novak3

 ロシアという国の、実に良く分からないところの一つは、一連の経済指標を国家機密として非公開にしながら、政権幹部がその数字を普通に語ったりすることである。特にエネルギー担当のA.ノヴァク副首相が、毎年初頭に『エネルギー政策』という雑誌に寄稿し、前年のエネルギー関連の指標を気前良く発表することが、恒例と化している。今年もこちらのノヴァク論稿が発表され、2025年の世界とロシアのエネルギー情勢について論じている。ただ、石油生産量こそ明らかにしているが、一頃に比べるとデータを出し惜しんでいる印象がある。ともあれ、以下で論文を翻訳しておく。

 現代世界は大規模な地政学的・経済的変容の只中にあり、インフラの信頼性、技術の発展、持続可能なパートナーシップ関係は、グローバルなエネルギー需給バランスの安定を維持するために決定的に重要である。現在の状況および世界エネルギー市場の将来展望の分析、主要プレーヤーの燃料・エネルギー複合体の進化、ならびに国家と産業企業の相互協力の可能性は、エネルギー産業の協調的かつ信頼性の高い運営が世界経済の成長の見通しと人類全体の未来を左右する以上、引き続き国際社会の注目の的となっているのである。

 2025年のエネルギー部門の様相は、経済成長の重心が東方へと移行し続けていること、および世界経済全体の成長率によって大きく左右されている。年間を通じて、世界の燃料・エネルギー複合体は地政学的要因の圧力下に置かれていた。制裁は経済的威嚇の手段へと転化し、その結果、世界の分極化、技術の重複、ならびに貿易フローの再編成が進んでいる。予測に反し、従来型エネルギー源は依然として世界のエネルギーバランスにおいて主導的地位を占め続けている。石油・ガス・石炭に対する高い需要は維持されているのみならず、引き続き増加している。実際、2025年における従来型エネルギー源への需要は1%増加したのである。主要なトレンドとして、世界的な電力需要の増加が引き続き挙げられる。年末時点でその伸び率は3.3%に達し、世界経済の平均成長率(3.2%)を上回った。高い電力消費は、電力集約型の計算技術や人工知能の導入、自動車輸送、電化、ならびにロボット化の進展によってもたらされているのである。

 2025年の世界石油市場は、地政学的不安定性を背景に、需要の緩やかな増加を示した。需要は日量1億460万バレルに達し、前年と比べておよそ日量100万バレル増加した。需要の主たる牽引役は引き続きアジア太平洋地域であり、同地域は2025年における世界の石油消費増加分のおよそ半分を担った。欧州では「グリーン」政策の影響を受けて、石油消費が現在の日量1,400万バレルから2050年までに日量1,000万バレルへと減少すると予測されているにもかかわらず、同じ期限までに世界全体の石油消費は日量1,500万〜2,000万バレル増加する可能性がある。この点に関連して、石油産業への投資不足が主要なリスクの一つとして残っている。2025年における石油の探鉱および生産への投資額は、暫定的な評価によれば約4,200億ドルであり、10年前の水準より3分の1少ない。投資の縮小は生産量の減少につながる。新規投資を促進しなければ、世界的に増加する石油需要は供給によって賄われなくなる。とりわけ、ますます多くの国が採掘困難な資源の開発へと移行しており、それにはさらに多額のコストを要することを考慮すればなおさらだ。また、人為的に作り出される障壁もリスクを伴う。例えば、世界の石油市場に対する追加的な不安定化要因となったのが、特定のロシア石油企業に対する米国の制裁である。ロシア産石油の輸入国の範囲を制限しようとする試みは、不可避的に世界のエネルギー資源供給の安定性を損ない、エネルギー市場における世界的な変動性を強める。年初以降、ベネズエラおよびイランにおける地政学的出来事も、世界石油市場にとって新たな混乱要因となっている。

