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 当ブログでは定期的に取り上げているが、こちらに見るとおり、ロシアの自然独占研究所(IPEM)が2023年第4四半期と通年のロシアの港湾貨物量を発表したので、その概要を見ておくことにする。貿易データが満足に発表されなくなったロシアゆえ、貨物量から物流の流れを捉える作業は、重要である。

 さて、ロシア港湾の取扱貨物量は、2023年第3四半期までは調子が良く、通年では10%くらい伸びるかもと思わせたのだが、第4四半期になり急激に貨物量が落ち込み、結局2023年通年の伸びは前年比5.1%増という平凡なものに終わった。通年の取扱貨物量は8億8,470万tである。

 第4四半期不振の原因は、石油製品と石炭が急減したことである。石油製品は、2022年の第4四半期が制裁発動前の駆け込み需要で膨らんだことの反動ではないか。石炭は、国際価格の低下、市場転換に伴う輸送コストの増大により、2023年末にかけてロシアにとっての輸出収益性が低下したことが原因と考えられる。

 2023年の実績を海域別に見ると、以下のとおりとなっている。それにもとづき、私が2021年以降の海域別貨物水準の変化をグラフ化したのが、上図になる(カスピ海は規模が小さくブレがちなので省略)。

  • 北極海:9,780万t(0.7%減)
  • バルト海2億5,060万t(2.1%増)
  • 黒海:2億9,060万t(10.1%増)
  • カスピ海:780万t(29.5%増)
  • 極東:2万3,790万t(4.4%増)

 また、2023年の貨物別の港湾貨物量は、以下のとおりである。なお、毎度申し上げるとおり、港湾の輸送には輸出・輸入・国内・トランジットとあるわけだが、以下に見る品目は(コンテナを除き)ほぼ全面的に輸出貨物であると理解していい。

  • 原油:2億7,220万t(6.3%増)
  • 石油製品:1億2,310万t(11.5%減)
  • 液化天然ガス:3,410万t(3.2%減)
  • 石炭:2億560万t(0.4%減)
  • 鉱石:980万t(22.3%減)
  • 鉄鋼:2,130万t(12.9%減)
  • 肥料:3,670万t(51.8%増)
  • 穀物:7,030万t(55.6%増)
  • コンテナ貨物:5,010万t(10.5%増)

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