
こちらの記事が、イラン危機による石油価格高騰でロシアの財政がどれだけ恩恵を受けるかを論じているので、以下抄訳しておく。
原油価格が3桁に達している状況でも、今年のロシア予算が黒字化することはない。しかし、現在の超過収入は、当初予算と実際の赤字とのギャップを埋める助けにはなり得ると、投資グループ「フィナム」マクロ分析部門長のO.ベレンカヤは試算している。ロシア経済大学教授のN.ナトチェエヴァによれば、2026年のロシア当初予算の赤字額は3.8兆ルーブルである。しかし財務省発表によれば、1~4月だけですでに5.9兆ルーブルの赤字に達している。楽観的シナリオでは、ウラル原油の年間平均価格は少なくとも1バレル80ドルとなる。この場合、年間の石油・ガス収入は約11兆ルーブルに達し、当初予算を2兆ルーブル以上上回る可能性があると、ベレンカヤは見積もっている。そのためには、ロシア産原油価格が残る期間を通じて90ドル以上を維持する必要があるという。
AMarketsの主任アナリスト、I.ラストルグエフによれば、2026年4月の税計算用ウラル価格は1バレル94.87ドルに達し、2014年以来の最高水準となった。この時期、国際指標原油ブレント価格は120ドルを超えていたが、5月初頭には100ドルを下回った。一方、年初のロシア産原油価格ははるかに低水準だった。ウラル価格は1月・2月には平均45ドル、3月に77ドルで、4月にようやく95ドルとなったにすぎず、そのため年間平均価格は4月のピーク水準を下回る可能性が高いという。
それでもなお、予算で設定された基準価格59ドルと比較すると、ここ数カ月の価格は約1.6倍に達している。資産運用会社「アルファ・キャピタル」のD.スクリャビンは、為替レートが変わらないと仮定すれば、この基準を10ドル上回るごとに、国家予算には毎月約1,200億ルーブルの追加収入がもたらされると説明している。スベルバンク・マクロ経済研究センター長のA.イサコフも、原油価格が95ドル前後で維持されれば、為替動向次第ではあるものの、国家予算には毎月約4,500億ルーブルの追加収入がもたらされ得るとの見方を示している。なお、基準価格とは、政府が予算歳入を計算する際に前提とする仮定上の原油価格である。実際の原油価格が基準価格を下回れば、国家予算は収入不足となり、その赤字は国民福祉基金によって補填される。逆に、実際の原油価格が基準価格を上回れば、その超過収入は基金へ積み立てられる。
しかし、歳入増加を抑制している要因として、ルーブル高がある。予算では1ドル=約92ルーブルを前提としていたが、実際の為替水準は75ルーブル近辺で推移している。AMarketsのI.ラストルグエフによれば、通貨高は輸出企業のルーブル建て収入を減少させ、高いドル建て原油価格の効果を部分的に相殺してしまう。アルファ・キャピタルのD.スクリャビンは、ルーブル高によって国家予算は毎月約1,100億ルーブルの歳入不足を被っていると試算する。そのため、ウラル原油価格が年間を通じて95ドルで推移したとしても、追加歳入は月間約3,000億ルーブル程度にとどまるという。
ロシア中央銀行の広報部門によれば、財政ルールがルーブル高の影響を部分的に緩和している。ソフコムバンクの主任アナリスト、M.ヴァシリエフは、財務省が再び外貨購入を始めたことで、ルーブルのさらなる上昇は抑えられるだろうが、急激なルーブル安にはつながらないと見ている。依然として高い政策金利と輸出収入増加が、ルーブル相場を支えているからである。ヴァシリエフによれば、財務省は2026年5月8日から6月4日にかけて、定期的な外貨購入を開始する。取引規模は1,103億ルーブル(日額58億ルーブル)であり、市場予想(3,000~4,000億ルーブル)を大きく下回った。
このように原油価格が高い局面でも、当局は依然として保守的姿勢を維持している。「5Dコンサルティング」のM.ニキーチンは、追加歳入は大規模な予算拡張の理由ではなく、むしろ安全余力として扱われていると指摘する。現在、石油・ガス収入が国家歳入に占める割合は約22%であり、10年前の40%から大きく低下している。そのため、財政運営戦略は短期的な価格急騰ではなく、長期シナリオを前提として構築されているという。
財務省は4月の追加石油・ガス収入を約2,000億ルーブルと見積もっている。しかし、金融市場専門家のO.ゴガラゼによれば、これは理論上可能な4,000~4,500億ルーブルを大きく下回る数字である。理由はいくつかある。まず、まさにルーブル高である。次に、燃料ダンパー制度で、石油企業がガソリン価格を急激に引き上げないよう、政府は補償金を支払っているものである。さらに、ブレント原油に対するロシア産原油のディスカウントが挙げられる。2026年4月のウラル原油割引幅はブレント比23.94ドルだった。(訳注:ウクライナの攻撃によるロシアの輸出能力の低下については、記事では「あえて」触れていない印象)
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