ロシアが「南北輸送回廊」と称すると、それは普通、ペテルブルグ~モスクワ方面からカスピ海エリアを通りイラン領を抜けインド洋に達する輸送ルートを意味する。しかし、北東アジアにおいても、やはり南北の輸送回廊が構想されており、それは中国からサハ共和国を通って北極海に出るルート案ということらしい。こちらの記事がそれについて報じているので、以下抄訳しておく。なお、上掲地図は記事とは関係ないが、地理的なイメージを掴みやすいようにこちらから拝借した。
中国企業は、サハ共和国を経由して北極域へと至る「南北」の国際輸送回廊プロジェクトに関心を示している。共和国のA.ニコラエフ首長が明らかにした。プロジェクトはすでに実行段階に移行しており、サハ共和国ではモヘ~ナイバ区間の整備が始まっている。計画が実現すれば、サハは大きな変化を迎えることになるだろう。そして同時に、アジアと欧州を結ぶ貨物輸送システム全体にも影響が及ぶ。
このルートは、鉄道・河川・海上輸送を組み合わせた複合輸送(マルチモーダル輸送)を想定している。第1段階では、中国からの貨物が鉄道でジャリンダ~モヘの国境通過地点まで運ばれる。その後、ヤクーツク近郊のニジニベスチャフまで輸送され、そこで河川輸送に積み替えられ、ナイバの海港まで運ばれる。最終段階では海上輸送に切り替えられ、西方へ、北極海航路などを経由して輸送される。
このプロジェクトを実現するためには、大規模なインフラ整備が必要となる。具体的には、アムール川を渡る鉄道橋の建設、中国との国境通過拠点の整備、スコヴォロジノ~レイノヴォ鉄道の近代化、さらにニジニベスチャフ~ティクシ間の新線建設などが挙げられる。これらはいずれも、より広範な北極海横断輸送回廊構想の一部である。
このルートが重要とされる最大の理由は、距離を大幅に短縮できる点にある。北極海航路は、欧州とアジアを結ぶ最短の海上ルートである。スエズ運河経由では輸送に38~38日を要するのに対し、北極海航路ではわずか19~20日で済む。ほぼ半分である。
ロスアトムのA.リハチョフ総裁によれば、中国側パートナーはすでにこのルートの「魅力を味わい始めている」。昨夏のパイロットプロジェクトは、現在では継続的な商業輸送へと発展している。
ルートの要となるレナ川も、大きな潜在力を持つ。専門家の試算では、その物理的輸送能力は航行期間中に1,000万~1,500万tに達しうるとされる。ソ連時代には2,000万tという予測もあった。比較として、2024年のレナ川流域での輸送量は290万tにとどまっている。
しかし、こうした野心的な計画には厳しい制約も存在する。第1に、航行期間の短さである。北極は決して好条件の環境ではなく、輸送可能な期間は限られている。多くの区間で通年運用の能力が整っていない現状では、大規模化には疑問が残る。第2に、輸入技術への依存である。ポンプや制御システム、砕氷設備など、多くの重要部品はいまだに海外からの調達に依存している。国産化は進められているものの、その進展は遅い。
北極域におけるいかなるプロジェクトも、必然的にコストが高くなる。物流費の上昇、並行輸入の必要性によるサプライチェーンの複雑化、建設期間の長期化、これらすべてが運用コストの増大につながる。さらに「北極プレミアム」とも言うべき要素、すなわち資材・機材・人員に対するより高い要求も加わる。その結果、北極プロジェクトは温帯地域の同種プロジェクトに比べて著しく高コストとなる。
ロシアにとって、北極海航路の発展は構造的な利点をもたらす。経済面では、資源採掘・加工に関わる北極プロジェクトの進展、輸出拡大、新たな物流ルートの創出が挙げられる。産業面では、砕氷船やクレーン、特殊機械に対する需要を背景とした国内機械工業の発展が期待される。地政学的には、重要なトランジット・ルートに対する支配力の強化と、スエズ運河やマラッカ海峡への依存低下につながる。中国にとっては、既存のルートに代わる選択肢となる。
また、ムルマンスク州知事は、現在鉄道で輸送されている貨物の一部を北極海航路へと切り替えるべき段階に来ていると指摘している。インフラと船隊はその準備が整っているという。さらに、サハ共和国経由のプロジェクトが実現すれば、中国は北極域への直接かつ短距離のアクセスを得ることになる。一方ロシアにとっては、国内でも最も困難でありながら将来性の高い地域の発展に向けた強力な推進力となる。
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