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 ウクライナ・ドニプロ川のノヴァカホフカ・ダムが決壊し、貯水池の水量が低下するとともに、下流が水没している問題。こちらの記事の中でI.リザンというロシア側の経済評論家が農業への影響についてコメントしているので、それを整理しておく。個人的に今回の件につきロシア側の言い分を信じているというわけではないが、産業への影響という話ならば参考になるだろうと考えた次第。

 リザンによると、貯水池の水がきわめて浅くなってしまえば、周辺の耕地を灌漑するための水資源がなくなってしまい、農業は止まってしまうだろう。ただ、ウクライナ農業省の言うような「砂漠化」というシナリオには、議論の余地がある。砂漠化は、羊の大群が無秩序に放牧されて草を食いつくすなど、生態系全体が破壊されることを前提とするが、おそらくそうはならず、ウクライナは畑の一部を放棄するだけではないか。それらの地域では、確実に収量が低下するので、彼らは耕作を放棄するだろう。この地域の高温で乾燥した気候により、作物は枯死するだろう。しかし、今回の事故がもたらす結果を完全に評価するのは時期尚早で、水が止まるのを待つしかない。

 ロシア側の耕地も、同じ灌漑システムにあるので、やはり被害を受けるだろう。他方、ヘルソン州にどれだけの灌漑農地があるのか、まだロシア側は把握できていない。サリド州知事代行は、178万haのうち60万haが灌漑されていると語っているが、詳細は不明である。また、2023年1月には、州行政の灌漑担当部局が3.2万haの灌漑を準備していたが、これはおそらく今回の事故でロシアが失う面積に見合っている。もっとも、ロシアがこの地域で耕作する作物の選択肢はあまり多くない。ヘルソン州ではかつてまさに羊の放牧により草が食い荒らされ、生態系が回復する暇がないほどであったが、耕作を慎重に行えばそうした破局的事態は回避できる。リザンは以上のようにコメントした。


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