一昔前までは、ロシアで売られているトマトは、かなりの確率でトルコ産で、それに次ぐのがEU産であった。上の表はロシアのトマト輸入相手国を見たものだが、トルコとEUが多かったことがお分かりいただけるであろう。
しかし、2014~2015年に状況が一変する。ロシアはウクライナ危機を背景とした欧米の対ロシア制裁に対抗して、2014年8月に欧米からの一連の食品の輸入を禁止し、それにはトマトも含まれていた。そして2015年11月にトルコによるロシア軍機撃墜事件が起きると、ロシアは2016年1月から一部のトルコ産食品の輸入を禁止し、トマトも禁輸対象となったのである。その後、トルコ産トマトについては禁止ではなくなったが、上表に見るように、トルコはかつてのシェアを回復できていない。
そのあたりについて、こちらの記事が良くまとまっていたので、以下要旨を整理しておく。
ロシアの青果物業界団体によれば、2021年にロシアのトマト輸入は13%低下し、42.4万tとなった(注:服部がITCのデータベースから作成した上表の数字とは異なるようだが)。2021年にロシア国内のハウスで栽培されたトマトは59.4万tであり、かくして輸入代替のプロセスが進んでいる。
ロシアのハウス栽培トマトはトルコ産と競合するが、トルコはもう何年もロシアのトップ供給国ではなくなっており、2021年のシェアも18%にすぎなかった。
2016年1月から2017年10月まで、トルコ産トマトの輸入は禁止されていた。2018年3月にトルコ産トマトに5万tの輸入割当が導入され、その割当量は段階的に拡大、2021年5月には25万tから30万tへ、2月11日には農業省が35万tに拡大することを提案した。
近年の取引が示すように、トルコに与えられた割当量でさえ、非常にゆっくりと消化されている。トルコ産のトマトは、味と香りに欠け、皮が厚く(長期輸送に堪えるように)、ゴムっぽいことから、ロシア市場ではますます需要が少なくなっているという。したがって、ロシアの青果物業界団体も、トルコ向けの割当拡大はロシアの生産者にとって脅威にならないという結論に達したわけである。
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