
こちらの記事は、モバイルインターネットの遮断などが原因で、ロシアでは現金志向が高まっており、その結果として銀行に流動性不足広がっているということを伝えている。以下、記事の要点をまとめておく。
記事によれば、ロシアの銀行システムでは流動性不足が約1.9~2兆ルーブルに達している。2026年初めには約6,000億ルーブルだった不足額が、6月には約2兆ルーブルまで膨らんだ(6月24日時点では1.8兆ルーブル)。背景には、国民が銀行預金を引き出して現金で保有するようになったことがある。 「流動性」とは銀行が融資や資産運用、預金払い戻しに自由に使える資金であり、人々が現金を引き出せば、その原資が減少するため、銀行は中銀や他行から資金を調達しなければならなくなる。
専門家が挙げる原因は複数ある。第1に、最大のポイントとして挙げられるのが、モバイルインターネットの断続的な遮断である。通信障害によってカード決済やQR決済が使えなくなる事態が発生したため、人々は「いざという時のため」に現金を持ち歩くようになった。
第2に、預金金利の低下がある。2025年には高金利預金が資金を銀行に引き留めていた。しかし政策金利引き下げに伴って預金金利も低下し、銀行預金の魅力が薄れたため、一部の資金が現金へ向かった。
第3に、税制改正により、中小企業の中には、現金払いに割引を付ける、キャッシュレス決済に伴う加盟店手数料を節約するという動きも見られるようになった。
第4に、海外旅行の要因がある。ロシアの銀行カードは海外で使えない国が多いため、旅行前に外貨現金を購入する需要も現金志向を後押ししている。
ロシア中銀自身も2026年の構造的流動性不足見通しを、従来の1.9~3.0兆ルーブルから、修正後の2.4~3.6兆ルーブルへ引き上げている。その理由は、流通現金の増加見通しを大幅に上方修正したため。
もっとも、現段階では危機的状況ではない。家計預金残高は4月時点でも70.8兆ルーブルまで増えており、銀行全体としては依然として十分な預金を保有している。一部銀行では中銀からの借入が増えており、中銀には流動性供給手段が十分あり、担保として差し入れ可能な資産も豊富とされ、金融システム全体としては対応可能と考えられる。
流動性不足は銀行経営だけでなく、融資条件にも影響する。銀行の資金調達コストが上がることになる。中銀が利下げしても貸出金利はすぐには下がらず、融資審査も厳しくなる。すでにその影響は表れており、消費者ローン残高は前年比約2%減となり、(大手建設会社を除く)中小企業向け融資は約7%減となっている。もっとも、銀行は預金を集める必要があるため、預金金利をある程度引き上げる誘因も働く。
今後の見通しに関して言えば、現金への資金流出は逆流する可能性もある。通信インフラが安定し、デジタル決済への信頼が回復し、預金商品の魅力が高まり、マクロ経済環境が改善すれば、現金は再び銀行へ戻る可能性が高い。
なお、上掲の図も、記事に添付されていたものである。2025年半ばまでは銀行システムが流動性余剰の状態だったものが、2025年末を境に不足へ転じ、2026年春以降に不足額が急拡大している様子が示されている。
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