
コストが高くつくからといって、ロシアがウクライナを侵略しないという担保にはならない。しかし、ロシアにしてもコストとメリットを天秤にかけるであろうことは間違いなく、それを確認しておくことは無駄ではないだろう。
そういう観点から、2019年6月とやや古いが、「ドネツクニュース」に掲載されたこちらの記事が参考になった(A.クリフツン記者署名)。ロシアによるドンバス支配コストにつき、何人かの専門家による試算を紹介している。
余談ながら、素性は存じ上げないものの、同ニュースサイトは1年ほど更新が滞っているようで、現状どうなっているのだろうか?
ともあれ、記事によると、ドンバス占領地を維持するためにロシアが費やしている費用は、年間10億ドルから60億ドルまでと、専門家によって評価にかなり開きがあるということである。また、これとは別に、クリミア併合およびドンバス介入に対する欧米による制裁により、ロシアは2018年の1年間に63億ドルの損失を被っている(ロシア経済発展省の試算)。
エコノミストのO.クーシチ氏によると、ロシアがドンバス支配に負っているコストは、自称ドネツクおよびルハンスク人民共和国の予算(年金や公務員賃金支払い)への補填、ロシアが事実上支払っているガス料金、分離派軍隊の維持費などから成る。ただ、これらを合計しても年間10億ドル程度で、しばしば言われる50億ドルといった額にはならない。制裁下であろうと、ロシアには充分に支出し続けられる額である。
分析家のO.コチェトコフによると、ロシアがドンバスを維持するのに支出しているのは年間40億~60億ドルと見られるが、ロシアの軍事予算が年間600億ドル、GDPが1.6兆ドルに上ることを考えれば、充分支出できるレベルである。
軍事評論家のD.ポポヴィチによると、両人民共和国はロシア・ルーブル圏に組み込まれており、ロシアの国庫に年間20億ドルのコストを強いている。占領地企業や労働者の状況は厳しく、ロシアへの負担は小さくないものの、それでもロシアは制裁を耐え抜く体力は備えている。
地域政策研究所のE.メネンデス所長によると、両人民共和国の維持にロシアは年間20億ドル程度を費やしている。ただ、ロシア財政の規模から考えるとわずかであり、同氏が接触したロシア側の関係者は一様に、ロシアは目的を達するためであるならこうした重荷をずっと背負い続けるだろうと述べていたという。
元ウクライナ保安局のO.スタリコフによると、ロシアはドンバス維持に年間30億ドル程度を費やしている。うち3分の1は、分離派の軍隊への支出である。当然のことながら、資金の一部は横領されている。
以上がドネツクニュースに掲載された専門家らによる試算とコメントであった。このように、現状のドンバス維持費は、ロシアにとって許容可能な規模という見方が多いようである。ただ、言うまでもなく、ウクライナ全体とか、あるいは左岸ウクライナ全体、ロシア語圏全体などを長期にわたって占領するとなれば、その数倍の(10倍を超える?)コストをしょい込むこととなろう。
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