引き続き、来週の講演「鉄は国家なり:戦争が試すロシア・ウクライナ鉄鋼業の底力」に向けて準備を進めているところだけど、なにやら、鉄鋼業自体からやや脱線して、ロシア・ウクライナの黒海海運全般についての話が増えそうだ。
それで、IMFが運営しているPortWatchというデータベースがあり、世界海運の様々なチョークポイントの船舶通航数のデータを発表している。個人的にこれまでスエズ運河やパナマ運河のデータは調べたことがあったが、今回これを使ってボスポラス海峡、ケルチ海峡の1日当たりの商船通航数を調べてみることにした。その結果、出来上がったのが上図である。ボスポラスとケルチでスケールが左右違うので、ご注意を。
まず、ボスポラス海峡。ロシア・ウクライナが黒海・アゾフ海の港湾から積み出して世界市場に商品を輸出しようとすれば、必ずボスポラス海峡を通過する。もちろん、ルーマニア、ブルガリア、トルコの分もあるので、すべてがロシア・ウクライナというわけではないが、ロシア・ウクライナの黒海海運が麻痺すれば、ボスポラスの通航数に響くはずである。と考えて調べたところ、PortWatchが記録しているボスポラスの商船通航数は、通常であれば1日あたり100隻前後であった。これが、今年夏に顕著な落ち込みを見せ、6月が81.7、7月が72.1、8月が途中経過で63.3と低下していることが確認できた。
一方、ケルチ海峡は少々難しく、PortWatchにまったく記録されていない時期もある。IMF PortWatch はAISデータを使った可視化で、データの提供元はKplerであるとされており、その大元のデータに記録されていなければデータなしになってしまうようである。ケルチ海峡は、ボスポラスのような国際海峡とは異なり、もっぱらロシアが利用しているので、透明性がだいぶ落ちるようである。ともあれ、2025年以降についてはケルチ海峡もPortWatchのデータの対象になっていたようなので、その数字をグラフで跡付けてみた。これを見ると、穀物輸出の季節的な要因などに起因して、月ごとのばらつきはかなり大きいが、以前は1日当たり10隻前後の商船が海峡を通航していたようである。それが、4月の途中から、データベース上は、ずっとゼロになっている。報道では、ロシアは7月10日からケルチ海峡の船舶通航を停止したとされているので、早くも4月の途中からゼロだったというデータに疑問は残るが、統計上はそうなっている。
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