
ロシア出身で、現在は米国等で活動しているV.イノゼムツェフ氏が、こちらの記事でインタビューに応じ、ワイルドベリーズ倉庫被弾をはじめとする最新情勢について語っているので、以下発言要旨を整理しておく。
ワイルドベリーズへの攻撃で最も重要なのは、ロシアは自国の後方すら守れないことを示したという点。その兆候はすでに製油所攻撃で現れていたが、今回は巨大物流拠点が繰り返し攻撃されたことで、防空体制の脆弱さが一層明白になった。
ワイルドベリーズは2024年にRuss社と統合している。統合後はクレムリン政権の管理下に入り、軍事インフラの一部として機能している。さらに、攻撃用ドローン、爆弾投下装置などもワイルドベリーズ上で購入可能であり、その意味で「正当な軍事目標」である。
ワイルドベリーズの会社自体については、多額の債務を抱え、財務も悪化している。攻撃が続けば、救済するより倒産させた方が早いかもしれない。また、政府は大企業救済に積極的でない。
電子商取引はロシア経済の重要部門である。マーケットプレイス全体でGDPの約5.5%を占め、もはや「一つの基幹産業」だ。したがって、ワイルドベリーズへの攻撃は、単なる一企業への打撃ではなく、ロシア経済全体への警鐘になる。
2025年春以降、増税、規制強化、検査増加などで中小企業の環境は悪化しており、そこへワイルドベリーズ攻撃まで加わった。被災した出店者への補償も、実質10%程度しか出ていない。
しかし、国民の怒りはプーチンに向かわない。被害者は、ウクライナを非難することはあっても、「この戦争を始めたのは誰か」というところまで思考が進まない。ガソリン危機などでも、国民意識が変わる兆候は見えなくなった。
下院選にも期待できない。最近ロシア国内の人々と話すと、皆「どうせ結果は決まっている」という諦めに支配されている。そのため、統一ロシアは再び多数派、場合によっては憲法改正可能な多数を得るだろう。
ワイルドベリーズへの攻撃が、戦争を止めることはない。では何の意味があるのかと言うと、ワイルドベリーズの損害は約1,300億ルーブル(約20億ドル)に達した一方、ウクライナ側のコストは数十万~数百万ドル程度だった。つまり、極めて費用対効果が高い攻撃だった。
これらの攻撃は、経済を崩壊させないし、軍への補給も止められない。しかし、ロシア人に「戦争は自分たちのところまで来ている」と実感させることができる。これが最大の成果である。
燃料価格高騰については、独自試算として、追加インフレは約3%程度。したがって、公式予測6%なら、実勢では10~12%程度になる可能性がある。最も打撃を受けるのは、農業、旅客輸送だが、 政府が個別に支援するため、システム全体が崩壊することはない。
最近、囚人、債務者など契約兵の対象拡大が進んでいるが、これは動員を避けるために、利用可能な人材を先に使い切ろうとしている証拠。ロスグヴァルジヤや地域行政府が動員準備を進めているにしても、最終的にはプーチン次第であり、プーチンは追加動員が体制への最大の政治リスクであることを理解している。世論調査でも74%が動員に反対しており、準備はしていても、実際に命令が出るかどうかは別問題。
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