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 私は以前はウクライナ港湾管理局発表の統計にもとづきウクライナの港湾取扱貨物量のデータを整理することを習慣として続けていた(誰も見向きもしないような仕事ではあったが)。ロシアとの戦争が始まって、ウクライナの港湾データはにわかに重要性を増す一方、ウクライナ港湾管理局が以前のようにまとまった統計を出さなくなってしまった。断片的な数字が飛び交うばかりであり、私自身このブログなどでもそうした数字を引用したりはしていたものの、もうちょっときちんとした全体像は得られないものかと思っていた。

 そうしたところ、依然断片的ではあるが、ウクライナ港湾管理局によるまあまあ使えるデータを見付けたので、それを使って上掲のようなグラフを作成してみた。2022年の数字はこちら、2023年の数字はこちらからとったものである。

 ウクライナの港湾の柱は、ピウデンヌィ(旧ユジネ)、チョルノモルシク(旧イリチウシク)、(狭義の)オデーサの3港であり、これら3港を総称して大オデーサ港と呼ぶ。グラフではそれを青系で示したが、侵攻前まではそれが全体の3分の2くらいを占めていた(2021年の場合は66.1%)。2021年までは「その他」もそれなりに大きく、具体的には食料輸出を担うミコライウ港、SCM財閥御用達のマリウポリ港などが重要だった。他方、2021年まではドナウ川港湾(グラフで赤系で示した3港)は吹けば飛ぶような存在であり、2021年にはシェアわずか5.5%にすぎなかった。それが、2023年には、大オデーサ港が48.2%、ドナウ川3港が51.5%と、様相が様変わりした。

 ただ、2023年7月に暗礁に乗り上げた黒海穀物イニシアティブに代わり、同年8月からウクライナ独自の輸送回廊が開設され、それがかなり機能するようになってきたので、黒海の制海権に大きな変化さえなければ、2024年は大オデーサ港完全復活の年になるかもしれない。

 なお、ウクライナの港湾配置図に関しては、とりあえずこちらのサイトに出ていた下図を参照。

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