
ウクライナにいつ「戦後」が訪れるのかはまだ分からないが、停戦に向けた外交が活発化しているためか、ウクライナでは「戦後」についての展望を論じるような議論が散見されるようになっている。そうした中で、ウクライナ科学アカデミー人口・社会研究所のエラ・リバノヴァ所長がこちらで戦後のウクライナの人口問題について語ったインタビューが目に留まったので、以下発言要旨をまとめておく。
第二次世界大戦後のような出生率の急回復、「戦後ベビーブーム」は、現代のウクライナでは起こらない。①現代では子どもは「経済的資産」ではなく、高い教育・生活コストを伴う存在。②避妊と家族計画が普及し、出産は個人の合理的判断に基づく。③戦争による不安、住宅・雇用の不安定さが出産意欲を抑制。
戦前(2021年)にすでに低水準だった出生率は、戦時中に約0.7まで低下したとされ、戦後に回復しても最大で1.6程度が限界で、人口を維持できる水準(約2.15)には届かない。
政府による児童手当や出産支援金は、出生率向上策というより、子育て世帯の貧困対策。金銭的インセンティブだけで出産行動は大きく変わらない。むしろ「給付開始待ち」による出産の先送りが起きる場合もある。つまり、出生率問題は 経済支援だけで解決できる単純な問題ではない。
戦争によって国外に移住したウクライナ人は約500万人規模と推定され、多くの女性や子どもが含まれる。結果として、①国内人口の高齢化が急速に進行。②労働力人口が縮小。③年金・医療など社会保障への負担が増大。戦後に一定の帰還は見込まれるものの、大多数が戻るという楽観的シナリオは現実的ではない。
戦後の人口政策として重視すべきは、①早期の国勢調査による正確な人口把握。②出生率幻想に依存しない長期的人口戦略。③労働移民の受け入れを含む現実的な労働力政策。若年層が「戻り、暮らせる」経済・住宅環境の整備。人口問題は、復興政策の「周辺課題」ではなく、国家存続に直結する中核課題。
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