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 昨日有効期間が切れることになっていた黒海穀物イニシアティブだったが、その当日にロシアナショナリズムの琴線に触れるクリミア橋が攻撃を受けるという事態となり、ロシアが「延長に反対する」と表明する事態となった。私の理解によれば、ロシアは瀬戸際戦略に出ており、まだ完全に協定から離脱したということではないはずだが、いずれにしても雲行きは相当険しくなってきた。

 論点は色々あるが、とりあえず、ロシア外務省が昨日発表したこちらの声明を参照してみよう。プーチンは昨年来、最貧国を救うために合意された黒海穀物イニシアティブだったはずなのに、現実には同スキームでウクライナ産農産物はEUをはじめとする豊かな国にばかり向かっているとクレームをつけてきたわけだが、今回の外務省声明でもそれに沿った批判がなされている。

 すなわち、昨日の外務省声明では、黒海穀物イニシアティブが実行された期間中に、3,280万tの農産物が輸出されたが、うち70%以上(2,610万t)がEUをはじめとする高所得および高中所得国に向かい、他方でエチオピア、イエメン、アフガニスタン、スーダン、ソマリアに代表される最貧国の比率は3%以下の92.2万tにすぎない、と指摘されている。この指摘は正しいだろうか?

 上掲の図は、2023年7月4日までの実績を私がまとめたものである。対象国の所得水準の分類は、世銀のそれを利用した。

 まず、ロシアが言うところの「最貧国」について。世銀の分類でそれに該当するのが、後発開発途上国(LDC)というものである。ここで問題なのは、ロシア外務省が「最貧国」からLDCのバングラデシュを除外していることである。実はLDCでウクライナ産農産物を最も多く受け入れているのはバングラデシュなので、それを入れるのと入れないのとで、印象がだいぶ違ってくる。世銀分類にもとづいた私の集計では、LDCの比率は5.8%となる。

 一方、70%以上(2,610万t)がEUをはじめとする高所得および高中所得国に向かっているというのは、まったくそのとおりであり、私の集計によればその比率は70%どころか80.6%に及んでいる。ただ、その際に実にあざといのは、ロシアがやたら「裕福なEUがウクライナの食料を吸い上げている」という構図を強調し、単独の国としては最大の受益国である中国のことに触れない点である。ロシアは、ウクライナの穀物はスペインでイベリコ豚の餌になっているといったことばかりを強調するが、それ以上に中国の養豚団地の餌になっているということには沈黙を貫く。


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