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 こちらで、A.ダガエフ氏という専門家が、グリーンランド問題における中国およびロシアの要因について分析しており、両国がグリーンランドに実際に関与している度合いはごく小さいという、真っ当なことを論じている。以下では、ロシアに関連した部分のみ抄訳しておく。

 トランプ米大統領はグリーンランド支配の必要性について、そうしなければ中国とロシアが米国北部国境に近い北極圏で危険なほど存在感を強める可能性がある、といった理由を挙げて説明している。だが実際には、グリーンランドにおけるモスクワと北京の影響力は極めて限定的であり、より不安定化を招いているのは、むしろワシントン自身の行動である。

 国境や大陸棚をめぐる紛争が徐々に解決されるにつれ、グリーンランドは、カナダやノルウェーなど近隣諸国との協力を、北極環境の保護、漁業、科学研究といった分野で拡大する可能性を得ている。それに対し、中国もロシアも、グリーンランドの主要パートナーには含まれていない。

 ロシアの北極政策では、グリーンランドは他国と区別して言及されることすらない。重点は自国の北極圏、すなわち資源開発と北方航路(北極海航路)の発展に置かれている。モスクワは北極における主権の優位を主張し、ヌーク(グリーンランド政府)と同様に、北極を平和と協力の地域とすることを支持している。

 近年ロシアは、自国の北極圏で軍事インフラ整備を加速させている。旧軍事基地の再稼働、北方艦隊の強化、新たなインフラの建設が進められている。これらはすべて、グリーンランド方面から米国への攻撃が行われ得る潜在的ルートとして、米国の懸念を招いている。一方クレムリンは、地域を軍事化しているのはむしろNATO諸国の側だと非難している。

 グリーンランドは、北極対話においてロシアにとって重要なパートナーとは言えない。両者の主な接点は北極評議会の枠内での間接的なやり取りに限られてきた。ウクライナ戦争以前には漁業分野で一定の協力があったが、2022年以降、ロシアと北極諸国との対話はほぼ途絶えている。

 モスクワが北極やグリーンランドを実際の戦線に変えようとしている兆候は見られない。ロシアのこの分野での政策は、むしろ防衛と、西側の軍事インフラに対する抑止を目的として展開されている。

 現在、ホワイトハウスの主にとってグリーンランドの支配は、米国の北極圏の安全を保証するだけでなく、経済的利益を得るための鍵とも映っている。しかし実際には、中国やロシアからの想定上の脅威は、グリーンランドにとっても北極にとっても、島が「カウボーイ的に」強奪されるという見通しより、はるかに小さな危険にすぎない。

 カウボーイ・シナリオは、大西洋横断パートナーシップを損ない、国境見直しという危険な前例を作るだけでなく、ロシアと西側の鋭い対立下にあっても地域の安全と安定を保証してきた「北極の例外性」という原則そのものを破壊することになる。

 北極評議会の機能が麻痺しているとはいえ、現行の秩序は、グリーンランドにとっても、他の北極・準北極諸国にとっても、そして米国にとっても受け入れ可能なものだ。ところが、北極の中心部における米国の軍事的・政治的プレゼンスを拡大すれば、クレムリンでさえ形式上は反対している地域の軍事化を、かえって加速させるだけだろう。その結果として、米国の北方国境における危険は、ほぼ確実にさらに高まることになる。


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