
プーチン体制に批判的なエネルギー専門家として知られているM.クルチヒン氏が、こちらの記事で、ウクライナの攻撃によるロシア石油部門への打撃についてインタビューに答えているので(記事配信は6月16日)、以下クルチヒン氏の発言要旨をまとめておく。
ロシア政府が石油生産・精製・燃料生産の統計を非公表としているため、正確な状況は誰にも分からない。Energy Intelligenceなどが「製油能力の3分の1が停止」と報じているが、これは推測に過ぎない。市場の動きを見る限り、欧露部を中心に実際の能力低下は15~20%程度ではないか。多くはドローン攻撃後の「予定外修理」によるもの。
情報秘匿がパニックを助長している。在庫量や地域別の不足状況が秘密になっているため、市場参加者も実態を把握できない。不透明感から買い急ぎが起こり、地域によってはガソリンスタンドで品切れが発生している。大手系列のスタンドは営業を続けられても、中小の販売業者は値上げや閉鎖を余儀なくされる。
ウクライナによる攻撃の効果が大きくなった理由は、①攻撃回数の増加、②命中精度の向上である。従来は貯蔵タンクへの攻撃が中心だったが、現在は交換に数カ月から数年かかる精製設備、中国製部品を調達しなければならない装置などが狙われるようになった。一部設備の復旧には2年を要する可能性もあり、打撃は非常に大きい。
ロスレゼルヴ(国家備蓄)の基地も攻撃対象になっている。ルイビンスクやロストフ近郊の大規模油槽所火災により、非常時用の備蓄燃料そのものが失われた。これは戦略備蓄の消耗を意味する。
幹線パイプラインのポンプ施設攻撃が新段階に入っている。特に、西シベリア→欧露部への原油幹線、モスクワ方面への石油製品パイプラインのポンプステーションへの攻撃である。これによって単なる製油所被害ではなく、物流システム全体が攪乱されるようになった。
燃料不足は21~25地域に拡大している。不足は前線地域だけではなく、カムチャッカ、極東、イルクーツク州など遠隔地にも及んでいる。イルクーツク州では農業用ディーゼルが不足し、現地農業者は悲鳴を上げている一方、その燃料が不足する欧露部(クラスノダル地方など)へ回されている。
今後1~2カ月不足が続けば、農業、商品配送業者、食品供給網が最初に影響を受けると予想される。ロシアの流通は自動車輸送への依存度が高いため、ディーゼル不足が進めば食品や生活必需品の供給障害に発展しかねない。
現状は「本格的危機の入り口」であり、根本的な解決策は戦争の停止以外にない。
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