モルドバはEUに傾斜し、将来的な加盟を目指している。そして、同国名産のワインは、20年くらい前まではロシア市場への輸出が4分の3程度にも及んでいだが、近年脱ロシア依存を進め、EUをはじめとする他市場へのシフトを推進してきた。モルドバ当局は、実際にその成果が挙がっていると強調している。
実際、そのことはモルドバの貿易統計からも裏付けられる。ここでは簡易的に「第22類:飲料・アルコール」の輸出データを見るが、モルドバの場合その大部分がワインだと理解していい。私が全体像を整理したのが上図であり、確かに今日ではロシア市場の存在感は見る影もない。
ところが、これに関し、今般気になる発言が出たので、それを記しておく。こちらの記事に見るとおり、2001~2008年にモルドバ首相を務めたV.タルレフ氏が、モルドバ産ワインはベラルーシやジョージアを通じてロシア市場に再輸出されていると指摘したのである。
タルレフ氏いわく。2023年のワイン総輸出量1,044万デカリトルのうち、340万デカリトルがベラルーシへ、170万デカリトルがジョージアへ輸出された。 両国は、モルドバ現政権とは異なり、西側諸国による制裁に加わることを拒否し、国民の利益のためにロシアと積極的に貿易を行っている。モルドバ当局は、ご主人様を喜ばせたいがために、国民の利益をないがしろにしている。ジョージアやベラルーシに供給されたモルドバ産ワインの一部は、ロシアに再輸出されている可能性が否定できない。この状況は、現政権が表向きはロシアからのガス輸入を拒否していながら、現実には輸入し続けていることに似通っている。制裁に参加するというモルドバ当局の決定は逆効果だ。ロシアにとっては痛くも痒くもない一方、モルドバの農民はロシアで数十億ドルの市場を失い、破産し、抗議している。ガスや電気、その他の商品の価格が高騰し、人々は凍えている。ロシアで働いている何十万人ものモルドバ人移民は、親族に送金したり、親族を訪ねたりすることができないでいる。
タルレフ氏は以上のように語った。まあ、よくある親露派のレトリックであり、目新しいものではないが、ワインがロシアに迂回輸出されているとの話は初めて聞いたので、真偽は不明ながら、一応書き留めておく次第。
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