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 ウォールストリートジャーナルのこちらの記事は、米国がロシアやイランへの「デュアルユース(民生・軍民両用)」製品の流入を阻止できずにいる現状、とりわけ中国企業が果たしている役割について論じている。以下、要旨をまとめておく。

 記事によると、2025年3月、米軍とイスラエル軍がイランを攻撃していた最中、中国・厦門(Xiamen)の企業「Victory Technology」が、イラン向けにドローン用エンジンを売り込むメールを送っていた。同社が扱っていたのは、ドイツ設計のLimbach L550エンジンで、これはイランの自爆型ドローン「シャヘド136」に使用されている重要部品である。ロシアも同型ドローンをウクライナ戦争で大量使用しており、米国は同エンジンのロシア・イラン向け輸出を禁じているのだが、中国企業はかなり公然と販売活動を行っている。

 中国企業はエンジン、半導体、光ファイバーケーブル、ジャイロ装置、リチウムイオン電池など、多様な軍民両用品をロシアやイランへ大量輸出している。以前は制裁回避のために貨物名を偽装していたケースも多かったものの、最近では隠そうとすらしない例が増えている。

 特に問題視されるのがドローン戦争である。冷戦期には核兵器や弾道ミサイルの拡散防止が中心課題だったが、現在のドローンは比較的低価格で、市販部品を組み合わせて製造できるため、追跡や規制が難しい。さらに、中国が西側製部品の「中継地」となってきただけでなく、最近では中国国内で類似部品そのものが生産されるようになり、小規模企業が制裁を恐れず供給している。

 また、香港のペーパーカンパニーを利用した調達ネットワークも存在する。米財務省はイラン系業者ハメド・デフガーン関連企業に制裁を科したが、翌年には別の香港企業群が新たなフロント企業として登場し、いたちごっこが続いている。中国政府は「法令に従って輸出管理を行っている」と主張しているが、元米財務省高官らは、中国当局は実質的に見て見ぬふりをしていると批判する。

 さらに、2024~25年にはロシア向け光ファイバーケーブル輸出が急増した(上掲グラフ参照)。これは、ロシア軍が有線式FPVドローンを活用してウクライナ軍の妨害を回避したことと関係しているとみられる。ロシア国内工場が攻撃された後、中国からの輸出はさらに拡大した。リチウムイオン電池輸出も同様に増えており、軍用ドローン生産との関連が濃厚である。

 米国の狙いは完全阻止ではなく、ロシアとイランの調達コストを引き上げることにある。質の低い中国製部品を使わせることで性能低下を招き、一部のロシア製シャヘド型ドローンが墜落しているとの報告もある。ただし、現代戦では「高性能少数」より「低性能多数」が有利な場合もあり、米側も「100機の短時間飛行ドローンと、50機の高性能ドローンのどちらが脅威か」という難しい問題に直面している。


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