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 3日連続でこの話題になるが、先日のプーチン・ロシア大統領による年次教書演説で、個人的に注目したものに、住宅ローンの問題があった。ロシアではしばらく前から、政府の補助による低利住宅ローンが施行されていた。いくつかのプログラムがあり、その概要をまとめたのが上表である。ロシアは現状で政策金利が16.0%という高金利経済ながら、これらのプログラムを活用すれば、ごく低い金利で住宅ローンが借りられるのである。

 これらのプログラムは、元々はそれぞれに経済・社会的な狙いがあった。優遇ローンはCOVID-19後の経済・社会再生策、極東・北極ローンは地域振興策、ITローンはウクライナ侵攻後のIT技術者国外流出への対応策、「新領土」ローンは占領地ロシア化が目的である。しかし、いつしかプーチン政権の人気取り政策へと変質し、利用期限は何度か延長されて現在に至る。そして、国策による危うい住宅官製バブルが生じていた。

 それで、先日のプーチン教書で、やはりと言うべきか、一連の低利住宅ローンプログラムは延長する方針が示された。ただし、「優遇ローン」に関しては、従来は新築住宅購入者であれば誰でも利用できたわけだが、教書の中では言及がなかった。国家政策が住宅市場を歪め、国庫にも負担を強いていたことから、低利ローンはよりターゲットを絞って運用していくべきだという議論が高まっていたので、借り手の条件を問わない優遇ローンは、打ち切りになるのかもしれない。また、ITローンについても、教書では言及はなかった。

 一方、幼い子供がいる家庭が対象となる「家族ローン」に関しては、プーチンは教書で以下のように述べた。

 過去6年間で、何百万ものロシアの家族が住宅事情を改善し、そのうち家族向け住宅ローンの助けを借りて改善した家庭が90万以上あった。このプログラムは2018年に始まった。政府は常にその使い勝手を改善してきた。最初は子どもが2人以上いる家庭が対象だったが、次に子どもが1人の家庭も対象となった。家族ローンの利用期限は今年6月までだったが、私は基本条件を維持したまま2030年まで延長することを提案する。特に、6歳までの子供がいる家庭には、金利はこれまで同様6%に据え置かれる。さらに、現在3人目の子供が生まれると、国はその家族の住宅ローンの一部、45万ルーブルを肩代わりしている。私はこの規定を2030年まで延長することも提案する。今年はこのために500億ルーブル近くの財源が必要となり、必要額はさらに増えていくが、そのための資金はある。

 最終決定と採択が必要なもう一つの追加決定として、特に小都市や、新しいアパートが少量しか建設されていない、あるいはまったく存在しない地域のために、家族ローンの特別条件を規定するよう政府に要請する。頭金の額や金利など、重要な指標を決定するために、できるだけ早くこれを実行する必要がある。

 一方、極東、北極、「新領土」については以下のとおり述べている。

 極東・北極圏、ドンバス、ノヴォロシアの住民を対象とした金利2%の特別住宅ローン・プログラムも継続する。また、特別軍事作戦の参加者や退役軍人も、これらの地域と同様の有利な条件でローンが利用できる。

 というわけで、上表では、今回のプーチン教書による提案を、赤い字で示した。


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