
先日発表された2026年のロシア連邦予算案(2027年、2028年の見通しも含む)に関し、お馴染みのA.プロコペンコ氏がこちらで論評しているので、主な指摘を以下のとおりまとめておく。
最大の予算支出項目である国防費は、ウクライナ侵攻後初めて、わずかに削減されたが、これは平和が差し迫っている兆候ではない。戦争が4年目に差し掛かるにつれ、ロシアの財政はますます逼迫しており、予算は戦争推進派と経済学者たちの妥協案の様相を強めている。前者は国防・安全保障にGDPの8%を確保し、後者はその財源を最もインフレ抑制的な方法で調達する道を得た。その代償を払うのはロシア国民であり、さらなる増税に直面することになる。
財務省は、石油収入が国民福祉基金に組み入れられる基準原油価格を年1ドルずつ引き下げる形で、財政ルールを順守する姿勢を示している。これにより、ロシアのGDPに占める石油・ガス歳入の比率は、2028年までに約3.5%にまで漸減する見込みだ。しかし、これはかなり楽観的な見通しだ。この措置により財政は原油価格変動の影響を受けにくくなる一方、非石油・ガス収入への依存度が高まる。
予算上は「国防」支出が名目上削減されても、経済の生産構造は依然として軍事化されている。2026年から2028年にかけての鉱工業生産の伸びは、主に国家発注と輸入代替政策が軍事需要と結びついた分野によって支えられる見込みである。
2026年の国防費の名目上の削減は、クレムリンがウクライナに対する戦争を終結させる計画を示しているわけではない。国防分野の予算支出は今年度の13.4兆ルーブルから2026年には12.6兆ルーブルへ減少(4.2%減)する見込みだが、隣接分野である国家安全保障・法執行分野の支出は3.5兆ルーブルから3.9兆ルーブルへ増加し、13%の伸びとなる。これらを合わせると、2026年の防衛・安全保障支出はごくわずか(0.6%)な減額にすぎない。そして2027年からは、国防・安全保障支出は再び増加する。これらの分野合計で、支出はGDPの約8%で推移する。つまり、戦争は依然として優先事項である。
基礎シナリオと保守シナリオのいずれも、ロシアに対する制裁圧力が強化されないことを前提としている。しかし2025年に米国を除く全てのG7諸国がロシアに対する制裁を強化し、米国にしても制裁強化をほのめかしている現実がある。クレムリンは西側諸国の制裁を深刻に受け止めているが、最も強力な初期の打撃を乗り切った以上、さらなる措置にも耐えられると認識しているのである。
当局は、新予算を均衡予算であり、インフレ抑制的だと称している。財務省はプライマリーバランスの赤字ゼロを目標に掲げている。中央銀行は低水準で予測可能なインフレを求めている。歳入の縮小と高水準の支出が続く中、ロシア政府は自らの公約に反し、増税を決断した。
2026年より、付加価値税が20%から22%に引き上げられる。同時に、小規模事業者が簡易課税制度ではなく付加価値税を納付しなければならない売上高の基準額が、年間6,000万ルーブルから1,000万ルーブルに引き下げられる。これは実質的に、全ての中小企業にとって税負担の増加を意味する。年間1000万ルーブルは月間80万ルーブルで、コンビニエンスストア、美容院、小規模IT企業の売上規模に匹敵する。
中央銀行にとって、増税は借り入れ増加に代わる許容可能な選択肢である。なぜなら増税にはデフレ効果があるからだ。付加価値率の引き上げは一時的な物価上昇をもたらすが、購買力が低下するため、その後は物価上昇が緩やかになる。あらゆる物が高価になるにつれ、人々はより少ない商品しか購入できなくなり、需要は減少する。政府は事実上、軍事費を一般市民や企業の懐から捻出する方が都合が良いと公然と表明している。結局のところ、経済全体が付加価値税を負担しているわけだ。「戦時国債」を発行したり、単に国内借入を拡大したりする方が、金利面(債務返済が増加するため)でもインフレ面でもコストが高い。
経済当局にとって、今回の予算案はほぼ勝利と言える。経済は、余剰労働力は存在せず、軍事施設を含む生産設備はほぼ完全に稼働しているなど、構造的な限界に直面している。労働生産性の向上がなければ、さらなる成長の余地は存在しない。国家は戦場で燃え尽きる運命にある物品の生産に資源を費やしている。雇用と需要は生み出すが、長期的な成果は生まない。こうした状況下で政府需要を増大させれば、インフレを助長するだけである。
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