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 こちらの記事で、在ロシア米国商工会議所のロバート・エイジー会頭が、米露経済関係に関するインタビューに応じている。気になった発言内容を以下のとおりまとめておく。

  • ロシア市場から撤退した米企業が150社、ロシア側に買収された米企業が50社、操業を続けている米企業が150社くらい。
  • 商工会議所では、情勢にもかかわらず、すべての委員会が活動を続けている。2024年だけで企業との面談を200以上こなし、ロシア側の省庁とも問題の解決のため折衝を重ねている。
  • 現在、米政府に提出するための報告書を作成中。過去3年間、どんな制裁措置により、米企業がどんな問題に直面したかをまとめている。具体的には、米政府に以下のような4点の要望を働きかけたい。
  • 第1に、我々は航空分野における制裁の解除を求めている。これはスペアパーツの供給と航空機のメンテナンスに適用される。これは商業上の要望というよりは、人道的な必要性である。我々は、仏露商工会議所と航空安全に関して連携しており、共同で「2大陸イニシアティブ」を立ち上げ、現在この問題についての共同見解を形成しているところ。
  • 第2に、米企業に対する対ロシア投資の解禁である。多くの企業がロシアでの事業拡大や生産拡大に投資する用意があるが、この禁止措置が非常に足かせとなっている。
  • 第3に、国境を越えた決済の問題を解決するために、ロシアの銀行に対する制裁を解除することである。これによって、米企業もロシア企業も、そしてその他の企業も、ビジネスを行うためのコストを即座に削減することができる。現在の制限のせいで、ビジネスを行うためのコストは数倍になっている。
  • 第4に、化粧品を含む贅沢品の供給制限の解除である。これは奇妙な制裁であり、多くの企業がこの分野での市場シェアを失うことになった。
  • ロシアの諸銀行のSWIFT復帰に関しては、実現すれば米企業にとっても有難い。ただ、すぐには実現するまい。
  • 在露米企業がOFACから許可を得なければならない場面は多い。2024年、我々は米政府を説得し、ロシアに医療機器を供給する際の許可取得の義務を廃止することに成功した。しかし、医療機器や医薬品に関連する特定の汎用品のライセンスについては、まだ問題が残っている。これは人々の健康に関わる問題であり、人道的な問題である。
  • 企業には業種というものがあり、ロシア市場への復帰のスキームはそれにより異なる。まず、買い戻しオプションがあり、日用消費財などでは、ロシア市場復帰後すぐに事業を再開できる。これらの企業は、撤退企業全体の10%から20%である。これらの企業は主に、侵攻最初の年に事業を停止し、最長5年間の買戻しオプション付きでロシアでの事業を売却した企業である。ただ、そのために必要なのは紛争の和平協定の成立であり、それが結ばれればコールオプションを有する企業はロシア復帰を真剣に検討するだろう。
  • 第2に、撤退と称し、実は休眠していた企業がある。事務所と数名の職員を残し、ライセンスもそのままというパターン。工場を残し、職員に給与を払い続けていたような会社もここに含まれる。こうした企業は事業再開の難易度がずっと低い。
  • しかし、突然すべての資産を売却し、感情的になって去った企業にとっては、復帰は難しい。すべては状況次第だ。しかし、復帰希望者が殺到しているとは言えない。いくつかの企業は関心を持ち、弁護士も電話をかけてきている。私の予想では、2024年はこうした企業の復帰は4~5社くらいではないか。日用消費財の企業になるだろう。
  • ロシアには膨大な数の西側航空機があり、ほとんどがボーイング社製だ。我々は、これらの航空機にスペアパーツと技術サポートを提供する必要があると考えている。ロシアの純国産航空機はまだ存在しない。スホーイがニッチな分野を占めようとしているが、ボーイングはボーイングだ。ボーイングに取って代わるには、どれだけの時間と労力がかかるか分からない。
  • 別の例では、シスコ・システムズは何百万ページものコードと20~30年にわたる仕事をしている。だから、多くの企業の挑戦にもかかわらず、取って代わるのはそう簡単ではない。中国人は何でも上手にコピーできるが、それでも彼らでさえ問題を抱えている。

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