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 田畑伸一郎(編著)『ロシア北極域経済の変動 ―サハ共和国の資源・環境・社会』(北海道大学出版会、2025年)で、私は「ダイヤモンド:制裁で交錯するグローバルとローカル」という章を書いたのだが、同書が世に出てから1年余りが経った。その後もロシアのダイヤモンド採掘をほぼ独占するアルロサ社のことは気になっているのだが、このほどこちらの記事が制裁等で経営状況が厳しくなってきていることを伝えたので、以下抄訳しておく。

 世界最大のダイヤモンド生産企業である「アルロサ」は、7月1日に予定されていた従業員給与の恒例の物価連動の賃上げを延期すると発表した。理由として、同社は業界における「前例のない危機」、売上の落ち込み、そして人件費の最適化の必要性を挙げている。副社長兼人事部長のO.マカロヴァが、「通常、当社は7月1日から物価連動の賃上げを実施してきたが、残念ながら今回はその時期に実施することができず、延期せざるを得ない。この問題は一連の最適化措置の中で最も敏感なもの」と発言した。

 実際、アルロサの財務指標は芳しいものではない。2025年の売上高は2,411億ルーブルとほぼ横ばいだった一方、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)は26%減の578億ルーブルへと急落した。この結果、同指標に基づく利益率は、販売価格の下落とコスト上昇を背景に、33%から25%へと低下した。

 危機の要因としては、第1に、制裁圧力がある。西側の制裁により、アルロサは主要市場から締め出された。アジア市場へのシフトも進めているが、ディスカウント販売や物流コストの増大を伴っている。第2に、世界需要の低迷がある。世界のダイヤモンド市場は、循環的ショックと構造的ショックの双方に直面している。前者はインドでの在庫過剰や中国での需要減退に起因し、後者は合成ダイヤモンドの人気上昇や若年層の消費嗜好の変化に関連している。2026年初時点で、1カラットダイヤモンドの価格指数は、2025年同時期と比べて10%下落している。第3に、ルーブル高がある。輸出企業である「アルロサ」は為替レートの影響を受けやすく、ルーブル高は輸出契約から得られるルーブル建て収入を減少させる。第4に、在庫の問題がある。アルロサは依然として「在庫積み上げ型」の操業を続けており、ダイヤモンドの生産量(2,970万カラット)が販売量を上回っている。在庫は1,485億ルーブル分に達し、これは同社時価総額の約49%に相当する。

 問題の深刻さは株価の動きにも表れている。2026年4月末時点で、モスクワ証券取引所におけるアルロサの株価は1株30ルーブルを下回り、過去12年間で最低水準を更新した。2021年9月のピーク時(約154ルーブル)からは、時価総額が80%減少している。

 「売上を増やすことができない」状況の下で、同社は雇用維持のために、コスト削減を余儀なくされている。具体的には、賃上げの延期、高度技能・人材不足分野における賃率や時給の個別見直しのための追加資金の見送り、トップマネジメントの人件費および人数、さらに専門職・事務職の削減を決めている。

 もっとも、厳しい状況の中でも、経営陣や一部アナリストは回復の可能性を見ている。最大の期待は、世界市場でのダイヤモンド不足の発生にある。アルロサの企業財務部門責任者S.タヒエフによれば、2022~2023年に積み上がった在庫は、毎年1,500万~2,000万カラットのペースで減少している。すべての宝石における供給不足は、早ければ2026年末にも生じる可能性がある。特に大型のダイヤモンドや宝石ではすでに価格回復の兆しが見られる一方、中小サイズでは動きがまちまちである。

 マカロヴァは、経営陣が状況を継続的にモニタリングしており、市場の持続的回復の兆しが現れ次第、賃上げの問題を再検討すると約束した。また、2026年予算には引き続き四半期および年次のボーナスが盛り込まれている。

 さらに前向きな材料として、アナリストは2025年分の配当として1株あたり2.5ルーブルの支払いが行われる可能性を指摘しており、これは現在の株価水準に対して約6.2%の配当利回りに相当する。


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