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 ロシアで政権から独立した世論調査機関として定評のあるレヴァダセンターのデニス・ヴォルコフ所長が、以下の記事で、下院選結果を総括しているので、以下で要旨をまとめておく。

 世論調査によって、新しい下院の基本的な構成は投票前からかなり正確に予測されていた。投票率は前回より数ポイント上昇すると予想され、実際にそうなった。「統一ロシア」が第1党になることも予想どおりだったが、得票は予測をやや上回った。世論調査が困難な「新地域」における与党支持を十分に織り込めなかった可能性がある。共産党の第2位と得票はほぼ予測どおりだった。自由民主党は第3位と予測されていたものの、得票は予想をやや下回った。「新しい人々」の第4位、公正ロシアが議席獲得ラインぎりぎりとなったことも意外ではなかった。最大の予想外は「ヤブロコ」の支持急増だったが、これも選挙戦の途中から世論調査で把握されるようになっていた。

 今回の結果を理解するうえでは、2026年秋までの社会意識の変化が重要となる。2022~24年には、国際紛争を背景とするロシア社会のかなりの部分の結集、長期間にわたる生活水準の上昇、さらに新たな動員を行わず志願兵募集を選択したことなどにより、社会のムードはほぼ一貫して改善した。2024年半ばには、国の状況、個人の経済状態、将来への期待など、多くの指標が2008年の「プーチンの安定」のピークに匹敵する高水準に達した。

 転換したのは2025年半ばである。蓄積した経済問題に加え、トランプによるロシア・ウクライナ紛争解決への期待が崩れたことで、社会のムード、国の状況に対する評価、政権支持率が徐々に悪化し始めた。2026年春末から初夏には悪化が一服するように見えたが、ウクライナによるロシア都市への攻撃範囲の予想外の拡大と、それに伴うガソリン危機によって再び否定的感情が強まった。6~7月には社会のムード、現状評価、政権支持率が目立って低下した。しかし8月になると、最初のショックが薄れ、政府による厳しい規制措置で燃料市場も比較的正常化し、人々も状況に適応した。その結果、選挙直前には政権と「統一ロシア」の支持率が回復した。

 それでも現在の社会意識は、前回下院選挙が行われた2021年より良好であり、2021~24年の改善分がその後の悪化によって完全に失われたわけではない。このため、「統一ロシア」が前回を上回る結果を得たのは自然だった。投票率上昇には、遠隔電子投票の普及も影響した可能性がある。

 統一ロシア、公正ロシア」、そして程度は弱いものの自民党と新しい人々の支持者は、ロシアが正しい方向に進んでいると考え、プーチン大統領の政策を概して支持する傾向が強い。これに対し、最も抗議的なのは「ヤブロコ」と共産党の支持者である。「ヤブロコ」支持者では国が間違った方向に進んでいるとの見方が多数を占め、共産党支持者でも約半数に達する。同様の否定的態度は、無効票を投じる予定の人や棄権予定者にも多かった。

 経済的に比較的恵まれているのは統一ロシアとヤブロコの支持者だが、前者は状況の改善を感じる傾向が強いのに対し、後者は悪化を感じている。共産党、公正ロシア、自民党支持者は比較的所得水準が低く、状況が悪化したとの回答も多い。新しい人々はその中間に位置する。年齢では共産党支持層が最も高齢である。一方、ヤブロコ支持者の3分の2は35歳未満で、新しい人々でも35歳未満が3分の1以上を占める。

 既存政党には長年同じ党に投票している固定支持層があり、「習慣」で投票するという回答も少なくない。統一ロシアについては、「プーチンの党」であることが重要な支持理由となっている。政権党であり「最も強い党」であるため、公約の少なくとも一部を実現できると期待されている。また、現在の生活に満足し、政治路線の変更を望まない層から支持されている。共産党支持者にはソ連時代から長期間支持している人が多く、レーニンやスターリンは、過去の秩序や、より公正で豊かだったと認識されるソ連社会の象徴となっている。自民党には、死去したジリノフスキーへの支持が依然として強く残る。「彼はいつも真実を語った」「すべてを予見していた」といった評価が支持理由として語られ、党指導部も創設者の名前を引き続き積極的に利用している。

 新しい人々は「若者の党」「進歩的な勢力」と認識され、新しい政治家による刷新への期待を集めている。インターネット上の禁止やブロッキングに反対していることを評価する支持者もいる。 公正ロシアは社会的公正を訴える点が支持理由となっているものの、今回の選挙では統一ロシアとほとんど区別できない存在として受け止められ、党としてのアイデンティティを失いかけていた。

 ヤブロコは20年以上にわたり1~2%程度の支持にとどまっていたが、今回、急速に支持を伸ばした。その支持者を最も明瞭に特徴づけていたのは、「特別軍事作戦」の早期終了をほぼ全員が支持していたことである。同時に、政権そのものやウクライナ政策への支持も低かった。他方、議席を有する諸政党の支持者でも、軍事行動継続より交渉を望む人が多数を占め、全国平均と同程度の約60%に達していた。しかし、これらの人々は同時にロシアの対ウクライナ行動を強く支持していた。したがってロシアの世論では、和平を望むことと政権を支持することが矛盾していない。このため、政権への抗議と反戦を結び付けた政治的主張によって動員できる層には、もともと限界があった。

 ヤブロコへの関心急増は今回の選挙戦最大のサプライズであり、2024年大統領選挙でボリス・ナジェジディンの立候補署名に人々が列を作った現象にも似ていた。5月時点ではレヴァダ、FOMとも支持率は1%以下だった。7月には約2%となったが、過去の選挙でも見られた程度の変化だった。一方、VCIOMの7月調査では18%が「ヤブロコへの投票を選択肢として考えられる」と答えたが、これは実際の投票意向とは別の指標である。この数字を選挙支持率と混同し、「ヤブロコが選挙に参加できれば第2党になれた」とする噂が選挙直前に広がったが、主要世論調査機関のデータはそれを裏付けていない。

 しかし8月になると、ヤブロコへの投票意向は20年以上ぶりに全回答者の4~5%に達した。選挙に参加していれば阻止条項を突破できる可能性が生じており、その場合の得票率は公正ロシアや新しい人々に近い6~7%程度だったと考えられる。支持拡大の中心となったのは、これまで選挙にも政治活動にも参加したことがなかった平和主義的な若者で、一部は党のボランティアにもなった。しかしヤブロコが選挙から排除されると、その多くは新しい人々を中心とする他党支持へ容易に移行した。安定したヤブロコ支持層が形成されるまでには至らなかった。

 統一ロシアは今回も、比較的豊かで現状の生活に満足している人々の党となった。2022~24年に社会のムードと現状評価が改善したことが、その支持基盤を強化した。公正ロシアの支持層は政権支持層と特徴が似すぎており、それが5%ぎりぎりの得票にとどまった一因と考えられる。その他の議席保有政党の支持者には程度の差こそあれ現状への不満がある。共産党は、とりわけ社会政策を厳しく批判しながら、ウクライナに対しては他党以上に強硬な政策を支持する高齢の抗議層を引き付けている。自民党支持者は自分自身の生活や経済情勢に不満を抱えているものの、政権そのものには概して忠実である。新しい人々の支持者は比較的若い都市住民で、現状にはほどほどに満足しつつも、政治路線や政権担当者の一定の刷新を求める層である。ヤブロコは長年なかった規模で関心を集め、政権に批判的で平和主義的な学生層を引き付けることに成功した。ただし、この新しい支持層を今後維持できるかどうかは不明である。


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