B.グロゾフスキーという経済専門家が書いたこちらのコラムでは、ワイルドベリーズ(WB)倉庫の損害は国の始めた戦争により生じたにもかかわらず、国は責任を負わず、出店する中小企業が泣くことになるといったことを論じている。以下がその要旨。
WBは単なる通販会社ではなく、ロシア経済の基幹インフラになっている。2025年の流通額は約6.1兆ルーブルで、小売全体の約10%を占める。ロシアのEC市場では約53%のシェアを持つ。 オンライン小売全体は小売売上高の18.5%に達しており、国民生活への影響は極めて大きい。したがって、同社の物流センターへの攻撃は、単なる一企業への攻撃ではなく、ロシアの流通網そのものへの攻撃となる。
ただし、WBが巨大企業だからといって、経営的には盤石ではない。倉庫能力の約15%が被害を受けた。倉庫復旧だけでも約300億ルーブルを要する。出店業者(セラー)の損失は少なくともその5倍以上に上る。さらに、利益率は売上高の2.5~2.9%程度と低い。積極投資の結果、2025年末には負債が8,300億ルーブルまで膨張している。銀行との財務制限条項(コベナンツ)にも抵触している。つまり、借金を増やして被害を補填する余力も限られる。
戦争・ドローン攻撃による被害は、保険の対象外となる。WBの補償は損害の3~5%程度(多くても10%)となっている。残りは高金利融資で賄うしかない。そのため、数百万~数千万ルーブルの商品を失った中小事業者、在庫をすべて失った零細企業は、事実上立ち直れない可能性が高い。7月末までの補償総額は約4,000万ルーブルにすぎず、焼失商品の価値の0.1%以下。
倉庫不足、輸送距離の増加、配送効率の悪化、EC各社の手数料上昇が進み、その結果、商品価格上昇、配送の遅延、セラーの撤退が起こると予測される。特に小規模事業者では採算が取れなくなり、オンライン市場から退出する企業が相当数出る可能性がある。
国家財政にも余裕はない。増してWBは軍需企業ではないため、直接救済は期待できない。もっとも、VTBが戦略パートナーであることから、国有銀行経由で間接支援される可能性はある。
攻撃開始の約10日前に、WBは利用規約を変更し、ドローン攻撃で損害が生じても契約上定められた補償制度が適用されないという条項を追加した。同社は政権中枢との結び付きがあり、真の実力者はS.ケリモフではないかという見方がある。ゆえに、同社は事前に警告を受けていた可能性がある。
戦争を始めたのは国である。しかし戦争による損失は国家が負担せず、中小企業、消費者、銀行、最終的にはロシア経済全体が負担を背負う構造になっている。「決めるのはプーチン、支払うのは皆」というわけだ。
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