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 いつも思うことだけど、中国という国は政治的にはアレだが、経済統計が出るのが早いのは、経済をやっている私のような人間にとっての好感度が高い。先日、「遅れ馳せながら中欧班列のHPを発見」というエントリーでお伝えしたとおり、このHPの統計コーナーに中欧班列の輸送データが毎月掲載されており、早くも2024年通年のデータが発表されたので、それを使って上図を更新してみた。

 改めて説明すると、中欧班列というのは中国と欧州を鉄道コンテナ列車で結ぶ輸送プロジェクトであり、習近平政権の一帯一路の旗艦的位置付けになっている。主要ルートは、カザフスタン~ロシア~ベラルーシ領を通過するものである。上図に見るとおり、その列車本数、輸送コンテナ量は、一貫して増え続けている。

 しかし、内実は見かけの印象とは異なる。2022年にウクライナでの戦争が起きると、EU企業は侵略国ロシアと、その同盟国ベラルーシを通過する輸送スキームを敬遠するようになった。そうして生じた顧客離れにもかかわらず、2022年、2023年も中欧班列が拡大を続けたのは、中国⇔ロシア・ベラルーシ輸送が急拡大したからである。ロシア・ベラルーシは、地理的には一応欧州ということで、中国鉄道はその分も中欧班列の実績に加えているのである。

 こうして、中国⇔EUのトランジット輸送路としてはいったん斜陽化し、どちらかと言うと中露貿易の輸送手段になりかけていた中欧班列だったが、2023年暮れからまた様相が変わる。イエメンの武装組織フーシ派による商船への攻撃が発生し、東西の大動脈だった紅海・スエズ運河が麻痺、中国⇔EU輸送の裏技として、再び中欧班列の利用が拡大に転じたのだった。


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