
こちらの記事で、2人の有識者が米国による対ロシア制裁解除の可能性についてコメントしている。そのうち、モスクワ国立大のA.シドロフ氏の発言要旨を、以下のとおりまとめておく。
たとえ双方が望んだとしても、制裁をすぐに解除することはできない。というのも、制裁の解除と発動は、複雑で多段階のメカニズムに支配されており、米大統領は本人の意向にかかわりなくそれに従わなければならないからだ。
このメカニズムは、特別軍事作戦が始まるより前の2017年8月に採択された法律に規定されている。同法では、ロシアはイランと北朝鮮と同列に扱われているため、純粋に法的な理由から、イランと北朝鮮に対する制裁を有効なままにして、ロシアに特別な例外を設けることはできない。今日の連邦議会においても、共和党議員の中に親ウクライナ派がいるため、この法律を廃止するにはまだ票数が足りない。
米財務省のような個々の機関のレベルで課される制裁は、いくぶん簡単かもしれない。同省は大統領直属であるため、トランプ大統領は理論上、ロシアの特定の企業や個人に対する特定の制限措置の解除を命じることができる。たとえば、ロシアの企業や個人が、当初いわゆるSDN(特別指定国民)の対象になった理由や根拠が消滅した場合だ。
しかし、これは主に心理的な効果であり、現実にはほとんど影響を与えないだろう。というのも、貿易・経済制限措置の大部分を占める分野別制裁を解除する方法ではないからだ。問題は、米国が国家安全保障に脅威をもたらすとレッテルを貼っている国家(ロシア、中国など)に制裁を課していることだ。米国の国家安全保障戦略(NSS)は数年ごとに改訂される。ちなみに、トランプ大統領の1期目に採択された前回のNSSは、ちょうど2025年に期限切れとなる。米国の制裁解除プロセスを開始できるかどうかは、新NSSにおけるロシアの位置づけがどのように定義されるかにかかっている。
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