徴的。なお、表題は燃料・エネルギー複合体に関する情報だが、この第1項自体は「法人による商品輸出に関する情報」という書き方になっている。対象となる具体的な商品コードについては、後述するように政府が別途決定する仕組み。
第2に、法人による輸出に関する税関統計の集計情報が制限される。個別の通関申告情報だけでなく、法人による商品輸出に関する税関統計の集計情報も制限対象に含めている。これだけをもって、ロシアの燃料・エネルギー関連の輸出統計がすべて公表禁止になるとまでは断定できないが、具体的な対象品目の指定と、統計の公表・提供に関する運用を確認する必要がある。
第3に、ロシアの製油所を運営する法人について、原油処理量および製品生産量に関する情報が制限される。輸出だけでなく、国内の石油精製活動そのものを対象にしている点が注目される。
第4に、石油製品の販売計画数量・取引所取引数量の情報も制限される。こちらは少し複雑で、対象となるのは、ロシアの独占禁止法上、同一企業グループに属する法人を含めた、特定の大手石油事業者に関する情報であり、具体的には、原油から製造された特定石油製品について販売を予定している数量、各課税期間の各取引日において商品取引所で行われた当該石油製品の売買取引数量が該当する。対象企業は、該当する商品市場で支配的地位を占める事業者。対象商品は、オクタン価92以上の自動車用ガソリンおよびディーゼル燃料とされている。つまり、石油製品の取引所市場における大手企業の供給計画や販売動向に関する情報も、アクセス制限の対象になる。
そして、大統領令本文第2・3項は、上述の情報について秘密保持を義務付け、次のような取り扱いを定めている。ただし、一般への情報提供の禁止には例外があり、法人が自らの活動に関する情報を公開することは、禁止の対象外と明記されている。したがって、企業自身による任意の情報公開まで全面的に封じる制度ではない。一方で、第三者による情報の取得・提供や、行政機関が保有する情報の公開については、より厳格な管理が可能になると考えられる。
大統領令第4項は、ロシア連邦政府に次の3つを命じている。第1に、10日以内に対象商品コードを確定すること。ユーラシア経済連合の統一商品分類(ТН ВЭД ЕАЭС)に従った商品コード、および全ロシア経済活動別生産物分類(ОКПД 2)のコードを確定する。つまり、今回の大統領令では制限対象となる情報の種類を定め、実際にどの商品が対象となるかは、政府が追って具体化することになる。第2に、国家情報システムから取得した情報の自動処理に関する標準規則を承認すること。これは、連邦行政機関が保有する情報を、どのような手続きで処理・提供するかという運用面の整備となる。第3に、政府自身の関連規則を今回の大統領令に適合させること。
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