あるところでやった講演に向け、上掲のようなグラフを作成したのだけど、他に使う予定はないので、もったいないからここに掲載することにする。ウクライナ・モルドバ・ベラルーシは、ロシアとEUの狭間に位置し、過去10年あまり、地政学的帰属をめぐって揺れてきた。そこで、危機前と位置付けられる2012年と、最新の2024年で、それら3国の商品輸出入相手地域がどのように変化したかを図示したものである。
ウクライナは、元々、対ロシアと対EUの比率が同じくらいだったのが、決然とEU路線を選択し、今やロシアとの貿易は法的に禁止されゼロになっており、構造が一変した。モルドバも、かつては輸出市場としてもガス輸入相手国としてもロシアへの依存度が高かったが、大幅にEUへとシフトした。
それに対し、従来以上にロシアへの依存度を増しているのがベラルーシであり、それは特に輸出において顕著である。一方、輸入において対ロシアの比率が低下しているのが奇異に思われるが、それはベラルーシ原発が稼働しロシアから輸入するガスの需要が低下したこと、またベラルーシ石油精製業が制裁で輸出不振に陥りロシアから原油を輸入する必要性が低下したことに起因していよう。
ここで興味深いのは、「その他CIS」という項目である(なおウクライナはすでにCIS離脱を表明しているがここでは便宜的にCISにカウントする)。ウクライナとベラルーシはその比率がかなり縮小し、モルドバはあまり変わっていない。ウクライナとベラルーシは両国間での相互貿易がかなり大きかったが、それが戦争で途絶えたため、両国とも「その他CIS」が減少したものである。一方、モルドバの「その他CIS」取引は大部分が対ウクライナで、モルドバはウクライナ向けの石油製品供給の中継拠点となっていることなどから、「その他CIS」の数字があまり減っていないということになる。
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