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 夏休みに読んだ本シリーズ、それもなぜか米国ものの本ばかりだが、今回は、しばらく前に買いながら時間がなくて読めなかった大島隆(著)『「断絶」のアメリカ、その境界線に住む ペンシルベニア州ヨークからの報告』(2022年、朝日新聞社)。

 2020年大統領選で注目された激戦区ペンシルべニア州の小さな町ヨークに住み始めた記者。そこで目にしたのは、お互いに交わらない人々──黒人と白人、貧富、共和党と民主党、都市と郊外。「分断」から「分離」へと深刻化したアメリカ社会の亀裂の理由を探る。

 という内容である。この本、もっと大衆受けしそうなどぎついタイトルをつけてもよさそうなところ、割と説明的なタイトルになっており、私などはそれに惹かれて興味を持った。

 本書のタイトルにある「その境界線に住む」というのは、比喩的な意味ではなく、著者がペンシルベニア州ヨーク市で低所得層・マイノリティが集中するインナーシティに住みつつ、その向こう側はもう高所得層のエリアで、実際に著者自ら断絶の境界線に住んでみたという、文字通りの意味である。

 日本の外交官にしても、大企業の駐在員にしても、そして大手マスコミの特派員にしても、治安に配慮して、一定水準以上の住宅に住むのが当たり前である。スラムのような家を選んだら、お咎めがあるのではないか。そうした中、著者の大島氏が、決して治安の良くないヨーク市内のタウンハウス(日本で言うと風呂・トイレ共同木造アパートみたいなところ)に居を構え、米社会に密着した取材活動を試みたという点に、まず敬服する。

 本書の取材時期は、2020年から2022年5月くらいまでとなっており、コロナ禍と重なるとともに、トランプがバイデンに敗れた前回の大統領選の時期を含んでいる。どんな土地であっても、定点観測には意味があると思うが、ペンシルベニア州は選挙の激戦区であり、その中でも一つの典型例であるヨークに居を構えて粘り強く取材した成果が、本書に結実している。すでに取り上げた『ヒルビリー・エレジー』以上に、トランプ現象を読み解く上での必読書と言えそうだ。


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