 世界のガス市場は安定した成長を示している。2025年には世界のガス需要が約1%増加した。主な増加は欧州および北米によってもたらされ、これらの地域では芳しくない気象条件により、発電部門および住宅・公共サービス部門における消費が拡大した。また、中東およびアフリカでも、産業用途および発電向けのガス消費の増加に伴い、需要の伸びが観測されている。2025年の実績として、世界のガス需要は4兆3,000億立米に達したのである。とりわけ急速に成長しているのが液化天然ガス(LNG)の分野である。2000年以降、世界のLNG輸出はほぼ4倍に増加し、2025年には約4億3,000万tに達した。世界のガス貿易に占めるLNGの比率は約45%であった。輸出国の構成は継続的に拡大しており、これはガス市場が深い構造的転換を遂げつつあることを示している。世界のLNG貿易の成長率は、世界全体のガス需要の伸び率を大きく上回っている。今後5〜10年のうちに、世界のLNG輸出は6億〜6億5,000万tまで増加し、2025年の水準をほぼ50%上回る可能性がある。最大の牽引役となるのはアジア太平洋地域であり、とりわけ中国とインドが中心となり、世界の需要増加分の最大40%を占めることになる。

 エネルギー転換の方針が表明されているにもかかわらず、石炭は依然として安定した地位を維持している。2025年における世界の石炭消費量は、過去最高の88億5,000万tに達した。暫定的評価によれば、2025年における世界の発電量に占める石炭の比率は33.3%であり、総発電量は1万736テラワット時で、前年より0.3%増加した。経済成長、電気自動車の普及、ならびにデータセンターの発展は、依然として石炭に対する比較的高い需要を下支えする重要な要因であり、その需要のピークはいまだ到来していない。同時に、石炭火力発電は質的に変化しつつあり、「高効率・低排出」の原則に基づく最新のエネルギー施設が導入されている。この分野の先導役は中国である。

 再生可能エネルギーでは、2010年から2024年にかけて、太陽光発電および風力発電による発電量は0.4兆kWhから4.6兆kWhへと、12倍以上に増加した。世界の電力バランスに占める再生可能エネルギーの比率は、2%から15%へと拡大した。この成長において決定的な役割を果たしたのが中国であり、同期間における同国の太陽光および風力発電量は0.05兆kWhから2兆kWhへと、ほぼ43倍に増加した。2024年時点の世界の再生可能エネルギー設備容量の合計は約3,340ギガワットであり、その内訳は太陽光発電が2,200ギガワット、風力発電が1,136ギガワットである。再生可能エネルギーは経済的競争力をますます高めつつあり、ニッチな分野から世界エネルギー発展の本格的な推進軸へと転換しつつあるのである。

 2025年の実績として、水力発電所および原子力発電所による発電量は、それぞれ約4.4兆kWh(世界の総発電量の14%)および約2.8兆kWh(同9%)に達すると見込まれている。2025年には世界で3基の新たな原子炉発電ユニットが運転開始され、そのうち1基はロシアにおけるクルスク第2原子力発電所の1号機であり、出力は1,250メガワットである。さらに、インドのラジャスタン原子力発電所7号機(出力630メガワット)および中国の漳州原子力発電所2号機(出力1,126メガワット)も稼働を開始した。原子力発電と水力発電を合わせると、世界の電力生産のおよそ4分の1を供給しており、その戦略的重要性が改めて注目される。原子力発電および水力発電は、低排出で信頼性の高い電源として、今後も世界のエネルギーバランスにおける中核的構成要素であり続ける。

 大規模な変動が進行しているにもかかわらず、ロシア経済およびロシアのエネルギー産業は、世界的な変化に首尾よく適応している。ロシアの燃料・エネルギー複合体は引き続き着実な発展を遂げている。わが国は国内市場をエネルギー資源で完全に賄い、輸出の義務を果たし、自国の技術を発展させている。これにより、世界のエネルギー市場における主要な参加者の一つとしての役割を維持している。燃料・エネルギー複合体各部門の長期的発展の見通しは、2025年政府により承認された「2050年までのロシア連邦エネルギー戦略」において示されている。同文書によれば、ロシアはエネルギー主権の強化を継続し、エネルギー資源の供給先の多角化を進めるだけでなく、燃料・エネルギー複合体向けの輸出技術および完成された生産ソリューションのラインアップを拡充することで、新たな多極化世界のエネルギー地図において指導的地位の一角を確保することになっている。

