ウクライナでは、国外の出稼ぎ等で稼いだお金を本国に送金するいわゆる「レミッタンス」が年々重要性を増し、言ってみれば「影の基幹産業」のようになっていた。しかし、この分野でも、戦乱による異変が生じている。
ウクライナ中央銀行の発表によれば、2022年のウクライナのレミッタンスの受入は131億ドルで、前年から3.6%低下した。受入は右肩上がりで上昇を続けていたが、それが縮小に転じた。従来、どちらかと言えば男性の国外出稼ぎの方が盛んだったが、彼らは開戦により本国に戻らざるをえず、現在外国に逃れているのは基本的に女性・子供・お年寄りだから、バリバリの労働力でないケースが多く、レミッタンス受入が低下するのも当然だろう。
もう一つの問題は、2022年には、出稼ぎによってウクライナにもたらされたお金よりも、出ていったお金の方が多かったと見られることである。こちらの記事によると、2022年5~12月にウクライナ国民がカードによって国外に持ち出した資金は3,614億グリブナで、前年同期の7倍に上った。これは、外国で買い物をしたり、外国の現金引き出し機でお金を引き出した額である。これは平均レートで約100億ドルとなり、通年に換算すると140億ドルに達し、上述のレミッタンス受入額を超えてしまう計算になる。
なお、上掲の図は、こちらの別記事から拝借したもので、ウクライナで発行されたカードの外国での利用状況を示している。濃い緑が現金引き出し、薄い緑が商店での利用を示している。
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