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 政府から独立した世論調査機関として知られるロシアの「レヴァダ・センター」に、A.レヴィンソン氏という専門家がいる。そのレヴィンソン氏が、3月のコラム「冷蔵庫の中のテレビ:ロシア国民は貧しくなっているが引き続き体制への忠誠を示している」、5月のインタビュー「みんな、自分たちは何者なのかを考えよう」で述べている発言要旨を、以下のとおり整理しておく。なお、前者のタイトルにある冷蔵庫は庶民の生活を、テレビは政治によるプロパガンダを象徴している。

 1月の調査によれば、66%が「国は正しい方向に進んでいる」と答え、プーチン支持率も高水準。一方、国の路線を誤りと見る人は22%、プーチン不支持は12%程度で、政権運営に不満を持つ人は成人の約4分の1と推計される。もっとも、その中にもウクライナ戦争支持者は少なくなく、政権批判と戦争反対は一致しない。

 2025年を振り返ると、自分の生活が悪化した:25%、国民全体の生活水準が悪化した:39%、 医療サービスが悪化した:35%、良い収入を得る機会が悪化した:33%、富の分配の公正さが悪化した:改善の3倍と、多くの分野で「停滞か悪化」が優勢だった。特に管理職層では経済悪化の認識が強い。

 言論の自由や政治参加の分野では、「自由に意見を述べる機会」は減ったという回答が増え、「一般国民が国家に影響を及ぼす能力」も後退したとの見方が優勢だった。職場では「余計なことは言うな」という空気が広がっていることを示唆する。

 多数の人が西側やNATOとの関係悪化を認めながらも、「ロシアの国際的地位は改善した」と考えている。つまり、国際社会の中心はもはや西側ではなく、「どこか別のところ」にあるという世界観が広がっている。

 生活苦が深まれば、いずれテレビの宣伝効果は失われるという見方があるが、これは「粗雑な経済決定論」。人々自身が、生活条件は悪化しても、国家の象徴的な鎧(テレビ)と国家の機関(警察・治安機関)は強くなっていると感じており、それが続く限り支持も続く。国家の暴力装置と組織化された宣伝装置は、物質的条件よりも強力でありうるというのが、歴史の教訓だ。

 社会は「特別軍事作戦」によって破壊されてはいない。人々はそれと共に生きることを覚えた。人々は戦争を日常生活から切り離している。「引っ越しや住宅問題などの苦労はあるが、それは戦争とは別の話だ」と心理的に原因と結果を分離している。

 人々は「悪いことが起こる」と強く恐れているわけではなく、「何かが起こるはずだ」「戦争はどう終わるのか」という漠然とした緊張状態にあるだけ。NATOとの全面戦争への恐怖も以前ほど強くない。

 政権支持率低下(80%→75%未満)とインターネット障害・規制との関連が認められる。特に、専門職、管理職、中小企業経営者などで不満が強く、「商売はTelegramで回っているのに、どうすればいいのか」という戸惑いが聞かれる。さらに、年金生活者も意外にネットを利用しており、「テレビだけ見ている層」ではない。

 文学、芸術、演劇、映画、哲学者や知識人といった、社会を解釈し意味付けする「工房」が機能していない。社会は20年間の安定の中で暮らしてきたが、突然「栓が抜かれて」未知の方向へ流されているのに、「我々はどこへ向かっているのか」「戦争後、我々は何者になるのか」を考える人々や制度が不足している。だから、みんな、自分たちは何者なのかを考えよう。

 中小企業の弱さは、単なる経済問題ではない。起業に失敗した人々は、貧困に陥るわけではないが、起業する気力を叩き潰される。そして、自分で事業を営む人ほど、市民としての責任感を持つ。 中小企業層の弱体化は、市民社会の弱体化でもある。


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