 ロシアの石油産業は安定性を示しており、世界の原油生産のおよそ10%を担っている。2025年の実績では、生産量は約5億1,200万tに達した。2025年における友好国向け供給の比率は90%を超え、原油供給のおよそ80%がアジア向けとなっている。2021年にはこの比率はその半分の40%であった。石油企業は、国内の生産水準を維持し、世界市場における産業の競争力を確保するため、新たな油田の開発を継続している。税制優遇措置の導入により、採掘条件の厳しい油田における生産を支援することが可能となった。大規模プロジェクトも進行しており、その中でも最重要のものが、高品質の低硫黄原油の高い生産潜在力を有する「ヴォストーク・オイル」計画である。戦略的課題として、掘削および油層回収率向上のための国産技術の創出、ロシアの油田サービス企業の発展、ならびに採掘困難な資源の開発促進が掲げられている。国家プロジェクト「新たな原子力・エネルギー技術」では、石油・ガス産業の全分野向け機器の開発が計画されている。「地質探査」分野では、海洋地震探査用移動型複合装置、陸上地質探査用の地震振動発生装置、ならびにGeoAudit技術の試作モデルの量産体制が整えられている。試験の完了結果に基づき、地質探査向けの追加的な専門機器4種類について量産開始の可否が決定される予定である。「掘削および生産」分野においては、多段階水圧破砕が可能な多枝井注入用国産設備が既に試験を成功裏に終え、量産に向けた準備段階に入っていること、またロシア製の坑井用レバー式トラクターが、垂直統合型石油会社(VINK)のプロジェクトにおいて既に使用されていることが特筆される。石油精製分野では、コークスのウォータージェット切断用工具が開発され、試験に成功している。これは遅延コーキング装置におけるコークス水力切断システムの中核要素であり、将来的に原油の精製深度を最大100%まで高めることを可能にするものである。石油化学部門も発展を続けている。熱分解(パイロリシス)設備の総能力は過去6年間で1.9倍に増加し、これにより世界の石油化学産業に占めるロシアの比率は1.8%から2.5%へと拡大した。大量生産型ポリマーの生産量は1.4倍(750万tまで)に増加し、消費に占める輸入品の比率は23%から17%へと低下した。2025年には、「ニジネカムスクネフチヒム」(エチレン能力60万t)および「イルクーツク・ポリマー工場」(エチレン能力66万t)において新たな熱分解設備が成功裏に稼働開始した。2030年までの石油・ガス化学分野への総投資額は3〜4兆ルーブルに達する見込みである。さらに、炭化水素原料の高度加工と大量生産型ポリマーの製造を目的とした、世界水準の石油化学コンプレックスが複数稼働開始することが見込まれており、表明されている投資プロジェクトが実現した場合、2035年までにその生産量は1,400万tを超えることになるのである。

 東方への供給先の計画的な多角化は引き続き進められている。2025年、友好国向けガス供給の比率は70%近くに達し、そのうちLNGによる供給は約25%であった。CISの一部諸国への輸出増加、欧州向け供給の縮小、ならびに中国向け供給の継続的拡大を背景として、ガス輸出に占める友好国の比率は上昇した。2025年における「シベリアの力」パイプライン経由の中国向け輸出量は、暫定的評価によれば約380億立米に達し、同ガスパイプラインは設計能力に到達した。現在、東方への新たな供給ルートの構築に向けた作業が進められている。ロシアは世界第4位のLNG生産国であり、2025年の生産量は約3,200万t、世界市場の7%を占めている。生産能力の発展は技術的成果によって後押しされている。2025年末までに、LNG関連設備21種類(累計)が国産化された。これには低温ポンプ、圧縮機、遮断・制御弁、その他の専門設備が含まれており、これによりLNGプロジェクトはロシア独自の天然ガス液化技術に基づいて実施可能となっているのである。ガス産業においては、国内市場にも重点が置かれている。2025年のロシア国内のガス消費量は約5,220億立米であり、これは中国とインドの合計消費量に匹敵し、東南アジア全体の3倍以上、EUの1.5倍に相当する規模である。2025年末時点のガス化率は、暫定的評価で少なくとも75%に達した。国内の西部地域と東部地域のガス輸送システムの統合が進められており、これにより全国統一のガスネットワークが形成されることになる。社会的ガス化プログラムの実施も継続された。また、2035年までのガス燃料車市場発展コンセプトが承認され、これにより自動車燃料としてのガス利用が拡大されることになる。ガス化学産業の発展も継続している。2025年末には、世界最大級のガス処理工場の一つであるアムール・ガス処理工場において、計画されている6系列のうち第5系列の試運転・調整作業が進められていた。さらに、アムール・ガス化学コンビナートプロジェクトも進行中である。

