ウクライナの元軍総司令官で、現在は駐英大使を務めるV.ザルジニー氏が、こちらに見るように、英テレグラフ紙に寄稿を行った。「ロシアはまだ負けていない。今後の勝敗を決めるのは前線ではなく、持久力である」といった内容になっている。以下、発言要旨を簡単にまとめておく。なお、上掲図も記事に添えられているもの。
現代戦では「戦術的勝利」は決定打にならない。ドローン、精密誘導兵器、常時監視によって、昔のような突破→包囲→勝利という戦争ではなくなった。現在は消耗戦であり、前進しても維持、補給、負傷者搬送が極めて困難になっている。
ロシアにはウクライナ全土を征服する能力はない。一方、ウクライナにも軍事力だけで全占領地を解放する能力はない。つまり、戦場は均衡状態にある。
「ロシアは敗北した」という見方は誤りである。なぜなら、依然として広大な占領地を保持し、戦争継続能力を維持し、敗北を認める意思は全くないからである。
ロシアはもはや急速な前進を狙っておらず、目的はウクライナを経済的、軍事的、心理的に疲弊させることだ。さらに、ロシアには人員、工業力、特に弾道ミサイル生産能力で依然優位がある。
戦争を左右する最大要因は、前線ではなく、西側の政治意思。懸念として、ワシントンの変化、欧州内の分裂があり、首脳会談や連帯演出だけでは十分ではない。
戦争の主戦場はもはや前線だけではなく、兵站、工業力、インフラ、防空、社会のレジリエンスへ広がった。
以前は、ロシア本土からクリミアに至るアゾフ海沿岸回廊が、ロシア最大の成果だった。しかし 長距離攻撃能力の発展によって、占領していても、補給線は攻撃される。つまり、領土支配そのものの価値は以前ほど絶対ではなくなった。
消耗戦で重要なのは、次の集落を取ることではなく、どちらの社会が長期間の経済・軍事・心理的負担に耐えられるかだ。つまり、勝敗を決める尺度そのものが変わった。
NATOに感謝はするが、現状のNATOは冷戦型の組織であり、基本思想は核保有国とのエスカレーション回避にある。しかし、ドローン、サイバー、精密攻撃、AIが中心となる21世紀戦争には、その戦略文化は十分対応できていない。
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