このほど、きわめて興味深い本を読んだ。岩下明裕・竹中英俊『日本政治学出版の舞台裏:編集者竹中英俊の闘い』(花伝社、2025年)という一冊である。
政治学の一時代を築いた、ある出版人の証言
京極純一、升味準之輔、佐々木毅、猪口孝氏ら名だたる政治学者の編集担当であり、時代を画するシリーズ『現代政治学叢書』『講座国際政治』を世に送り出した稀代の編集者。東京大学出版会を基盤に、「知」と「人」と「社会」を結び続けたその編集思想、そして1980年代以降の日本政治学・出版界の苦闘のドラマが語られる。
要するに、東京大学出版会で政治関係の出版で名物編集者として名をはせた(後年には北海道大学出版の相談役も務めた)竹中英俊さんに、うちのセンターの岩下明裕さんが聞き取りをした内容をまとめた本である。それにより戦後の東大、政治学、学術出版の歴史を浮き彫りにしている。なお、これも名物編集者である国際書院の石井彰社長も対談に登場する。
竹中さんの仕事で、私個人も非常に思い入れが深いのが、『現代政治学叢書』である。このシリーズが出た当初の私は、経済学者よりも政治学者という自意識の方が強く、その割には体系的な政治学の教育を受けていないという引け目があったので、「この『現代政治学叢書』を全巻読み倒せば、私も立派な政治学者!」という期待感を抱いたのだ。それだけに、当時この叢書の何巻かが発行されず、欠番のままになってしまったことは、私個人にとっても心にぽっかり空いた穴のようになっていた。
ところが、今回『日本政治学出版の舞台裏』を読んで初めて知ったのだが、シリーズの取りまとめ役であった猪口孝さんは、時間はかかったが、欠番のテーマを差し替えて自分で書き上げるなどして、『現代政治学叢書』を当初予定の巻数どおりに完成させたということであった。昨年悲劇的な訃報が伝えられていただけに、ああ猪口孝さんは本当に立派な仕事をされたのだなと、改めて深い感慨を抱いた。
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