こちらのレポートは、ロシアの機械産業が高度人材の深刻な不足に苦しんでいることを伝えている。以下抄訳しておく。
国立研究大学高等経済学院大学(HSE)の統計研究・知識経済研究所による「企業のデジタル・トランスフォーメーション・モニタリング」のデータによれば、2025年にはロシア機械工業分野の企業の約66%が、技術系・エンジニア系人材の不足を「軽度」または「深刻」に感じていた。逆に、そうした人材が自社の需要を満たしていると回答した企業は34%にとどまった。なお、ここで言う技術系・エンジニア系人材とは、生産工程の自動化・機械化を担当するエンジニア、新技術・新設備導入担当エンジニア、生産技術エンジニア、機械技師、産業設備オペレーター、数値制御工作機械やプログラム制御マニピュレーターの調整工などを指す。
こうした「人材飢餓」が最も強く生じているのは、「その他輸送機械・設備」の分野である(ロシア産業分類OKVEDコード30。船舶・ボート・鉄道車両・機関車・航空機・宇宙機器などの製造を含む)。この分野の企業の75%が人材不足を訴えた。また、電気機器製造業でも、技術系人材の需要が十分に満たされていない企業が60%に達している。機械工業の工業生産分野に属する企業の60%でも、エンジニア不足が感じられている。具体的には、生産工程の自動化・機械化担当エンジニア、生産技術者、新技術・新設備導入担当エンジニアなどである。
また、技術系・エンジニア系人材に加え、調査対象となった機械工業企業の約70%が、情報通信技術(ICT)専門人材についても「軽度」または「深刻」な不足を訴えた。具体的には、情報セキュリティ専門家、人工知能分野の専門家、データエンジニア、ソフトウェア・アプリケーションの開発者やアナリストなどである。ICT人材不足が最も深刻なのは「その他輸送機械・設備」製造分野であり、この業界の企業の75%が人材不足を訴えている。
Ye.ヴィトチャク教授によれば、機械工業は長年にわたり、IT業界、金融業界、デジタルサービス業界との人材獲得競争に敗れてきた。若いエンジニアたちは、より成長スピードが速く、環境が現代的で、キャリアパスが明確な分野へ流出していった。その結果、多くの企業では、人材不足と同時に高齢化偏重という問題も抱えている。現在、同業界に必要とされているのは、デジタル技能を備え、大量データを理解し、大規模な業務変革プロジェクトに対応できる「ハイブリッド型」の技術者であると、ヴィトチャクは指摘する。
D.エヴドキモフ研究員によれば、機械工業における人材不足の最大の原因は、業界の技術高度化が急速に進む一方で、人材育成システムの変化が鈍いというギャップにある。大学卒業生を増やすだけでは、この不足を短期間で埋めることはできない。現実的な対応策としては、目的別教育、企業内講座、企業実習、そして現職労働者の迅速な再教育などが必要である。市場で即戦力人材を探すよりも、既存社員を追加教育する方が、低コストかつ迅速である。
ITMO大学システム制御・ロボット工学部長のA.プィルキンによれば、機械工業分野で最も需要が高い技能は、新世代の数値制御(CNC)工作機械やロボット化技術複合体を扱う能力に加え、デジタルモデリングや、自動化生産プロセス管理システムに関する能力である。また、モスクワ工科大学「陸上輸送機械」学科長A.ケレルによれば、優先度の高い技能として、産業用IoT(モノのインターネット)、コンピュータービジョン、デジタルツインなども挙げられる。同氏は、「時代遅れの専門家」を育成するのではなく、デジタル技術と物理的ツールを組み合わせ、実際に機能するソリューションを構築できる「統合型エンジニア」を養成することに重点が置かれていると指摘した。
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