
こちらおよびこちらに見るとおり、ロシアの反体制的な政治評論家のD.オレーシキン氏が、ワグネルの創始者Ye.プリゴジンの動きについて論評しているので、要旨を以下のとおりまとめておく。
プリゴジンは、後先のことは考えず、まず戦いに身を投じてみようというタイプの人間だ。当然、ショイグにとっても、ゲラシモフにとっても、プリゴジンは敵であり、それは今も変わらないが、プリゴジンなしではバフムト攻略はできないので、現在はやむなくプリゴジンと協力している。
もしもプリゴジンがバフムトを獲れなければ、彼はおしまいだ。逆に、バフムトを獲れれば、過去1年間で何らかの成果を達成した唯一の勝者ということになる。他の戦線ではまったく戦果が挙がっていないのに対し、バフムトでは多少なりとも前進しているからである。バフムトを攻略できても、戦略的には大して重要ではなく、もっぱらイデオロギー的な成果ではあるのだが、イデオロギー的には1942年のスターリングラード攻防戦に近い域に達している。
プリゴジンがバフムトを陥落させられれば、彼には未来への活路が開かれるので、命懸けでそれに取り組んでいる。そして、それと同じように、政党「公正ロシア」を首尾良く乗っ取れれば、政治面でも活路が開かれるので、それにも全力を挙げている。
そして、そこにプーチンがプリゴジンを野に放った理由もある。とかくお役所主義的な軍人たちに刺激を与え、より本気で戦わせようとしているわけである。
バフムトはドネツク州の中でも重要性の劣る集落であり、仮にそこを攻略できても、そこからさらにクラマトルスク、スラヴャンシクを落として、ドネツク州の境界線一杯まで攻め入ろうなどという機運はない。すでにバフムトという一箇所に凝り固まってしまっているからである。その意味でプリゴジンは、プーチンのロシア統治の実情を診断する上で興味深い人物である。
ブログランキングに参加しています
1日1回クリックをお願いします
