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 こちらの記事が、ロシアから周辺諸国への個人送金総額が、2013年に前年比12%落ち込んだと伝えられている。ただし、取り上げられているのはアルメニア、キルギス、ジョージア、カザフスタンの4国だけである。労働移民の分野で重要なウズベキスタン、タジキスタンは、対象外となっている(たぶん統計が出るのが遅いからだろうが)。もっとも、以下に見るように、今日のロシアにおける個人送金では、労働移民よりも、ロシア国民自身の国外出国に伴う動きの方が大きいようだ。

 記事によると、ロシアからカザフスタン、ジョージア、アルメニア、キルギスへの個人送金額は、2022年に急増した後、2023年には77億ドルに留まり、前年比12%低下した。国別の状況は上図に見るとおりで、一番上のアルメニアだけが増え、以下のキルギス、ジョージア、カザフスタンは減っている。なお、アルメニアとキルギスは通年ではなく、1~11月。

 ロシアからの送金は、2023年第2四半期から減少に転じた。経緯をまとめると、2022年春、ウクライナで軍事作戦が始まった後、国際決済システムのビザやマスターカードはロシア市場から撤退し、ロシアの銀行が発行したカードは外国で使えなくなった。近隣諸国の銀行がカード開設のための最も簡単な手段となり、送金システムは外国口座に資金を補充するための最も手頃で迅速な方法の一つとなった。

 2022年を通して、ロシア出国者が後を絶たず、他国での定住や生活のため、送金の必要性が劇的に高まった。それが、2023年には、一部の者は外国で資金を調達し、別の者はロシアに戻ることを決め、送金が必要でなくなったと推測される。また、2023年のロシアでは、このような送金の潜在的な利用者である労働移民の流入が最小限であった。2023年上半期にロシアに入国した移民は、2022年上半期の28万人より5万人(15%)少なかった。

 もうひとつの理由は技術的な困難にある。たとえば、2023年5月以降、カザフスタンでの銀行口座開設が難しくなった。さらに、2023年夏には、初めて米国による送金システムに対する制裁が課せられた。国境を越えた取引に積極的に利用されていたユニストリーム社が、その規制下に入ったのだ。その直後から、ジョージアのバンク・オブ・ジョージアやTBCといった外国の銀行が、このシステムとの取引を停止し始めた。

 送金の減少はまた、制裁をより厳格化する西側諸国の政策にも影響された可能性がある。カザフやジョージアはいずれも欧米の制裁に従うことを正式に義務付けられてはいないが、米国の銀行と密接な関係にあるため、米国など欧米の司法管轄区の制限に従う可能性があるという。


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