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 ロシアのタイヤ市場では、フィンランド系のノキアンタイヤがレニングラード州のフセヴォロシスクの工場で大掛かりな現地生産を手掛けていた。同工場はノキアンにとって最大の生産拠点であり、ロシア国内市場への供給はもちろんのこと、輸出も手掛けていた。

 軍事侵攻開始後、ノキアンはロシア工場の身売りを模索していたが、年末に出たこちらの記事が、タタルスタン共和国を本拠とする石油会社タトネフチによる買収が完了したということを伝えているので、骨子を以下のとおりまとめておく。

 タトネフチは、制裁によって、タイヤメーカーのカマ・タイヤズを、タトネフチェヒムインヴェスト・ホールディング(タタルスタン共和国行政府が49%を保有)に355.5億ルーブルで売却することを余儀なくされ、タイヤ生産部門を失った。

 しかし、その状態は、長くは続かなかった。タトネフチは10月にノキアンタイヤのロシア工場を買収することを決めた。買収額は4億ユーロと伝えられる。そして、このほどその取引が完了した。

 同工場は、最近まで自動車タイヤを年間1,600万本生産し、それはノキアンブランド全体の生産量の80%に相当した。商品は主に旧ソ連域外市場に輸出されていた。ところが、7月10日からEUはロシア産タイヤの輸入を禁止し、ノキアン社は、ロシア国内市場向けに事業を続ける買収相手を探すこととなった。

 ノキアンのロシア工場は原料から完成品までのフル工程を備え、1,570人が働いていた。主力製品は冬用タイヤである。

 原料・コンポーネントの半分は輸入されていたので(天然ゴム、高度な化学品など)、今後は従来のような高品質とはならない可能性がある。実際、ロシアのタイヤ市場では低価格帯の製品が主流である。ブランド名自体、新しいものとなり、すでにTorsten、Ikonan、Ikonというブランドが申請されている。

 一方、ノキアン社の側は、米国、ルーマニアなどでの新たな生産立ち上げに動いている。


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