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 イランとの戦争によりホルムズ海峡を通る石油供給が事実上停止し、価格が上昇している状況を背景に、米国は3月12日までにタンカーに積み込まれたロシア産原油について、4月11日まで取引を認める方針を決めた。こちらの記事が、それにより実際にロシア経済にどの程度の恩恵が生じるかについて、有識者の見解をまとめているので、以下各専門家の発言要旨をまとめておく。

 ロシア国際問題評議会のI.ティモフェエフ事務局長は、今回の制裁緩和は特定の企業に関するものではなく、ロシア産、またはロシア由来の石油に関する一般的な取引、つまり販売、輸送、保険が許可されていることを重視する。バイデン政権下で採択された米大統領令のいくつかの条項が停止された。トランプ大統領が最終的な決定を下したのは、原油不足に伴う「価格ラリー」への懸念からである。ただし、ワシントンがこの結論に至るまでには時間を要した。

 一方、ロシア政府付属の金融大学の専門家I.ユシコフは、この許可の内容が曖昧である点に注意を促す。今回の一般ライセンスは実務的措置ではなく、市場を落ち着かせるための言葉による介入にすぎない可能性がある。米国は、制裁やディスカウント、そして以前の低い世界価格のために滞っていた原油が、いま市場に出てくるかのように示したい。

 米国は3月6日、4月4日までの30日間、ロシア産原油をインドが購入することを認めていた。BGP Litigationのパートナー弁護士S.グランジンによれば、この措置は、制裁対象のタンカーによるものも含め、ロシアのあらゆる生産者による原油を対象としていた。今回の新たなライセンスは、すでに制裁下にある別の企業にも関係するものである。これまでは、制裁対象のタンカーは港への入港、石油取引に対するドル決済、そしてそれらの船舶へのサービス提供を恐れて控えられていた。今後はこれらの制限が一時的に取り払われるはずだと、グランジンは説明する。

 米国・カナダ研究所の上級研究員P.コシキンによれば、制裁の緩和や強化は、トランプが圧力や報奨の手段として用いるテコである。トランプは世界の指導者を通じてイランに影響を及ぼす方法を模索している。トランプは対イラン戦争によって今のところ自らを行き詰まりに追い込んでいる。目標も期限も明確に示されていない。米国ではガソリン価格がすでに上昇しており、選挙シーズンは真っ最中で、世論調査も否定的な傾向を示している。トランプが9月までイランとの戦争を続ける用意があるなら、代替となる原油供給源を見つけることが重要になる。問題は、ロシアに対する石油面での譲歩が議会やトランプ政権内でどのように受け止められるかで、そこには多くの強硬派がいると、コシキンは指摘する。

 金融グループ「フィナム」のアナリスト、S.カウフマンによれば、戦争が長引くほど、このような制裁緩和が延長される可能性は高まる。ここ4カ月間、ロシアの主要燃料エネルギー企業の輸出は、米国の制裁とインドに対する関税圧力によって困難になっていた。インドはロシア産原油の購入量を日量150万~200万バレルから100万バレルへと減らしていた。同規模の代替市場が存在しないため、行き先が明確でないロシア産原油が「海上」に滞留する事態が生じていた。これらの原油は、アラブ産原油に依存する東アジアや南アジアが取り合うことになる。タンカーに滞留している在庫はインドと中国が吸収するだろう。トランプはそれを加速し、簡素化した。市場は、G7の備蓄から放出される4億バレルを十分とは見ていない。ホルムズ海峡の封鎖による供給障害は日量1,200万~1,400万バレルと見積もられる。現在の状況と1カ月の一般ライセンスでは、タンカーに滞留しているロシアの在庫の一部を処理できるだけで、将来の安定した輸出の回復を保証するものではないと、カウフマンは言う。

 ベロゴリエフ、カウフマン、ユシコフの推計では、タンカーに積まれたロシア産原油の在庫は1億2,000万~1億5,000万バレル程度であり、ホルムズ海峡封鎖による需給ギャップを埋められるのはせいぜい2週間だという。「市場は多少楽になるが、根本的でも長続きするものでもない」とベロゴリエフは述べる。カウフマンによれば、これら滞留在庫のうち、真に需要がなかったものは半分以下であり、それが追加供給となる。その大部分は出発地から目的地へ向かう途中にある。アラブ産原油の一部が紅海経由に振り替えられ、イランからの供給も部分的に続いたとしても、ホルムズ海峡の航行が正常化しても原油価格が100ドルを大きく下回る可能性は低いという。ベロゴリエフは、米国の制裁緩和の最大の効果は、原油価格が高止まりする中でロシア産ウラル原油のディスカウント幅を縮小させることだと考えている。


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