過日、モスクワのどこぞやのショッピングモールで閑古鳥が鳴いていたということで、「そら見ろ、やはりロシア経済は崩壊寸前だ」といった記事が配信され、一部で話題になっていた。何度も言うように、確かにロシア経済は非常に厳しくなってきているものの、局所的な現象だけを捉えて、すぐにでも全面崩壊が差し迫っているかのような早合点はしない方が良い。くだんのショッピングモールに関して言えば、立地等が微妙であり、戦争前からほとんど客がいなかったと指摘されている。それに加え、そもそもロシアの小売業が実店舗からネット販売に移行しつつあるという、当たり前の現象も考慮すべきであろう。
前置きが長くなったが、こちらの記事が、ロシアの小売りにおけるネット販売移行につき報告しているので、以下さわりだけ中身をお伝えする。
「Tバンク・ビジネス」が2025~2026年の同行の顧客5,500万人の取引データを調査し、ロシアの消費における実店舗からオンラインへの実態が明らかになった。その結果、小売における主要10商品カテゴリーのうち7カテゴリーで、実店舗の売上高が減少しており、それには衣料品・靴、書籍、子ども用品などがある。
ネット系スーパーマーケットの売上拡大は、通常のスーパーマーケットから支出の一部が流れていることに加え、外食や衣料品向け支出の一部もオンライン側へ移っていることによって支えられているという。
全体としては、53の商品カテゴリーが、マーケットプレイス、サブスクリプションサービス、デジタルサービスの拡大によって、最大4%の売上減少に直面している。具体的には、実店舗型スーパーマーケットの売上は前年比で1%減、衣料品店は12%減、外食産業は5%減となった。
一方で、薬局、医療サービス、教育、通信といった分野は、このような影響をほとんど受けていない。これは、これらの分野における需要が比較的安定していることを示している。ただし、調査では、これら各カテゴリーの絶対的な売上高自体は示されていない。
オンライン販売への売上シフトは、統計局およびロシア・インターネット商取引企業協会のデータからも間接的に裏付けられている。協会によれば、2025年のロシアにおけるインターネット取引額は前年比28%増の11.5兆ルーブルに達した。小売売上全体に占める同分野の比率も、この1年間で16.2%から18.8%へ上昇した。協会によれば、このうち96.2%はロシア国内のオンラインショップやデジタル・プラットフォーム経由の取引であり、越境電子商取引の比率は3.8%にとどまっている。
一方、ロシアの小売売上高全体の伸びは、インフレ率を下回っている。統計局によると、2025年の小売売上高は前年比2.6%増の61.3兆ルーブルとなったが、同年の年間インフレ率は5.6%であった。小売全体に占める食品の割合は48.3%、非食品部門は51.7%であった。
「マグニト・オムニ」のN.ゲルツは、非食品カテゴリーでは確かに需要の一部がマーケットプレイスへ移っていると認めつつも、オンライン市場は従来ネットで買い物をしていなかった新たな顧客層も取り込んでいると指摘している。彼によれば、デジタル・チャネルはすでに同社の既存店売上成長の重要な部分を支えているという。またゲルツは、同一チェーン内ではオンライン販売がオフライン店舗の売上を一部奪っている面もあるが、その効果は限定的だとしている。オムニチャネル型の顧客は支出額そのものが大きく、消費拡大によって、自社内での食い合いの影響を上回っているというのである。そのうえでマグニトは、配送サービス、デジタルサービス、ロイヤルティプログラムを発展させることで、オフラインとオンラインを統合したオムニチャネル戦略に注力していると、同社関係者は説明している。現在、同社の「デジタル製品」は毎月約2,300万人に利用されているという。
ロシアでは、店舗数がここ25年間で初めて減少に転じた。『フォーブス』が報じたところによると、モスクワでは店舗数が1年間で8万7,000店から8万2,500店へと減少し、サンクトペテルブルグでも4万4,000店から4万2,200店へ減少した。同誌によれば、同様の傾向は全国的に見られ、食品小型店からファッション小売、携帯電話ショップに至るまで、ほぼすべての業態に及んでいる。また、2025年には新規出店のペースも急激に鈍化した。食品小売分野では新規開店数がほぼ6分の1に落ち込み、大手チェーンに限って見ても、この指標は30%低下した。その一方で、閉店は増加している。衣料品店では約12%が営業を停止し、「ヴクースヴィル」や「スヴェトフォール」を含む複数のチェーンが店舗展開をおよそ10%縮小した。マーケットプレイスの発展、コストや税負担の増加、オフライン小売の収益性低下といった複数要因が重なった結果であり、店舗数の減少は現代ロシア小売市場の歴史上初めての出来事であるという。
個別のカテゴリーを見ると、需要のオンライン移行はすでにスポーツ用品分野で店舗数減少を招いている。2025年8月1日時点でスポーツ用品店の数は前年比6%減の3,800店となり、人口100万人以上の都市では9.5%減の1,200店となった。一方で、同カテゴリーのオンライン販売はより速いペースで成長している。2025年1~6月にロシア国民がインターネット上でスポーツ用品に支出した額は1,500億ルーブルに達し、前年同期比で25%増加した。同様の動きは文房具市場でも見られる。ロシアではこの1年間で専門文具店が630店以上閉鎖され、総店舗数は5%減の1万1,760店となった。その一方で、文房具のオンライン販売は急増しており、5月だけでも前年比でほぼ70%増加した。
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