FTのこちらの記事が、ウラン市場におけるロシアのプレゼンスについて論じている。ロシアの世界シェアは、国内の採掘量だけなら5%だが、海外権益を含めると約25%になり、それが36%にまで拡大する可能性があるとしている。以下で記事を抄訳しておく。
世界的な原子力発電の拡大によってウラン需要が増加する一方、鉱山開発への投資不足や許認可の遅れから、2030年代にかけてウラン供給の逼迫が予想されている。そうしたなか、ロシア国内だけでなく、ロシア企業が海外で支配する鉱山を含めると、ロシアのウラン供給への影響力が今後大幅に強まる可能性がある。Centre for Strategic Advantage(CSA)は、2040年にはロシアが世界のウラン採掘能力の36%を支配する可能性があり、西側諸国が2022年までロシア産石油・ガスに依存していたのと似た状況になりかねないと警告している。
背景には世界的な供給不足がある。福島第一原発事故後のウラン価格低迷によって鉱山閉鎖や探鉱投資の縮小が進み、新規鉱山の開発には長い時間がかかる。2025年以降かなり大きな供給不足が続き、とりわけ2026~30年、2034~35年に不足が深刻になると予想されている。
ロシア国内のウラン生産そのものは、2024年時点で世界の約5%にすぎない。しかし、ロシア企業が支配する海外鉱山まで含めれば、主要ウラン産地におけるロシアの生産能力シェアはすでに約4分の1に達する。特にロスアトム傘下のUranium Oneは、カザフスタンだけで年間約1万tの採掘能力を支配している。既存・建設決定済み・計画中・構想段階の鉱山がすべて予定どおり開発されフル稼働すると仮定すれば、この比率が2040年には36%になるというのがCSAの試算である。
地理的にもロシアの展開はかなり広い。上掲地図に見るとおり、ロシア国内だけでなく、カザフスタン、ナミビア、タンザニアなどにロシア系権益が広がっている。Uranium Oneはタンザニアとナミビアでも鉱山開発を進めている。またロシアは2025年にニジェールともウラン分野での協力強化に合意した。ニジェールでは旧宗主国フランスのOranoが事実上排除され、資産接収をめぐって法的紛争になっている。
一方、西側もロシア依存の縮小に動いている。英国、米国、カナダ、日本、フランスはロシアの核燃料サプライチェーンでの優位を弱める方針を示し、とりわけウラン処理・濃縮能力への投資を進めている。米国はロシア産ウランの輸入を禁止したが、2028年までは例外措置による輸入が可能であり、ロシアは依然として欧州向け濃縮ウランの主要供給国でもある。
ただし、36%という数字は「ロシア支配の不可避な将来」を意味するものではない。ウラン価格上昇によって西側などで新規鉱山開発が採算に乗ること、カザフスタンの法制度変更によって同国側の取り分が増えること、アフリカのロシア系権益に制裁などが課されることを考慮すれば、ロシアのシェアは約14%に抑えられる可能性もあるという。CSAは、ニジェール、ナミビア、タンザニアなどのロシア系ウランを制裁対象とすることも選択肢として挙げている。
問題は、その代替供給をどう確保するかである。長期ウラン価格予測は1ポンド80ドルから94ドルへ引き上げられているが、それでも新鉱山への投資を十分誘発する価格水準に達したかは不明で、さらなる上昇が予想されている。CSAはOECD諸国に対し、電力会社と鉱山会社との長期契約を政府が支援し、鉱山会社が将来の価格・需要を見通せるようにすることを提言している。
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