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 こちらの記事が、ウクライナ鉄鋼業がかつてない危機に直面していることを伝えているので、主な内容を以下のとおり整理しておく。

 ウクライナ最大の鉄鋼会社アルセロールミタル・クリヴィーリフは9月25日、ロシアによる工場への攻撃が激化する中、鉄鋼生産を再開できないと表明した。ウクライナの鉄鋼業界は、産業全体の崩壊を防ぐため、政府および国外のパートナーに大幅な支援強化を求めている。

 ロシアは夏以降、ウクライナの主要産業拠点を機能停止に追い込むことを狙った広範な攻撃を展開している。2025年にGDPの7%を占め、数万人を雇用していた冶金部門はその主要な標的となり、8月以降だけで少なくとも9回の弾道ミサイル攻撃を受けた。最近の攻撃による鉄鋼メーカーの損失は1億ドル近くに達すると推定されている。2022年にマリウポリのアゾフスターリおよびイリチ製鉄所がロシア軍に占領・破壊され、国内鉄鋼生産能力の40%が失われたが、2026年はそれ以降で最悪の年となっている。ロシア軍は高炉など重要設備を狙って精密攻撃を行い、銑鉄生産を不可能にしている。メトインヴェスト、インテルパイプ、アルセロールミタルいう主要3社はいずれも鉄鋼生産を停止している。

 問題は製鉄所への直接攻撃だけではない。ロシアの攻撃によって黒海の港湾が機能停止し、海上輸送による輸出入が困難になっている。同時に、EUが6月に導入した新たな通商措置によってウクライナ製品のEU市場へのアクセスが制約され、さらに欧州の脱炭素政策によって輸出コストも上昇している。加えて、一部の大手はオリガルヒ所有であるため、国際金融機関の支援対象になりにくい。海上輸送の代わりとなる陸上輸送は非常に高価であり、企業が毎月数千万ドル規模の損失を出している状況では大きな負担となっている。鉄鋼業が崩壊すれば影響は製鉄所だけにとどまらない。建設業界はより高価な欧州製鉄鋼を輸入せざるを得なくなり、建設費と物価を押し上げ、最終的には戦後復興のコストまで増大する可能性がある。

 欧州議会議員カリン・カールスブロは、EUがウクライナを支援するどころか、その鉄鋼業を弱体化させていると批判している。春にウクライナの製鉄所を視察した同議員は、EUに対して通商政策を早急に見直し、6月に導入した関税制度からウクライナを除外するよう求めている。ウクライナの防衛能力を本気で支援するのであれば産業インフラを支えなければならず、経済が崩壊すればウクライナは自国を防衛することがさらに困難となり、EUからの支援への依存度も高まるとの主張である。

 9月初め、鉄鋼業界はセルヒー・コレツキー首相に対し、状況が限界に達しているとして支援策を提案した。その一つが、既存の「ウクライナ・エネルギー支援基金」をモデルとした鉄鋼基金の創設である。外国のパートナーから資金を集め、被害を受けた企業が欧州から重要設備を調達できるようにする。緊急修理、生産能力の復旧、設備の強靱化などに利用することが想定されている。また、欧州復興開発銀行などの国際金融機関との協議を行い、リナト・アフメトフが所有するメトインヴェストのようなオリガルヒ系企業にも融資を可能にする必要があるとの主張も出ている。

 黒海港湾の閉鎖による物流費の高騰も深刻である。石炭など一部の貨物を鉄道やポーランド、ルーマニアの港湾経由で輸送すると、コストは従来より50~60%高くなる。これについては、ウクライナ政府と欧州諸国が物流費を分担する案が示されている。ウクライナ政府は財政収入を確保するため鉄道運賃を高水準に維持する必要があるため、EU側が資金を提供して政府が輸送費の一部を補助する仕組みが考えられている。物流費が下がれば、外国から銑鉄やスラブを輸入し、ウクライナ国内の圧延設備で鋼材を生産することも可能になる。現状では輸送費が高すぎるため、こうした原料・半製品の輸入も採算が合わない。

 鉄鋼業界は、EU鉄鋼市場への無制限のアクセスと、炭素集約的な輸入品に追加負担を課す炭素国境調整メカニズム(CBAM)からの免除も求めている。ミサイル攻撃を受けるたびに設備を再建しなければならないウクライナ企業には、大規模な脱炭素投資を行う余力がないというのがその理由である。

 鉄鋼業にとって最大の支援策となるのは、黒海航路の再開である。海上輸送が復活すれば物流費が大幅に低下するだけでなく、鉄鋼生産そのものを再開できない場合でも、鉄鉱石を輸出して外貨収入を得ることができる。9月23日の国連総会に合わせ、51カ国がウクライナの黒海通商ルート再開を支持する共同声明を発表した。しかしロシア側には、ウクライナの港湾や民間船舶への攻撃を弱める兆候はみられない。政府や外国のパートナーから必要な支援を得られたとしても、鉄鋼生産の再開には数カ月と数千万ドルが必要となる。しかもそれは、復旧後にロシアが再び攻撃しないことを前提とする。当面の課題は、生産拡大ではなく産業そのものを生き残らせることとなっている。


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