374

 ロシア産の原油や天然ガスの購入量が多い上位5カ国からの全ての輸入品に米国が最大100%の関税を課すことなどを柱とする「リンゼー・グラム・ロシア・イラン制裁法」は、米上下両院により可決され、9月18日トランプ大統領の署名により成立した。それでは、同法の実効性はどうなのだろうか? 情報を探したところ、トランプ署名の前に書かれたものだが、こちらの論考が目に留まった。米国の元国務次官補・元制裁政策調整官であるダニエル・フリード氏による論評である。以下でその要旨をまとめておく。この法律はウクライナおよびそれを支持する超党派勢力にとっての成果である一方、実効性はトランプ政権がどのように運用するかにかかっていると論じている。

 この法律は、ウクライナおよびそれを支持する超党派勢力にとっての成果である。一方、その実効性は、トランプ政権がどのように運用するかにかかっている。

 法案の中で最も強力かつ論争的なのが第113条である。これは、ロシア産原油・天然ガスを大量に輸入する国、あるいは制裁回避を大規模に助ける国に対し、最大100%の関税を課す権限を米政権に与えるものだ。対象となりうる国として、中国、インドだけでなく、トルコ、日本、さらにEU加盟国のスロバキア、ハンガリーが挙げられる。

 この仕組みには批判もある。そもそも関税はロシアや第三国に圧力を加える手段として適切なのかという疑問があり、さらに政権に広い裁量を与えるため、たとえば一部加盟国がロシア産エネルギーを購入していることを理由にEU全体に関税を課すといった乱用も理論上は可能になる。こうした懸念には根拠があり、実施は容易ではない。

 ただし、特筆されるのは、第113条に組み込まれた柔軟性である。113条(b)では、対象国がロシア産石油・ガスの輸入を削減または停止すれば、関税率を調整できる。したがって、最初から100%関税を機械的に発動するというより、これを交渉上の圧力として利用し、各国にロシア産エネルギー輸入を段階的に削減させることが可能になる。過去に米国がイラン産石油をめぐって中国やインドに行わせた「ramp down(段階的削減)」というモデルがある。また113条(c)により対象はロシア産石油・ガスの上位5輸入国に限定されるため、対象国が際限なく広がる仕組みでもない。

 自分(フリード)自身、2014年のロシアによる最初のウクライナ侵攻後、国務省の制裁調整官として欧州諸国などとの制裁交渉に携わった経験がある。その経験を踏まえると、第113条は適切に使えば、各国政府との交渉を通じてロシアの石油・ガス収入を削減する有効な道具になりうる。むしろ懸念されるのは、トランプ政権がEUなどに乱用することよりも、適用除外(waiver)を乱発し、強力な条項をほとんど使わない可能性である。

 そのため、トランプ大統領が法案に署名し、超党派の支持者を伴ってこれを大々的に発表したうえで、迅速かつ強力に実施する意思を示すべきだである。それによってウクライナを励まし、欧州の同盟国に米国の連帯を示し、さらにロシア政府に対して和平交渉を引き延ばさないよう圧力をかけられる。

 トランプ政権が実際にそのように行動することには懐疑論もあるが、議会はすでに行動した以上、政権の実施状況を監視すべきだ。政権が法律を実施するなら議会は支援し、実施しないなら議会が圧力をかけ、責任を問うべきだ。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