 主として世界市場における不利な価格環境に起因するいくつかの困難が存在するにもかかわらず、ロシアの石炭産業は堅調さを示している。産業再編のプロセスが進められており、生産拡大の牽引役は極東地域となっている。とりわけ、2025年7月にはサハ共和国ネルユングリ地区において、埋蔵量約1億2,700万tの新たな露天掘り炭鉱が稼働を開始した。過去10年間で、極東連邦管区における石炭生産量は2倍以上に増加し、1億2,800万tに達している。2025年、政府は石炭産業企業支援プログラムを開始し、これには税金および社会保険料の支払い猶予、石炭輸出輸送における物流コストの一部補填、ならびに石炭企業に対する個別支援プログラムが含まれている。これらの措置により、石炭の生産量および供給量の指標を2024年水準に維持することが可能となった。暫定的評価によれば、2025年の石炭生産量は新地域を含めて4億4,000万tに達した。輸出フローの80%はアジア太平洋地域諸国向けである。既存鉱山の拡張および新規採掘・加工施設の建設に向けたプロジェクトの実施も継続されたのである。

 2025年のロシアの電力消費量は、速報値によれば1兆1,790億kWhであった。需要家への信頼性の高い安定した電力供給に対する電力系統の備えは、設備の技術的状態を必要な水準に常時維持し、その近代化を進め、新たな発電設備を建設することによって確保されている。2025年、国内の発電所では、修理または近代化を経た複数の設備が稼働を開始した。具体的には、シャトゥーラ火力発電所、プリモルスカヤ火力発電所、スルグト火力発電所第2、アルガヤシ火力熱併給発電所の発電ユニットである。電力供給の信頼性を高め、各地域の経済的潜在力を実現することを可能にする重要な発電設備も稼働を開始した。2025年には、シベリア、南部、極東における新規発電設備の建設に関する決定が下された。カリーニングラード州では、独立した自前の電力系統が構築された。2025年2月には、同地域の電力系統がBRELL(バルト諸国・ロシア・ベラルーシ電力環)から切り離されることが確保された。現在、同地域の発電所の総設備容量は1.92ギガワットであり、地域の最大電力需要を2倍以上上回っている。すなわち、カリーニングラード州の電力系統は安定した自立運転を示している。エネルギーミックスの多様化も継続して進められている。2025年には、アストラハン州、カルムイク共和国、ブリヤート共和国などにおいて新たな再生可能エネルギー設備が運転開始された。再生可能エネルギー発電の設備容量は、2023年比で2050年までに40%以上増加する見込みである。これには、再生可能エネルギー支援プログラムを2035年まで延長するという先行決定が寄与することとなり、同プログラムはロシア国内における再生可能エネルギー発電設備製造の現地化、ならびに送電網やエネルギー貯蔵システムを含む関連インフラの整備を促進する措置を含んでいる。

 強調しておきたいのは、世界エネルギー構造の転換、物流チェーンの変化、パートナー関係の再構築という状況下にあっても、ロシアはエネルギー産業各部門の生産力および技術的潜在力を着実に発展させ続け、世界のエネルギー安定の主要な保証主体の一つとしての役割を果たし続けているという点である。


ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
にほんブログ村 海外生活ブログ ロシア情報へ