struktura-FNB-2022

 私は、ロシアの財政がすぐに行き詰るようなことはなく、2023年くらいは何とか乗り切れるのではないかということをあちこちで申し上げている。その根拠の一つに、ロシアの財政には「国民福祉基金」というリザーブが存在することがある。2023年初頭現在、その残高は10.4兆ルーブルであり、ドル換算すれば1,500億ドル近くとなり、ロシアのGDPの7.8%に相当する。2023年の連邦予算では、2.9兆ルーブル、GDP比2.0%の赤字が計上されているが、国民福祉基金を使ってそれを埋めていこうというのが、ロシア政府の基本方針である。

 しかし、知っている人は知っているように、このように命綱である国民福祉基金は、全額が財政赤字の穴埋めに使えるわけではない。すでに、傾きかけた国営企業の株式購入などに充ててしまっているからだ。普通、ソブリン・ウエルス・ファンドの株式購入は運用目的で、いつでも売却できることが前提だが、ロシアの場合は企業救済が目的なので、資産には違いないが、今の状況で売るのはまず無理だろう。ロシアでは、国民福祉基金のこのような投資済みの部分を、「非流動資産」と呼んでいる。

 どこかに良い図がないかと思って探したら、こちらにおあつらえむきのグラフが出ていたので、上掲のとおり紹介する。なお、執筆者はS.アレクサシェンコとされているが、元中銀副総裁のあのアレクサシェンコだろうか? グラフで緑が流動資産、紫が非流動資産である。資金を突っ込んでいる割に非流動資産が増えていないのは、株価下落によるものだろう。

 記事によると、2022年1年間で、国民福祉基金は3.1兆ルーブル(23%)縮小した。そのうち、流動資産は2.3兆ルーブル(27%)縮小した。流動資産の残高は2022年末時点で6.13兆ルーブルとなっている。財務省では、2023年連邦予算に計上された2.9兆ルーブルの赤字を、全面的に国民福祉基金で賄う方針であり、いよいよ基金には「底」が見え始める。

 2022年の流動資産の支出のうち、40%は、財政赤字の穴埋めではなく、財政外の支出によるものだった。すなわち、ロシア鉄道の社債、アエロフロートおよびガスプロムバンクの株式、一連の民間航空会社の社債を購入し、また基金の資金を対外経済銀行、VTB、ガスプロムバンクの口座に移したものだった(こうした取引は基金の会計上、流動資産から非流動資産への移転として記録される)。2023年にロシア政府がこうした取引を継続する予定であることを考えると(少なくともアエロフロート用にスホーイ・スーパージェットを調達するのに1,750億ルーブルを支出予定)、基金は2024年には完全に底をつく可能性があると、記事では指摘している。


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