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 こちらの記事で、マルク・フェイギンという人物がインタビューに応じている。1971年サマラに生まれた人で、1990年代にはエリツィン体制下で若き民主派政治家として名を馳せ、その後は地方行政で働いたが、プーチン政権下では人権派・政治事件の弁護士に転身し、さらにその後はロシアを追われて在外反体制活動家・YouTuberとして活動しているようである。以下、フェイギン氏の発言要旨をまとめておく。

 1991年8月のクーデター未遂時、私もモスクワの「ホワイトハウス」周辺にいた。しかし、35年後の現在から見れば、当時の犠牲も民主化運動も、結局は無駄だった。なぜなら、その帰結が現在のプーチン体制だから。それでも、1991年8月19~21日の3日間は、20世紀ロシアで社会が完全に自由になり、権力が社会の手にあった唯一の瞬間だった。問題は、その機会に旧体制を徹底的に排除せず、エリツィンを中心とする旧ソ連エリートの一部に新体制を委ねてしまったこと。旧体制関係者の公職追放が行われず、最終的にエリツィンがプーチンを後継者に指名したことに重大な責任がある。現在の体制は、共産党体制の復活ではなく、チェキスト(治安機関)の体制の復活である。

 2026年下院選挙を利用して体制を揺さぶることは期待薄。選挙を利用してプーチン体制を「揺さぶる」という在外反対派の一部の戦略には反対。理由の第1は、体制が作ったルールに従って体制を揺さぶることはできないから。下院に残る可能性のある政党はすべて戦争支持政党であり、反体制どころか反戦政党すら存在しない。第2に、今回の選挙はロシアが占領するウクライナ領でも実施されるため、投票参加を呼びかけること自体が、それらの地域をロシア領として事実上正当化することにつながる。さらに、ナワリヌイ陣営が過去に採用した「統一ロシア以外に投票せよ」という戦術も、結局一度も体制を弱体化させなかった。したがって、今回同じことを繰り返す意味はない。

 現在のロシア国内では、公開の抗議運動はほぼ不可能。「ヤブロコ」の選挙参加資格をめぐって最高裁前に若者が集まったが、数十人ないし数百人程度が集まっても体制には何の影響もなく、むしろ参加者が特定され、後に逮捕されて政治犯が増えるだけ。したがって現在のロシアでは、公然たる不満表明すらほとんど不可能であり、まして組織的抵抗は期待できない。現在のロシアは明確に「全体主義体制」であり、スターリン期にも形式的な選挙は存在したが政治的意味はなかわけで、プーチン体制もその方向に進んでいる。

 国内反対派の活動よりも、戦争の継続そのものの方がプーチン体制をはるかに大きく動揺させる要因になっている。ワイルドベリーズ倉庫、製油所、その他の象徴的施設などへのウクライナの攻撃が続けば、一般国民の間に、「この戦争には勝てない。そして戦争を終わらせない政権に責任がある」という感覚が生まれてくる。ただし、その不満を選挙で表明することはできない。また、2023年6月のプリゴジン反乱は、将来何らかの実力勢力がプーチン政権に挑戦した際、潜在的な国民の不満がその勢力への支持として顕在化しうることを示した一種の「予行演習」だった。

 プーチンが2022年型の大規模な強制動員、まして全面的な総動員に踏み切る可能性は低い。理由は、大規模動員を行えば逃亡・脱走が増え、限定的とはいえ抗議行動を誘発する可能性があるから。2022年9月の部分動員の際、ダゲスタンやハカスなどで実際に抗議が起きたことを、プーチンは「トラウマ」として記憶している。全面動員なら、さらに激しい反応は避けられない。その代わり、今後も、高額報酬などを利用した契約兵募集、半ば強制的な契約への誘導、徴集兵・学生への働きかけ、犯罪者などの利用、地方の社会的弱者を重点的に徴募、といった形で兵員を確保するだろう。特に、「抵抗する能力のない人々」を選択的に徴募する。これなら全国規模の政治問題になりにくい。なお、現在の契約兵獲得が1日約1,000人との報道については数字は過大であるが、500~600人程度ならあり得ることで、月1.5万~2.5万人程度を集めることは可能。

 エリートの「戦争疲れ」は存在するが、反乱する能力がない。戦争への不満が存在するのは事実で、富豪A.メリニチェンコの『Economist』での発言などはその兆候だった。現在のエリートは国家資本主義に寄生して利益を得てきただけの人々で、理念も意志もなく、自分たちでプーチンを排除する能力がない。したがって不満は今後強まるとしても、それを政治行動に転換する経路がない。結局彼らは「プーチンが死んでくれれば」「ウクライナや西側が何とかしてくれれば」と外部要因を待っているだけ。

 在外ロシア反対派にも、国内政治を動かす力はない。ロシア国内には、反戦・反動員運動を組織できる政党・政治組織がすでに壊滅している。他方で、国外から広大なロシア各地に散らばる一般国民を組織することも事実上不可能であり、戦争開始後の数年間でその限界は明らかになった。したがって、在外反対派の現実的な仕事は、ロシア国内で革命を起こすというよりも、欧州の制度を利用してロシア人亡命者を支援することなどにある。

 私が参加している欧州評議会議員会議(PACE)のプラットフォームは、華々しくはないが、実質的な成果はある。具体的には、期限切れのロシア旅券しか持たない亡命者などに対し、欧州各国がいわゆる「グレー・パスポート」を発給することを勧告するPACE決議の実現がある。また、銀行口座閉鎖、在留資格・難民資格、ビザなど、在外ロシア人の法的地位改善にも取り組んでいる。さらに、ウクライナ軍側で戦うロシア人(ロシア義勇軍団や自由ロシア軍団など)の権利・地位を改善し、ロシア国民がこれらに参加しやすくする問題にも取り組んでいる。私自身、この1年間に2回ウクライナの前線を訪れた。また、2026年下院選挙については、占領地で選挙が実施される以上、「統一ロシア以外への投票」も含め、いかなる政党への投票運動にも反対する。他方、シュロスベルグやヤブロコなど国内の反戦活動家は支持する。


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